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奇縁堂だより 39 【本の紹介 : 絵画と小説】
先日(11月末),箱根仙石原にあるポーラ美術館に行ってきました。真っ赤に染まった箱根の山の中にある美術館を期待していたのですが,温暖化の影響でしょうか,12月を目前にしたこの時期にも関わらず,紅葉の本番までは今少しというところでした。
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ただモネ,マネ,ルノアール,セザンヌなど多くの印象派から,後期印象派と呼ばれるゴッホとルソー,そして新たな表現を切り拓いたピカソなど,多くの作品を間近で鑑賞することができ,とても充実した時間を過ごしました。
ただ,企画展「フィリップ・パレーノ:この場所、あの空」は難解でした…
35年も前の話になりますが,当時勤めていた会社の出張でフィアデルフィアに行った時に,バーンズコレクションを鑑賞する機会に恵まれ,帰国間際にはニューヨークの近代美術館(MoMA)を訪れるという贅沢な体験をしました。
ポーラ美術館では,この二つの美術館で上述した著名な画家たちの作品の数々に圧倒されたことを思い出しました。
そこで,今回はゴッホとルソーの作品を題材にした小説と,贋作者としてあまりにも有名なギィ・リブの告白書,そしてMoMAの図録を紹介します。
紹介作品一覧
○『楽園のカンヴァス』 原田マハ
○『ゴッホは欺く(上下巻)』 ジェフリー・アーチャー
○『ピカソになりきった男』 ギィ・リブ
○『AN INVITATION TO SEE 125 PAINTINGS FROM THE MUSEUM OF MODERN ART』 ニューヨーク近代美術館
作品紹介
○『楽園のカンヴァス』 原田マハ 文庫 ¥350(税込)
不遇の画家アンリ・ルソーの晩年の大作『夢』をめぐる物語。
主人公は,MoMAのキュレーターであるティム・ブラウンと日本人のルソー研究者である早川織絵。二人はルソーの『夢』に似た絵画の真贋判定を依頼される。そして,持ち主は正しい判定をした者にこの絵画を譲るという。
真贋判定の手がかりとなるのは謎の"古書"だけ。なんとその古書にはパブロ・ピカソがキーマンとして登場する!
果たしてティムと織絵,どちらが先に正しい判定に辿り着くのか!?
著者はMoMA勤務を経たフリーのキュレーターだけに,絵画に関する表現には卓越したものがあるように感じられます。本書は山本周五郎賞受賞作です。
ポーラ美術館にはアンリ・ルソーの「ライオンのいるジャングル」,「エデンの園のエヴァ」,「エッフェル塔とトロカデロ宮殿の眺望」の3作が展示されていました。ちなみに,パブロ・ピカソの作品は「海辺の母子像」だけが展示されていました。
○『ゴッホは欺く (上下巻)』 ジェフリー・アーチャー 文庫 ¥500(税込)
フィンセント・ファン・ゴッホの『耳を切った自画像』を取得するために殺人をも厭わない新興銀行のオーナーと,道義的責任からこれを阻止しようとする同銀行の美術コンサルタント・アンナの物語。
話はニューヨークで起こった9.11の同時多発テロ事件を起点として始まり,暗殺者との戦いはチャウシェスク政権時代のルーマニアにまで遡って繰り広げられます。
全編を通して開陳される著者の絵画に関する豊富な知識には驚かれます。
ポーラ美術館にはゴッホの「あざみの花」が展示されていました。
○『ピカソになりきった男』 ギィ・リブ 四六判 ¥440(税込)
本書の著者は、ギィ・リブというフランス人の贋作師です。彼は30年に渡り、ピカソやシャガールなど名だたる巨匠の贋作を作り続けました。
まず”贋作"というと模倣いわゆるコピーを思い浮かべる人が多いと思います。
しかし、ギィ・リブはコピーを作るのではなく、「有名画家が"描いたかもしれない”作品」を描いたのです。つまり、巨匠と言われる画家の新作を”創った”のです。
一人の贋作師(著者)の人生を通して,真作証明書つきで贋作が出回るからくりや,美術界のおどろおどろしい実態が明らかにされる衝撃のノンフィクションです。
○『AN INVITATION TO SEE 125 PAINTINGS FROM THE MUSEUM OF MODERN ART』 ニューヨーク近代美術館 25.2cm×21.5cm ¥1,430(税込)
書名を翻訳すると『近代美術館所蔵の絵画125点への招待』。1987年発行のニューヨーク近代美術館の図録です。
「百聞は一見に如かず」ならぬ「125点は一見に如かず」というところでしょうか! 是非,本書をご覧になってください。
奇縁堂では,今回紹介した書籍以外にも美術関連本(図録や画集)を販売しています。
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