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地べたで勉強?熾烈な受験戦争?とあるブラジルエリート校の教育方針

地べたで勉強する小学校1年生

ブラジルで生活していた頃、エリート校に通う小一のお子さんを持つママ友から
「うちのクラスではあえて机を用いないで教室の床にテキストを広げて勉強をしているらしい」
という話を聞きました。

日本の小学校のことしか知らなかった私は興味深く、なぜそのようなことをしているのか疑問に思いました。
その友人の想像では「子どもに自由な気持ちで勉強をさせるためにリラックスできる体勢で勉強をさせているのでは」とのことでした。

そのブラジルの学校では他のブラジルの学校と同様、校内で上履きに履き替えるということはしませんでした。そのために日本人の私からしたら衛生上の問題はないのか気になってしまいますが、ブラジルでは「土足は汚い」という概念はその当時はないようでしたしその点はおそらくブラジル人には問題にならなかったのだと想像します。

今回は衛生面の問題はさておき、ここから見えるブラジルの幼稚園や小学校の教育方針を探っていきたいと思います。

ブラジルでの熾烈な受験戦争

このような自由な雰囲気をお伝えしたので、ブラジルは教育に関してそれほど熱心ではないのか、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかしブラジルのお受験戦争も相当熾烈らしいです。

インドのようにカースト制などはないブラジルですが、日本とは比べものにならないくらいの貧富の差があります。「貧困にあえぐ家庭の子は貧困にあえぐ人生を送る」ということが半ば当たり前となっているなか、それを挽回できる数少ない機会だということもこの受験戦争が激しくなっていることの理由の一つのようです。

ブラジルでの小学校低学年までの教育

ブラジルでは様々な教育の選択肢があります。特に小学校低学年まではその選択肢の数も多いです。日本もそうかと思いますが、お勉強をたくさんやるところから遊びをメインで行うところなどさまざまです。遊びの中でも自然派であったり知育をたくさん盛り込んでいたり、また芸術に力を入れるところなどさまざまにあり、幼稚園選びをするためにいくつか見学に行ったのですが、それぞれの特色がありとても興味深かったです。
そのような幼稚園選びの中で幼稚園関係者や幼児を育てる親御さんたちからよく耳にしたのは、

「幼少期にはあえて勉強を強いない」

という話でした。その話し方には強い意思が感じられ、私には印象的に思えました。そのような意見の親のひとりは「幼少期から勉強をし続けていき、十分に遊んだ経験がなく育っていくと、思春期ごろに心の問題が生じるという調査結果がある」と言っていました。これはブラジル人がどこまで共通認識として持っているのかはわかりません。しかしこのような意見に触れるにつれ、ブラジルでは「子どもが小さいうちは自由に思い切り遊ばせる」という教育哲学を持っている人が多いのだと知りました。地域で評判のエリート校でさえ最低限お勉強はさせつつ、小学校低学年のうちはこの哲学を大切にしているようでした。

また、日本ほど子どもたちに均一的な行動を強いることがありません。高校生であっても授業中トイレに行きたくなれば、部屋を出てトイレに行く、整列などをさせることもありません。ブラジル在住時は「息子たちが日本に戻ってから学校で整列ができるようになるのだろうか?」と若干不安になっていたほど「自由」というものに重きを置いていました。

私が親として傍で見て感じていたブラジルの教育で大事なことは「自分で考えること、そしてその考えを人前で伝えられること」、また更に私の印象ですが、「自分の素晴らしさを他者に見せ、また他者の素晴らしさを称えること」でした。このようなものを培うためにも、型に押し込めるのではなく、子どもの自由を大切にしているのかなと思いました。
うちの息子たちもブラジルで「どんなことでも考えを持つこと、そして間違えていたとしても人前で発表できること」ができた時には先生がたに大絶賛されていました。

このように全体主義的な空気は皆無で、いかに個の力を伸ばすかということに注力された教育現場でした。そのため小一のクラスでは「のびのび過ごさせて、自分の感じることや考えることを育む」ということに重きが置かれた結果、机が撤去されて、好きな体勢で勉強させるようになったのではないかなと理解するようになりました。

高学年からの教育

このエリート校では高学年からは一気に勉強量が増えるそうです。この低学年から高学年に移り変わったお子さんを持つ日本人の親御さんはあまりの学校方針の変わりように戸惑うとおっしゃる方もいました。
日本的な詰め込み教育的なものから、日本では大学でよく行われるレポートや学士論文のような自分で調べてまとめるというものまであるそうで、急に校内の雰囲気は厳しさに包まれていたのだそうです。

おわりに

今回はブラジルの地方都市のひとつの学校の事例とその事例や息子たちが経験したことを踏まえて私が感じたことを書かせていただきました。全く個人的な経験と感想ではありますが、日本に戻った今もブラジル教育の核になっていると思われる

「自分の頭で考えて行動する」

ということを息子もまた私自身も大切にしていきたいなと思います。

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