夫の励まし方。
センス。好きな言葉だ。
落ち込むことはないけど疲れることはある。その日の仕事が立て込んでいたり、先のスケジュールも埋まっていることが多いから、肉体的にも精神的にも疲れる。
幸い両親からいただいた温和な遺伝子をもっているので、疲れているときも落ち込まない。だから、どんなに疲労が溜まっていても翌朝に起きられないということはないし、あぁやる気が出ない、もうどうしようもない、という気持ちになることもない。
家に帰った私のことを妻はだれよりも観察していて、いつもよりも表情が暗いなだとか、いつもより声量が小さいなと感じることがたまにあるらしい。おもしろいもので、おそらくすべての夫婦に共通するかと思うが、男性は妻の心の機微には気づかない。一方で女性は夫の些細な変化を見逃さない。男女は細胞レベルで異なるのだ。
世界の妻という存在は、夫の表情が暗ければ、声が小さければ、背中が丸くなっていれば「あぁ、きっと外でなにかイヤなことがあったんだろうな」と察するものらしい。かといって私の妻の場合「なんか疲れてる?」とか「イヤなことでもあった?」と聞いてくることもない。余計なことは一切言わずに、晩御飯の用意をしてくれる。
妻曰く、私はどうしようもなくイヤなことがあったら、勝手にしゃべりだすらしい。逆にいえば、私が「ねえ聞いて」と相談しないようなことは瑣末なことなので、きっと勝手に解決したり心で折り合いをつけるものであろうと認識しているようで「ほっといてやれ」と思うのだそうだ。
なので妻になにかを相談したいときは「ねえ聞いて」と私が話す。すると妻は話を聞いてくれる。もちろんその逆もしかり。悩みごとを他人に相談するとき、本人は解決策を欲しているのではなく、ただ共感を求めているだけ、という教えがあるが、それは正しいと思っていて、私の妻もそうしてくれる。
それでいうと、私の相談が終わると妻が最後に言ってくる言葉がある。
妻流の私の励まし方だ。
その言葉を聞くと、妙に褒められた気持ちになり、頑張ろうと思えるのだが、その言葉は絶妙に私の心をくすぐるものであり、シンプルなのにもかかわらずきちんと私の心の着火剤になることが多い。
では、私が疲れているときに妻に「ねぇ聞いて」と言ってなにかを話し「うんうん」と話を聞き終えた妻は最終的になんと言うか?
「あなたはセンス以外なにもないんだから、がんばるしかないでしょ」
やはり妻には頭が上がらないのである。
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