見出し画像

バルセロナで生のメッシに会って俺の方がうまい、と言い切った話。

2013年3月、世界有数のサッカーのビッグクラブであるFCバルセロナはある種の絶頂期を迎えていた。チームの中心にいたのは世界最高のサッカー選手「リオネル・メッシ」その人である。

リオネル・メッシ
1987年6月24日 - )アルゼンチン・ロサリオ出身のプロサッカー選手。リーグ・アン・パリ・サンジェルマンFC所属。ポジションはフォワード。アルゼンチン代表。同代表及びFCバルセロナの最多出場数と得点数、アシスト数の記録保持者であり、バロンドール(世界最優秀選手賞)を史上最多7回受賞。(とにかくヤバい奴!)
wikipedia『リオネル・メッシ』


現代サッカーの戦術は複雑で、初めてサッカーを見た人は「どういうルールなの?」と困惑するが、FCバルセロナのサッカーはだれでも見やすかった。メッシだけを見ていればいいから。 


戦術 is メッシ である。


彼をたとえるなら、ハサミのような万能感だ。物を切ろうと思った時、私たちはハサミを探す。だってハサミが物を切ってくれるから。よっぽど固い物質は無理だが、大抵の物はハサミで何とかなる。

メッシはハサミだ。

困ったらメッシを探せばサッカーにおいては全てを解決してくれる。

その凄さが伝わるか分からないが、ちょっと下のGIFを見てほしい。メッシが1人で相手陣地を切り裂いてゴールを決めるから。

画面手前がメッシ


2013年3月、私を含む札幌の大学生4人衆は、メッシを見に、遠路はるばるスペインのバルセロナを訪れていた。この1か月前、札幌の居酒屋で「メッシを生で見てさ、野次を飛ばそうぜ、『俺たちの方がうまい』って」という会議を開催し、即決でバルセロナ旅行を決めた。

バルセロナに来てからのカルチャーショックについては、昨日まで書いてきた通りだ。



【滞在記】見て見ぬふりをしないバルセロナ


【滞在記】スタイリッシュ信号無視のバルセロナ



そのメッシをいよいよ生で見る時がきた。

私たちはスタジアムにいた。通称「カンプ・ノウ」と呼ばれるFCバルセロナのホームスタジアムは収容人数が約10万人。ヨーロッパ最大級のスタジアムである。しかも2013年3月、私たちが観戦するのはヨーロッパ最高峰のサッカーの大会「欧州チャンピオンズリーグ」だった。

FCバルセロナの対戦相手は
イタリアの名門「ACミラン」であった。

バルセロナ vs ACミラン。

サッカー好きなら誰もが憧れる夢の対戦カードである。分かりやすく言えば、


広瀬すず vs 橋本環奈。


いや、この二人がどうやって対決するかは分からないけど、10万人くらいすぐに集まるでしょう。それくらいのものだということですね。



試合が開始される。

細かなことは書かないけれど、バルセロナはその試合になんとしても勝たなければならなかった。それも多くの点数をとって。難しい試合である。


バルセロナが広瀬すずなら、彼女が二日酔いで体調が悪い中、素人スタイリストのメイクで、万全の橋本環奈に挑まなければならないくらいのビハインドだった。


一見すると、広瀬すずに勝ち目はなさそうな気がするが、ところがどっこい。こっちにはリオネル・メッシがいる。いつだってメッシが何とかしてきた。今回も大丈夫だ。


スタジアムには10万人の観客が超満員で入っていて、私たち4人はバイト代をはたいて、メッシが20m先くらいに見える最高の席に陣取っていた。超満員の観客、歓声がすごすぎて隣の友だちとの会話すらままならない。あんなのは後にも先にもあの時だけだ。


リオネル・メッシを呼ぶときに、日本のニュースは「メッシ選手が~」と「メッシ」と呼ぶじゃないですか。ところがバルセロナ市民は違いますよ。「リオネル・メッシ」を彼らは「レオ」と呼ぶんです。


