ウチの社長とやけに親しいナゾの人。
いつだったか、だれの番組だったか忘れたが、
あるお笑い芸人のラジオを聴いていた。
そこでの会話にこんな話題があった。
これを聴いていた当時の私は20代前半だったと思う。へぇ、そういうものなのかな、と思って聴いていた。
社長がどうとか、みたいな世界は全く分からないから、どこか遠いお話、だけど分かる気もする。
社長とやけに親しいナゾの人。
一体あの人はだれなんだろう?
と疑問に思う従業員との構図がそこにある。
…
札幌市内に多店舗展開している喫茶店がある。
そのうちの、ある店舗に私は出没する。この記事だって、初投稿の記事だってそこで書いた。私の記事にたまに登場する「喫茶店」は、このお店であることがほとんどである。
今から4年ほど前、まもなく私が保険業界に転職するかしないか、というタイミングで、この会社の社長を紹介された。多店舗展開しているものの、従業員の数が足りないというのだ。
私の前職は、企業の採用活動をコンサルティングする、みたいな流行りのものだったから、この社長に会いに行った。
ある喫茶店の奥にオフィスがあり、社長と役員が待っていた。社長は白髪頭で、少し背は小さく、ニコニコしている。こんな私にもこだわりのコーヒーを出してくれた。
という社長の一言から始まった商談は、
私がひたすら質問し倒して状況や課題を聞く。
というような話を聞きながら、
最後に私から最適と思われる解決策を提案した。
社長は、
と言ってくれたが、寸前のところで役員からの反対があり、結局、お取引をすることはなかった。役員を説得することを忘れていた。この辺が2流である。
そんなメールをくれる社長に、いえいえ、なんて答えつつ、ふと気になることがあった。
気になるなぁ。どんなお店になるんだろう。
そこで私は、社長が言っていた新店に行ってみた。
会ってから、1か月後くらいだった気がする。
お店に行くと、
「祝開店」のお花がたくさん置いてある。
新しい香りがする。
そこにコーヒーの香りも混ざる。
従業員さんがいる。
お客さんは?
あまり入っていない。
厨房を覗いてみると、だれよりもセカセカ働くおじいさんがいた。社長だ。お取引はできなかったけど、この社長のことは人間的に好きだなと思える社長。がんばってる。
自分から声をかけるのは野暮だなと思って、社長が気づいてくれるのを少し待った。するとすぐに目が合った。
社長は私の目の前にわざわざ座ってくれて、どうぞごゆっくり、と言いながら、会話を終えてまた厨房に戻っていった。
それからも定期的にこの喫茶店に行く。
たまに社長がお店にいる日がある。
いついるのかはわからない。
何かを売りつけてやろうという下心もない。
半年に1回くらいでタイミングが合い、挨拶を交わす。きっと社長は私のことを詳細には覚えていなさそうだ。
でも、顔は分かってるから、会うといつもニコニコして「いつもありがとうございます。ごゆっくり」と言ってくれる。
何回か喫茶店で社長に偶然会って、
雑談をしながら「あっ」と思った。
社長とやけに親しげに話すナゾの人。
私がそれになってるじゃん。
思えば、たしかにこの喫茶店の店長さんや従業員さんは、やけに私に丁寧にしてくれる。そんな敬意を払われるような人間ではないから、いつも申し訳なく思う。
こいつは誰なんだろう、
と思われていそうだ。
このお店にくると私は決まって社長がこだわってるコーヒーを飲む。そうして仕事をして、空き時間にエッセイを書く。
読んでくださった方が少しずつ増えてきて、心がほくほくする。このお店のおかげだ。
でもまさか、自分がそういうナゾの人間になるとは思ってもなかったから、恥ずかしい。
どう思われているんだろう。
ちょっと気になる。
けれども名乗りもしない。
ただ挨拶をするだけ。
うん。
これからも、たまに来るナゾの人というキャラクターで、ナゾをナゾのままにしておこう。
この喫茶店は大好きだ。
いつか何かの役に立てたらいいな。
◾️この記事では、まさに喫茶店が登場する!
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