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大好きなチョコレートで、大好きな地元を活性化!

HIPPO to MOCA 店主/平田 朋佳さん

《原体験》チョコレートを食べ続けたい!

私は子どもの頃からお菓子が大好きでした。中でもチョコレートは特別で、朝・昼・晩の3食がチョコレートでも飽きないほどでした。

しかも、かなりの偏食。朝ごはんをチョコや菓子パン、アイスクリームで済ませることも多く、親も自由にさせてくれるタイプだったので特に口出しはされませんでした。

地元は大阪なのですが、私は4歳から12歳まで中国の上海で過ごしました。上海では日本のお菓子がとても高く、代わりに日本だとバレンタインの時期にしか見ないようなヨーロッパのチョコが普通に売られています。私のチョコ好きは、その影響もあるかもしれません。

そんな調子で毎日のようにチョコレートを食べていた私も高校生に。私の高校では早くから進路指導があり、1年生の5月頃には進学先を考える必要がありました。

「大好きなチョコレートを、死ぬまで食べ続けたい」
「そのためには、健康や栄養のこともしっかり考えないと」
「将来のことを考えると、何か資格を持っておきたい」

こんな思いを巡らせながら進路を考えた末、私は健康や栄養に関する学部のある大学へ進学。管理栄養士の資格をめざして勉強に励みました。

大学に入学したのは2018年ですが、その頃、若者の間で大ブームになっているものがありました。instagramです。前年に「インスタ映え」が流行語大賞に選ばれ、私の周りでも多くの人が使っていました。

そして相変わらずチョコレート好きだった私は、あることを思いつきます。

「instagramで有名になって、チョコレート業界を盛り上げよう」

当時「日本にもっとチョコの商品が増えてほしい」と思っていた私は、インスタで業界の活性化に貢献しようと思ったのです。そして20歳になったのを機に、私は「チョコガール」という名でインフルエンサーの活動を開始。市販のチョコレート菓子について、製法や栄養価などのマニアックな情報を発信し始めました。

今では大手コンビニチェーンやメーカーの開発担当者も商品開発の参考にしているそうです

そしてこの頃、何となく「自分でお店をやりたい」と思うようになります。きっかけは、当時住んでいた地域に洋菓子店が少なく「選択肢が少ないのはツラいなぁ」と感じていたこと。「だったら、自分で作ってしまおう」という感じですね。

当時は自分でお菓子を作れなかったので具体的なイメージはまったくなかったのですが、管理栄養士をめざしていたこともあって「健康志向のチョコレートを作りたい」という思いはありました。

そして、そのことを大学の授業や食育ボランティアなどで関わる人たちに言って回っていました。「将来、チョコレートのお店をやります」と。取りあえず、出会う人みんなに言って回っておけば実現するんじゃないか、という感じで(笑)

大学卒業後は一旦、チョコレートブランドの会社に就職し、販売や製造補助、バレンタインなどの催事を経験します。そして働きながら社会人向けの製菓学校に通ったり、市の起業支援プログラムに参加したりして、自分の店を実現するための準備も進めました。

こうして「自分の店を持ちたい」という夢が少しずつ具体的になっていきましたが、最終的に実現の決め手となった2つの出来事があります。ひとつは、アフリカのガーナを訪問したことです。

チョコレート業界の方と関わっていると、カカオの生産国であるガーナを訪れたことのある人が多く、私も機会があれば行きたいと思っていました。あるとき、実際に訪問した方に「どうすれば行けるんですか?」と聞いてみたのですが、そこでJICA(国際協力機構)の「サステイナブル・カカオ・プラットフォーム」という事業を教えていただきました。

これはアフリカや中南米などのカカオ生産国が抱える環境、経済などの社会課題解決に取り組むもので、現地の視察を通して実情を学べるプログラムです。本来は企業向けのプログラムなのですが、メールでありったけの熱意を伝えたところ、見事に採用!ガーナ訪問が実現しました。