だから私たち4人も「レオ~!!!!」と叫び散らした。叫び散らしても、全然大丈夫。2013年だから。


「メッシを生で見てさ、野次を飛ばそうぜ、
『俺たちの方がうまい』って」


試合中のメッシはヤバかった。マジで。

試合中、メッシはとにかく走らない。

ボールも見ない。

テクテクと芝生の上を歩いてる。

でもボールを持ったら大変なことになる。

レオのマジカルワールドが発動して、だーれもボールを取れない。そうさ、レオは世界最高の選手、いや歴史上最高のサッカー選手だもの。


「メッシを生で見てさ、野次を飛ばそうぜ、
『俺たちの方がうまい』って」


そんなこと言えなかった。

すっかり忘れて一心不乱に
「レオ!レオ~!!!」と叫んだ。


「メッシを生で見てさ、野次を飛ばそうぜ、
『俺たちの方がうまい』って」


はっ!と思い出し、
私たち4人はメッシを野次った。


「おいレオ!歩くなぁ!
 ボールから目を切るな!!!
 監督に怒られるぞ!!!」


「俺たちの方がうまいぞ!!!」


こう言って4人で大爆笑した。
サッカー好きならきっと笑ってくれる。
なんとも能天気な4人衆である。


その試合は、開始すぐにメッシが立て続けに2点を取った。スタジアムはぶっ壊れるほどの歓声で揺れた。その後もバルセロナが優勢に試合を進め、結局バルセロナが勝利!レオ万歳!


メッシが1点目を取った時なんて、隣にいた知らないバルセロナ市民の青年と抱き合った。「レオ!レオ~!うおおおおお!」と抱き合った。


2点目をメッシが取った時も、そのバルセロナ市民の青年とひしと抱き合った。私のスマホでメッシが点を取る瞬間を撮ったが、あまりにも喜びすぎて、スマホをぶん投げちゃったのか、試合の途中で自分のスマホがないことに気づいた。


「あれ、スマホがない、やばいやばい」と思ってるけど試合は進むし大歓声は止まないし、みんなが狂喜乱舞の大騒ぎをしている。


少し焦りながらスマホを探してパッと隣を見たら、さっきのバルセロナの青年がニコッとしていた。その右手を見たら私のスマホが握られているではないか!拾ってくれたんだ!大声で叫んだ!


「Thank you!!!!!」

すると彼は、 


「Be careful!!!(気を付けて!)」



とニッコリ言うもんで、
「レオ~!」と叫びながら彼と
ガシっと抱き合った。



翌日のバルセロナのスポーツ新聞には

「レオがバルセロナに魔法をかけた」

「レオ、歴史上最高の試合」

「ミケランジェロのような左足が
 ミランを叩きのめす」

「レオがバルセロナを救った」

と全てがレオ一色だった。




こうして、私の初めての海外旅行は終わった。


バルセロナで見た、絵描きのおじさん、他人の絵を大切にしまう金髪美女、ベビーカーを助けるおじさん、赤いリンゴをかじるスケボー少年、スマホを拾ってくれた青年はとても印象に残っている(※過去記事参照)

しかしそれらがすっかり吹き飛ぶほど、私たち4人の頭の中は「レオレオレオレオ」でとにかく「レオ」。メッシはヤバかったんだ。



特にこの記事を通して何か言いたいことはないけれど、控えめに言っても初めての海外旅行は最高で、バルセロナは優しく、メッシはやっぱり世界最高の男だったんだ。



あの海外旅行で私はバルセロナの優しい人たちをたくさん見た。「人に優しくすること」を学んだ。そして自分の行動を変えようと思った。よく「〇〇をすると人生観が変わるよ」というものがあるが、私にとってはこのバルセロナ旅行。これが人生を大きく変えたんだ。



結論 メッシの方がうまかった



〈あとがき〉
4日間に渡ってお送りしてきた「バルセロナ旅行記」はいかがだったでしょうか。海外で見る光景はどれをとっても新鮮で衝撃的で、自分がどれだけ小さな場所で生きているんだろう、と痛感させられた経験でした。やさしいバルセロナ市民を見習って、これ以降の私のふるまいも大きく変わりました。最後までありがとうございました。

【バルセロナ旅行記】最初の記事はコチラ



いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集