他人の家の水まわりで土を見る。
お仕事をしていると、年中たくさんの人に出会う。相性がぴったりの人もいるし、その逆の人もいる。
自分とぴたりと合う人とは、そのまま仲良くなればいい。が、問題は逆の人だ。仕事をしていて「あ、この人とはもしかすると合わないかも」と思ってしまう相手というのが、誰にでもいる。
それは同僚かもしれないし、先輩・後輩、はたまたお取引先のどなたかかもしれない。
…
札幌市内のとある企業。私より年上で、論理的な物事の考え方をする、優れたお取引先の方がいた。きちんとシルバーの眼鏡を装着して。
彼の商談スタイルは、重箱の隅を突いてくるような、こう言っちゃなんだが、決して朗らかとはいえないタイプの男性。彼と一緒に商談をしていたわけ。
いわゆる合わないタイプの方との商談である。
私は「柔よく剛を制す」ような人間でいたいと思うバリカタ弱腰タイプでありつつも、負けず嫌いの外道だから、その方からの質問という名の火の玉ストレートを、要領よくスタンドに打ち返す。
どんな球がきても、流麗なスイングで美しい放物線を描く打者でありたいと思うのは、保険外交員の私のゴーマンである気がする。往年の名選手、バリー・ボンズのような人間でありたいのだ。
商談中、シルバーの眼鏡をかけたお相手が、あまりにも粘り強く確認をしてくるもので「なるほど慎重で実直な仕事ぶりだ」と思いつつ苦手意識を感じていたのだが、ふとその方を目の前に思うことがあった。
仕事上の付き合いで機械的に話している我々だが、企業型サイボーグである前にどちらも人間である。
それぞれにはリアルな生活がある。
そこに思いをはせると、真面目に仕事をしている自分が途端に滑稽に思えてくる。
火の玉ストレートを続けて浴びせてくる目の前の男性を、ただ真っ直ぐ見つめる。
「いや、イトーさん、それでね、
もう一つ質問ですが……(スッ)」
…
(……ほわんほわんほわ〜ん)
(こ、この人……)
……
…
..
仕事とは全く関係のないその人の日常の光景が、風船のようにぷくぷくと膨らんでくる。火の玉ストレートを浴びせてくる商談相手を目の前に、私は思うわけ。
「そうだ、この方も私と同じ1人の人間だ。仕事のやり方、行動には背景と理由がある。木を見て森も見て、ついでに土も見てみようか」
こう思うと、ふふっと笑えてくる不思議。
…
春は新たな環境に身を置かざるを得ない季節である。商談先で疲れたら、ぜひその方の生活ぶりを想像してみてほしい。
すべてが滑稽に思えて気楽になるから。
オススメやで〜!
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