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【虎に翼】朋一の未来に乾杯 /第25週
NHKの朝ドラ「虎に翼」を毎朝欠かさず視聴している。
この作品は、登場人物達それぞれの人物像がとにかく濃い。
人間とは誰しも一面では語れないが、
それがドラマとなると中々難しいのが現実のように思う(話数もシーンも限られるので、全登場人物を丁寧に描くことが物理的に難しい)。
「虎に翼」で描かれる登場人物達は、
主人公だけではなく、家族、友人、同僚、上司...あらゆるキャラクターが濃い。
そして主人公でさえ不完全で、完璧に正しい人物はいない。
皆どこか欠けていて、悩んで、生きている。
現実を生きる私たちと同じように。
今回は、その登場人物の中の
寅子の息子「朋一」について語りたい。
《寅子と航一、そして朋一》
主人公寅子は夫を戦時中に亡くしている。
そして同じく妻を亡くした裁判官の航一と再婚した。
航一の連れ子、朋一もまた裁判官として志高く勤めていた。
そんな朋一(演:井上 祐貴)は、志ある若手の裁判官達と定期的に自主勉強会を開いていた。
昨今の、政治家から司法への目を意識したトップ層が、
「裁判官が馴れ合っては印象が悪くなる。裁判官とは孤高でなくてはならない」という理由から
その勉強会に参加していた全員を見せしめとして左遷してしまう。
《不本意な左遷、そして折れる気持ち》
朋一も例外ではなかった。
「こんなことで心が折れてたまるか」と、左遷先の家裁でまた一から頑張ろうとするも、心がついていかなかった。
そして遂に、寅子と航一に思いを語る。
「二人は、理想に燃える僕も異動になった僕も受け止めてくれた。家裁で頑張れると思っていた。これくらいで負けてたまるかって。僕は裁判官に誇りを持って、司法の場をより良くしたかった。でももう、何のために、どう頑張るのか、分からなくなっちゃって...ごめんなさい」
そして裁判官を辞めたいと、二人に打ち明けた。
父、航一は言う。
「何も間違っていない。謝ることなど何一つない。」
朋一が寅子達に胸のうちを打ち明けた日の夜、
彼は自ら高級なお肉を買い、家族にすき焼きを振る舞った。
お酒が入り顔を赤らめながら朋一は叫んだ。
「この肉で、全部乗り越える!」
そうして朋一は、裁判官の職を辞した。
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もしもこの朋一の叫びに胸が痛まない人がいるのなら、
これまでの環境に恵まれてきたのだろうと思う。
彼はタイミングに巻き込まれただけだった。
何も悪いことなどしていない。
運悪く彼を面白く思わない人がいて、いわゆる上司ガチャに外れたような状況。
もしかしたら、左遷先の家裁でもう一度奮起すればまた這い上がれるかもしれない。
そんなこと頭では分かっていただろう。そうやって左遷されたことの悔しさや惨めさ、怒り、悲しみを乗り越えようと何度も何度も自分に言い聞かせただろう。
「折れてたまるか」と。
でも、自らを容易に傷付ける環境に身を置くことは、
その環境で頑張り続けると決断することは、
自分自身のことを傷付けることになるのだ。
大切な夢があった、大きな志があった、そんな自分自身のことを。
だから離れる決意をした。
辞める決意を。
それは、どれほど苦しかっただろう、悔しかっただろう。
私は彼に、心から拍手を送りたい。
朋一、貴方は立派だと、讃えたい。
私はまだ踏み切れずにいる。
今自分が勤める会社。
志を持って入社した会社。
パワハラを受けても、同僚からいじめを受けても、それによって身体が完全に壊れる前に行った心療内科で即休職の診断を受けても、結局休職し、復職してもまた、
自分を傷付ける者達に勝てなくても。
それでも踏み切れない。諦めることができない。
だから、
「一つの場所でずっと長く頑張り続けることだけが正しいわけじゃない」
「自分を大切にできる場所を自分で選ぶ」
そんな、頭では分かっていても心が踏み切れないことを
「この肉で全部乗り越える!」
笑顔でそう叫び、
まだ傷ついた心のまま、
完全に乗り越えられてはいない心のまま
前に進もうとする朋一を応援せずにはいられないのだ。