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若林正恭さん「ナナメの夕暮れ」を読んで

このエッセイ本の中に書かれていたことと同じように思っていたことがたくさんあって、ぶんぶん首を縦に振りながら、くすりとしたり、ほろりとしたりしながら一気に読み終えた。

私は、社会に馴染めずにいた時期があった。今は表面上は馴染んでいる……と思いたい。
「今の私は本当の自分じゃない」とずっと自分にバッテンをつけていたし、本当の自分はどこだどこだ?とずっと探していたし、周りのみんなが味方ではないように感じていた。

みんなが平気で出来ているように見えることが、自分には全然出来ない。どうしてこんなに自分は出来ないことだらけで、ダメなんだろうとずっと自分の内面に深く潜りこんでいた。

そんなことが具体的にわかりやすい言葉で表現されていた。

そして、そんな悩みもがいた時が過ぎて、いろいろな経験や失敗を繰り返して、ゆっくりながらもやり方を学んだのか、ただ歳を重ねて鈍感になったのかわからないけど、ふと気付くとずいぶん生きるのが楽になっていた。

でも、楽になったら今度は前のような上を見上げる気持ちがなくなったように感じて、ただあきらめてしまっただけじゃないのかな、という気持ちがふわりと浮かび上がってきた。

だけど、あとがきに書かれていた言葉で気持ちが楽になった。

エネルギーを"上”に向けられなくなったら終わりではない。
正面”に向ける方が、全然奥が深いのかもしれないと思えたのだ。

若林正恭「ナナメの夕暮れ」あとがきより

上を目指す気持ち、今よりもっとと理想を追い求める気持ち。そんなものがすっかり薄れてしまったように思う今。でも、今は後ろを向いていないし、下も向いていない。しっかり前を見るということも、上を向くことと同じように大事なことだよね、とその言葉で思えた。

わかるわかる!と読みながら勝手に思い、私だけじゃなかったと安心して、同じように踏ん張っていた、こじらせていた人がここにいた、と泣きたくなるような気持ちになった。

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