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奇縁堂だより8【本の紹介:エドガー賞】

 アメリカ探偵作家クラブ賞(MWA賞)は,ミステリの父と呼ばれるアメリカの作家エドガー・アラン・ポー(1809-1849)にちなんで1946年に創設された文学賞で,エドガー賞とも呼ばれています。ポーの作品(代表作は『アッシャー家の崩壊』,『モルグ街の殺人事件』,『黒猫』,『黄金虫』など)は,後のミステリ作家に多大な影響を与えたことはご存知の通りです。

 この賞は,アメリカ探偵作家クラブ(Mystery Writers of America:MWA)が,前年の1月から12月に米国で発表されたミステリ作品を対象に選定します。最優秀長編賞,最優秀処女長編賞,最優秀ペーパーバック賞,最優秀短編賞のほか,多くの部門賞があります。
 2004年に日本推理作家協会賞を受賞した桐野夏生の『OUT』が,2012年には直木賞を受賞した東野圭吾の『容疑者Xの献身』が長編賞にノミネートされましたが,残念ながら受賞には至っていません。

 そこで今回は,書肆奇縁堂の在庫の中から長編受賞作をピックアップして紹介します。ミステリ好きにはたまらない,面白い作品がたくさんあります。

●ピックアップ

・『第三の眼』(ケイ・ノルティ・スミス:著) 文庫,¥ 220 (税込)
 
〈1981年最優秀処女長編賞〉
 
アメリカ大統領候補のブレーンを務める高名な社会科学者グレンジャーが転落死した。直前に彼と口論していた女性記者のアーストリッドが殺人事件の容疑者となる。しかし,アーストリッドは容疑を否認したうえ,グレンジャーについて驚くべき告発をする…。アーストリッドのかつて恋人であるデイモン刑事が事件を追い,深層に迫る…。

・『倒錯の舞踏』(ローレンス・ブロック:著) 四六判,¥ 440 (税込)
 〈1992年最優秀長編賞〉
 無免許の探偵マット・スカダーの知人がレンタルしたビデオには,恐るべき現実の猟奇殺人の一部始終が録画されていた。しかし,その映像からは被害者の身元はもとより,犯人の正体も判明しなかった。しばらくして,スカダーは偶然にも,その犯人と思しき男性を目撃するが…。被害者は?そして犯人は? 

・『捜査官ケイト』(ローリー・R・キング) 文庫,¥ 250 (税込)
 〈1994年最優秀処女長編賞〉
 ベテラン捜査官アルは,新任女性捜査官ケイトとチームを組むことになった。アルは新任の彼女と組まされたことを面白く思っていないが…。
 サンフランシスコ郊外で,三件の幼女連続殺人が起こった。ケイトとアルはお互いを意識しながら捜査を進める。そして,その線上に浮かび上がったのは,女児殺害で過去に服役したことのある女性画家…。

・『緋色の記憶』(トマス・H・クック:著) 文庫,¥  350(税込)
 〈1997年最優秀長編賞〉
 田舎町チャタムのバス停に,緋色のブラウスを着た美しい女性チャニングが降り立った。チャニングは私立校に赴任してきた新任教師。校長の息子であるヘンリーは一目惚れしてしまう。しかし,彼女は妻子ある男性教師と不倫に…。そこから悲劇が始まった。
 「甦るあの日の記憶が老いたわたしを今も苛む」老弁護士が回想する恐ろしい冬の真相とは? 

・『サイレント・ジョー』(T・ジェファーソン・パーカー:著) 文庫,¥ 350 (税込)
 〈2002年最優秀長編賞〉
 乳児期に,実の父親から顔に硫酸をかけられ大火傷を負ったジョー。施設にいた彼を政界の実力者ウィルが引き取った。ウィルは良き養父としてジョーを育てた。成人したジョーは昼は保安官補,夜はウィルの護衛として物静かなジョー(サイレント・ジョー)として働いていた。
 誘拐されたウィルの政敵の娘を保護した直後,ジョーの目前でウィルが何者かに射殺された。ジョーは真相を追及するが,結果としてウィルの関わっていた事件も白日の下に…。

・『エヴァーグレイズに消える』(T・J・マグレガー:著) 文庫,¥ 350 (税込)
 〈2003年最優秀ペーパーバック賞〉
 タウンゼンド親子(夫のアンディ,妻のレニー,娘のケイティ)はフロリダの大湿地帯エヴァーグレイズにキャンプにやって来た。しかし,訪れた村にはまるで人影がなく,まるで映画のセットのよう。不安を感じはじめたとき,奇妙な音があたりに…。親子が迷い込んだのは,大湿地帯に作られた大規模な実験場だった。
 極秘実験に偶然巻きこまれてしまった三人に,機密漏洩を恐れる機関の追跡が迫る。親子の運命は…。

・『カリフォルニアガール』(T・ジェファーソン・パーカー:著) 四六判,¥ 440 (税込)
 〈2004年最優秀長編賞〉(2002年の『サイレント・ジョー』に続く2度目)
 オレンジ出荷工場の廃屋で,首を切り落とされた若い女性が発見される。刑事のニック・ベッカーが現場に駆けつけると,被害者はニックが少女の頃から知っているジャニルだった。幼い頃の彼女を知るベッカー家のニック,アンディ(記者),デイヴィッド(牧師)三兄弟はそれぞれの立場で事件の闇に関わっていく。
 刑事のニックは記者のアンディと事件を探って行くと,何と!ジャニル殺害の真犯人は…。

・『出生地』(ドン・リー:著) 文庫,¥ 250 (税込)
 〈2005年最優秀処女長編賞〉
 日本人と黒人の間に生まれ大学院生の女性リサが,博士論文作成のための調査で東京を訪れた際に失踪した。リサの姉から行方不明の知らせを受けたアメリカ大使館の職員が調査を開始するが,行方は杳として知れない。麻布警察署の刑事が捜査を開始するが…。

・『告白』(ドメニック・スタンズベリー:著) 文庫,¥ 350 (税込)
 
〈2005年最優秀ペーパーバック賞〉 
 
司法心理学者のジェイクは,裕福な妻と暮らす傍ら,女性弁護士サラとの不倫も楽しんでいた。しかし,突発的に意識を失う症状が出現し,妻に不倫がバレて別居を宣告される。
 程なく,ジェイクの体液が残ったサラの死体が発見された。犯人は突発的に意識を失うジェイクか?それとも罠か? 

・『イスタンブールの群狼』(ジェイソン・グッドウィン:著) 文庫,¥ 350 (税込)
 
〈2006年最優秀長編賞〉 
 
オスマン帝国近衛新軍の四人の士官が突然姿を消し,次々に惨殺死体で発見された。まさに,帝国を震撼させる残忍な連続殺人である。スルタン(君主)臨席の閲兵式を間近に控え,司令官は早期の解決を図るため,聡明との評価が高い宦官のヤシムに調査を依頼する。
 死体が指し示すのは,近代化のために抹殺されたかつての最強軍団イェニチェリの残党であり,その背後には不穏な動きが…。宦官ヤシムの捜査は…。

・『チャイナ・レイク』(メグ・ガーディナー:著) 文庫,¥ 350 (税込)
 
〈2009年最優秀ペーパーバック賞〉
 
女性弁護士でありSF作家でもあるエヴァンは,兄が養育権を持つ甥のルークと暮らしていた。兄の別れた妻はカルト教団に入信し,教団と共にルークを執拗に取り戻そうとする。エヴァンはルークを守るため,教団の嫌がらせと,誘拐の企み敢然と立ち向かう…。


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