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奇縁堂だより15【本の紹介:「樹」を題材にした小説】

 樹木や花卉(“かき”と読むのだそうで,観賞用になるような美しい花をつける植物の総称らしいです)を使って人工的に仕立てた造形物を一般に『topiaryトピアリー』と呼ぶそうです。

 先般,所用で出かけた時に,何気なくいつもと違う道を歩いていたら,こんな素敵な?不思議な?トピアリーを庭先に造ってあるお宅を発見しました。


 コレが誰の顔なのかはわかりませんが,剪定する労力と技術に敬意を表すると共に,剪定されている樹木の生命力にも感嘆させられました。

 ところで,樹木の中には数百年〜数千年を生き抜いて来たものもあります。
 有名な屋久島の縄文杉は樹齢が7200年ともいわれているそうで,ここまで来ると生命の驚異を感じずにはいられません。日本人は,昔から巨樹や老樹には神が宿るとして,崇拝(自然崇拝)の対象としてきました。

近 年,私が見たの老樹は横浜市・金沢区の瀬戸神社にあるカヤ,静岡県・熱海市の来宮神社にある大楠,伊豆修善寺の日枝神社にある一位樫と夫婦杉です。どれも注連縄を張り,厳かな佇まいを見せていました。


瀬戸神社のカヤ
瀬戸神社のカヤ


 そこで今回は,奇縁堂の在庫の中から不思議な『古木』を題材にした小説を2冊ピックアップして紹介します。2冊とも“楠(クスノキ)”が題材になっています。

 ちなみに,クスノキは主に関東以西に生育する常緑高木で,巨樹となりやすいという特徴があります。また,クスノキは虫除けに用いられるショウノウ(樟脳)の原材料であるため「“厄を払う”あるいは“厄を除く”に通じる」ことから,神社のご神木として栽植されることが多くなったとされています。

 以下では“クスノキ”と“くすの木”に表記が分かれていますが,これは各々の書籍に準拠したためです。予めご了承ください。


・『クスノキの番人』 (東野圭吾 : 著) 四六判, ¥660(税込)
 不当な理由で会社を解雇された青年・玲人は,腹いせに事件を起こし逮捕され起訴を待つ身となる。
 そこへ突然弁護士が現れ,依頼人の希望を聞くことを条件に釈放を持ちかけられる。そして玲人はその条件を飲む。
 条件とは“クスノキの番人”になること。そのクスノキは「祈れば願いは叶う」と言われている古木だった。
 番人を任された玲人と,クスノキのもとへ祈念に訪れる人々の織りなす不思議な物語が始まる…


・『千年樹』 (荻原浩 : 著) 文庫, ¥300(税込)
 
京から東へ下った国司が,家臣の謀反によって襲われ,妻子と共に山中への逃げ巨大な“くすの木”のもとへたどり着く。しかし力尽きて妻が死に,国司も死ぬ。一人残された幼児が “くすの実”を食べようと口に含んだとき……
 時代を超えて交錯した“くすの木”をめぐる連作短編集です。
 ・中学生の雅也はいじめに遭い巨樹で自殺考え…「萌芽」。
 ・園児たちが巨樹の下で見つけたガラス瓶に入っていたのは戦争の悲劇…「瓶詰の約束」。
 ・祖母が戦時中に巨樹の洞で受け取った手紙と孫娘を描いた「バァバの石段」。
 そのほか「梢の呼ぶ声」,「蝉鳴くや」,「夜鳴き鳥」,「郭公の巣」,「落枝」の5編を収載。

ここまでお読みいただきありがとうございました。
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