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チベット密教行者「ンガッパ」という存在

チベットに「ンガッパ」(サンスクリット語ではmantrin)という行者がいる。いにしえの昔からその存在はあり、かの河口慧海の本にも「神卸」という名で登場している存在も、おそらく、ンガッパを意味しているのだろう。

ンガッパとは、チベット密教行者です。ヨーガ行者とも例えられ、髭は剃らなく、髪型は多くはドレッドヘアをしており、時には妻帯もするが、現地では僧侶と同様の地位にいます。いや、むしろ、密教行事を執り行う事や血筋などから考えると、チベット仏教または密教でのエリートと考える方が適切かもしれない。

その「ンガッパ」という存在。正確な表現に困るが、チベット仏教僧侶に近い存在であり厳密には僧侶と同一ではないのです。チベット仏教圏では、僧侶はラマと呼ばれ、ンガッパはンガッパと、分けて呼ばれてます。時には同一視または同じラマと呼ぶ人も居ますが厳密には違う存在です。

密教系の人骨からできた法具などを用い、独特な風貌から、時には奇異な存在として目に映る場合もあると思う。
世俗を捨てた秘密の行者という雰囲気があるが、実はチベットにおいて、高い地位にある方々もンガッパであったりもする。

文献では白い衣を纏うともあるが、僕が知る限り、今はそうでないンガッパも多い。むしろチベット僧侶と同じ濃い赤紫色である燕脂色の僧衣を纏っていている。

因みに、ンガッパはチベット語であり、「ンガッパ」の「ン」は喉の奥から発音するチベット語の独特な音で、日本語にはない発音方法です。

右端に座る、髭をしたドレッドヘアの男性がンガッパ

上の写真の三人のチベット仏教僧侶のうち、右端のドレッドヘア(頭上に髪をお団子にしている)の方がンガッパである。ある日、ラダックの辺境の有名なチベット寺院の麓の村で民家に泊まっていたところ、その家で儀式を執り行うとの事なので部屋を覗いた所、ンガッパが居たのである。
机の上には、ドルジェやベルが並び、ンガッパは僧侶と同様にチベット仏教の儀式や祭事を執り行っておりました。その時に見た神秘的な面持ちと紳士的な態度は忘れられない。

人骨の笛カンリンと太鼓ダマルを持つンガッパ

東チベットに近い、ある街で出会ったンガッパは路上に居た。人骨の笛カンリンを手に持っていた。チベットでも実際にカンリンを使っているのをリアルタイムで目にする事は稀で、会えて嬉しかったのを覚えている。

人骨の杯でお茶を飲むンガッパ

チベット自治区ラサで出会ったンガッパ。人の頭蓋骨のお椀でバター茶をごくごく飲む、ンガッパ。本気系の密教行者のンガッパ。クセが強いのです。

頭蓋骨の杯にバターを溶かす。バター茶を飲んでいる

人骨の杯や数珠は、カパーラ(またはカパラ、カパラーとも)と呼ばれ、
密教系の人は、人骨を愛用する。グロイと思われがちだが、正式な伝統を持つ法具。かなり深度が深い部類のチベット密教法具です。
カパーラに関しては下記記事で書きました。

笑うンガッパ

彼は西チベットのンガリ地方から来たンガッパらしい。

人骨の数珠カパーラ

試しに、このンガッパが持つカパーラの数珠を「いくらならコレ、譲る?」と交渉してみたが、「5万元(約90万円・当時為替レート)なら譲る」と言われる。絶対いらない。
因みに、チベットは独自の通貨は今は持ちません。全て中国元です。

「この数珠は、なんちゃらかんちゃら」と言っていたが、野太い声で唾がやたら飛ぶので、話が全く入ってこなかった。

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チベット密教の特有で独特さを体現する「ンガッパ」

奥の深いチベット仏教の、その更に奥。
複雑怪奇なチベット仏教の深淵な存在でした。




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