犬みたいな男のウラ。
犬が好きだ。あと、猫も好きだ。
犬と猫なら、犬の方が3倍好きだ。
なぜ犬が好きかというと、あいつらはかわいい見た目をしてるくせに、2つの事柄以外なにも考えてなさそうだからだ。
ひとつは「食べ物」のこと。
食べ物をあげると、やつらは何も考えずにワチョワチョ食べる。
「もうちょっと味わって食べなよ」と言ったってお構いなし。
誰にも奪われないのに、急いで食べる。
味わうということをしていなさそうだ。
食べ終わったら、ぺろりんとしてこっちを見てくる。
そう言っているかのような視線をこちらに向けてくる。上目遣いで。
犬がもう一個考えているのは「飼い主」のことだ。
どうして家に帰るたびに、しっぽがちぎれそうなほどブンブンふって、こっちに飛びついてくるんだ。毎日だ。5年ぶりに会ったくらいのテンションで毎日こちらにやってくる。
と、私の妻は言うが、その気持ちはよくわかる。
自分のことを大好きな人をこそ好きになってしまう「好意の返報性」ってやつだ。
犬たちはもちろん、他のことも考えているかもしれないが、大きく分類すると、この2つのことしか考えていなさそうに映る。「食べ物」と「飼い主」だ。
なんなら飼い主のことが好きなのは「食べ物」をくれる存在だから、というようなフシもある。が、ここは彼らの愛情を信じよう。
…
と言っている人がいた。
20代前半の女性。
と、言うと? と質問すると、
まぁ、愛情表現をしてくれて、なんか愛くるしい感じで、食事をおいしそうにしてくれる、そんな男性がいいらしい。
犬系男子。
わかる。大いにわかる。
もしも私が女性だったら、たしかにそんな彼氏がほしい。
食べ物が好きで、彼女のことが大好きで、純粋無垢。会うたびに人目もはばからず抱きしめてくれたなら最高。
いいねぇ。
…
ところで私は、妻に飼育されているような気がする。
食べ物、飲む物、着る洋服、髪を切る美容室。
すべてを提供されて、仕事に打ち込んでいる。
私の好みにカスタマイズされた生活が保証されていて、なんのストレスもない。
家に帰れば必ず「ただいまりもっこり」と言ってヒャホーイとするようにしているが、これでは足りない気がしてきた。愛情が足りない。
超越した愛情をもった人間でありたい。
由来不明の愛情をもった人間でありたい。
そう考えると、犬が飼い主のことを大好きなのは、食べ物をくれるからではない気がする。
純粋に人間のことを愛してくれているのだ。
なんとも愛くるしい存在。
よし、
これからも喜んで犬を演じよう。
犬にはウラがないけれど、人間はそうもいかない。
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