「舞田ひとみ」は、「気位の高い女の子」(歌野晶午作品のヒロイン)
こんにちは、ぱんだごろごろです。
今回は、頭が切れて、抜群に可愛い女の子が探偵役のミステリー小説を、二冊読みましたので、ご紹介します。
「名探偵、初心者ですが 舞田ひとみの推理ノート」歌野晶午(角川文庫)
「誘拐リフレイン 舞田ひとみの推理ノート」歌野晶午(角川文庫)
ヒロイン、舞田ひとみの魅力
前者では、小学生で11歳のひとみは、後者では17歳の高校生になっています。
この二冊は、実は刊行時には別の題名だったようで、この二冊の間には、中学生の時の活躍を描いた、「舞田ひとみ14歳、放課後ときどき探偵」という短編集が存在します。
今回、私は、二冊を電子書籍で買って読んだため、この中学生時のひとみには出会えなかったのです(「舞田ひとみ14歳」は、まだ電子書籍化されていないようです)。
しかし、可愛くて、大胆で、ちょっと皮肉屋でシニカルなところのある、でもとびきり友達想いのひーちゃんの魅力には、メロメロになってしまいました。
頭が良くて、成績も良く、家族思いで、努力家で、とんでもない実行力のある女の子。
まだまだ成人前で、親がかりの身ゆえ、自分一人の判断で、自分の人生を突き進む訳には行きませんが(そして賢い彼女は十分そのことをわかっています)、このまま大人になれば、必ずや「気位の高いひと」になってくれるであろう、期待の星です。
<二大びっくり>小説
まず、先に、ヒロインの魅力について語ってしまいましたが、この二冊の作者は歌野晶午です。
彼の最も有名な代表作は、「葉桜の季節に君を想うということ」でしょう。
この作品は、私の中では、乾くるみの「イニシエーション・ラブ」と並んで、<二大びっくり>小説として、確固たる地位を築いています。
もし、あなたが、「葉桜の季節に君を想うということ」と「イニシエーション・ラブ」の二冊を、まだ読んでいないというのなら、ぜひとも読んでみて下さい。
読後、唖然とするに違いありません。
どこで騙されたのかも、最初はわからないでしょう。
「イニシエーション・ラブ」に至っては、私は、読み終わってもまだ意味がわからず、解説を読んで、よくよく考えて、元に戻って読み、ようやく自分が騙されていたことに気付いたほどです。
歌野晶午作品について
さて、歌野晶午に戻って、彼の作品には、非常に凝った設定や手法が使われることがあり、「密室殺人ゲーム王手飛車取り」とそれに続く「2.0」「マニアックス」の三部作などは、その代表です。
そのため、ややもすると、読む人を選ぶ傾向があるのですが、今回取り上げている「舞田ひとみシリーズ」は、刑事を叔父に持つ少女が主人公ということもあり、起きるのは、比較的穏やかな事件達です(もちろん、殺人事件も起こりますが)。
「名探偵、初心者ですが」
「名探偵、初心者ですが」の方は、短編小説集。
母のいないひとみを、男手一人で育てる兄を心配して、実家に立ち寄る弟、舞田歳三。
彼は刑事で、いつも事件を抱えています。
ひとみの相手をしているうちに、何気ないひとみの一言から、事件解決の糸口を掴みます。
時には、ひとみが、子供同士のネットワークを駆使して、手に入れた情報を、歳三に届けます。
ひとみが、無邪気な子供を装って、横柄な大人をぎゃふんと言わせる場面もあり、クールで切れるひとみと叔父さん刑事との連携プレーで、事件を解決に導くのです。
「誘拐リフレイン」
「誘拐リフレイン」は、17歳になったひとみが登場する長編推理小説です。
幼なじみの馬場由宇が、善意からした行為が思わぬ事件を呼び、それが解決したかと思えば、また別の誘拐事件が発生します。
馬場由宇が、幼児虐待を疑った夫婦は、果たして無実なのか。
改心を誓った言葉と行動は信用できるのか。
本作では、ひとみは留学を目指して夜遅くまで、猛勉強しています。
高校を中退してしまい、精神状態が不安定な母と暮らす馬場由宇は、引きこもりになってはいるものの、心根は優しい少年です。
ひとみしか頼る相手のいない彼に、正論や皮肉を浴びせながらも、ひとみは親身になって行動するのです。
留学試験のため、TOEFLの勉強に励むひとみの姿はリアルで頼もしく、要領の悪い馬場少年を、決して突き放さず、見捨てない、その彼女なりの理由を、彼に話すラストのシーンは、読んでいてジーンとしました。
まとめます。
可愛くて格好いい、頭脳明晰な美少女が探偵役になり、11歳の小学生から、17歳の高校生にまで成長してくれる、「舞田ひとみの推理ノート」シリーズ。
推理小説としてだけでなく、少女の成長小説として、幼なじみを思い遣る友情小説として、文句なしに楽しめるシリーズです。
歌野晶午が初めて、と言う方にも、躊躇なくお薦めできますので、安心してお読み下さい。
そして、この二作品を読んだ後も、「葉桜の季節に君を想うということ」が未読の方は、そちらも必ず読んで下さいね。
ミステリー小説における必読書です。
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