ガーナ訪問の様子はチョコガールのinstagramで読むことができます

ガーナでは現地の農園や学校、チョコレート会社などを視察し、さまざまな問題を学ぶと同時に、解決に向けた取り組みの存在も知ることができました。そして、何より刺激になったのは現地の人々のビジネスに対する姿勢です。

ガーナの人たちはみんな楽観的でビジネスに対して自信満々。しっかりとした根拠がなくても「絶対うまくいくよ!」という感じで、トラブルがあっても「まぁいいか」の精神で乗り切ってしまうんです(笑)。

私もお店を出す夢に向かって歩みを進めていましたが、やはり「失敗したらどうしよう」とか、「収支計画はこれでいいのか」とか・・・いろいろな迷いがありました。それが、ガーナの人たちとの交流で吹き飛び、「取りあえず、やりながら考えよう」という気持ちになることができました。

そしてもうひとつ、実現の決め手となったのは、お店を間借りさせてくださっている方との出会いです。就職した会社を辞めた後、私は地元の人たちのニーズを知るためにフレンチのお店で働き始めました。

そこのオーナーは姉妹店として別の場所にキッシュとタルトのお店も持っているのですが、私の夢を知って「定休日に間借りでやってみたら?」と言っていただきました。その方には「こんな店を堺でやりたい」と夢を語ったり、試作品を食べてもらったり、いろいろと相談していました。

そして、妄想ばかりでなかなか一歩を踏み出さない私の背中を押すために、間借りを提案してくださったんです。試作品に対して時には意見もいただきつつ、「本当においしい!」と言っていただけたのも、大きな自信になりました。

こうして2024年7月7日、私の夢だったチョコレート菓子店「HIPPO to MOCA」がオープン。現在は週に2日のみの営業ですが、いずれ自分自身の店舗を構える日を夢見て奮闘しています!


《現在の事業》地元の食材を生かしたチョコレート菓子店

大阪府堺市でチョコレート菓子店を経営しています。
チョコレートの原料は、ガーナを訪問したときに知った「ココアホライズン」という生産地の生活を支援する制度の認証を受けたものを使用しています。

また「チョコレートを通じて堺の魅力をアピールしたい」という思いもあり、地元の食材を使った商品を中心に販売しています。

例えば、堺で330年以上続く老舗の味噌や、1854年創業のお茶屋さんのほうじ茶、もなかの皮を江戸時代から作り続けている老舗の皮などを使ったチョコレート菓子です。堺産の米粉を使ったシフォンケーキも販売しています。

堺には歴史のあるお店がたくさんありますが、人が減って閉まっていくお店も少なくありません。私のお店がコミュニケーションツールとなって、これらの魅力を広めていきたいと思っています!


《10代の皆さんへメッセージ》

リスクを恐れて一歩を踏み出せないことはありませんか?私も最初の一歩が踏み出せずにいろいろと悩んでいました。
そんな私が心がけていたのは「タイムリミットを決める」ことと「取りあえず0円でできることから始めてみる」ということです。

タイムリミットを決めると、どこかの時期で必ず追い込まれるので、無意識にいろいろな判断ができるようになりました。
なので、何かしたいと思ったら「何歳までに」を決めたうえで妄想を膨らませてください。そして、今できることをリストアップして、考える前に動き、動きながら考える(なかなか難しいのですが・・・)。
過去の自分に言っているようですが、「卒業したらやります」とか「一旦考えます」といって立ち止まると、なかなか動き出せません(笑)。

そして「0円でできることから始める」ですが、私の場合はこんな感じでした。

●認知度を向上してファンを獲得したい→instagramで発信
●技術面でアドバイスが欲しい→その道のプロに会いに行く
●起業のための勉強→行政の起業家輩出プログラムに参加

もちろん時にはお金をかけるべきタイミングもありますが、取りあえず動き始めるためのハードルを下げるうえでも、無料でできることを探してみると良いでしょう。

コツコツと動き続けることで不安材料を減らせることもあります。そのうえで、自信を持って一歩を踏み出してほしいと思います!

(取材日:2024年11月3日)


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