「鶏卵」の食べ進め方、「固ゆで卵黄1個」食べられないと「卵白」「全卵」は食べちゃダメ?
離乳食の「鶏卵の食べ始め方」「鶏卵の食べ進め方」については、いろいろな情報があり、迷われている親御さんも少なくないかと思います。「いつから始める」「何から始める」「どうやって進めていく」などなど、疑問も少なくないかと思います。あくまで離乳食は「食事」であり、「発達の個人差」「好みの個人差」、さらには「アレルギー体質の差」(=アレルギー症状が出るかどうか)や「親御さんの心配具合」などの違いもあり、赤ちゃん全員に当てはまる王道の食べ進め方はありません。鶏卵について「何から食べ始めるのか?」「どのように食べ進めるのか?」、その答えに正解はありませんが、このように考えると良いのではないかというヒントとして、1つの考え方として、ご参考になれば幸いです。
「いつから」食べ始める?
鶏卵の食べ始めの時期に関しては、「少しでも消化機能が良くなってから」「心配だから」と、食べ始めを遅らせようとされる親御さんもいらっしゃいますが、食べ始めを遅らせても鶏卵アレルギーの発症は減らせません。むしろ、遅らせること自体がアレルギーの発症にとって「悪影響」になる可能性があります。「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」には、離乳初期(生後5-6ヶ月頃)に「慣れてきたら、卵黄等」という記載がありますし、離乳中期(生後7-8ヶ月頃)には「卵黄1個~全卵1/3個」との記載があります。
離乳食の進め方全般において、食物アレルギーに配慮しながら進めるコツについては、こちらの記事も参考になるかと思います↓
簡単に書くと、『少しずつ進める』=『「開始の量を少なくして」「増量幅を少なくして」無理せず進める』と強いアレルギー症状を出すリスクを少なくしながら食べ進めることが出来ます。ただし「開始の量」も「増量幅」も少ないと、なかなか日常摂取量あるいは目標とする量までに到達しませんので、「お子さんのアレルギー体質の強さ(アレルギー疾患をお持ちの家族が居るか)」「お子さんの皮ふの状態」「親御さんのご心配具合」などに合わせて、「耳かき1杯」「赤ちゃんスプーン半分」「小さじ1杯」だったりと増やし方をご検討頂くと良いかと思います。
食べ始めは「固ゆでの卵黄」か「全卵」か?
上記のnote記事にも書いた通り、食物アレルギーの症状を強く出さずに進めるコツの一つは、「少しずつ食べ進める」ことですが、鶏卵の場合は、「加熱」することでアレルギーを起こすたんぱく質が少なくなる=アレルギー症状の出やすさが減るという特徴があります。つまり、加熱が甘いとアレルギー症状が出やすいリスクがあるため、最初はしっかり加熱したもので食べ進めた方が良いのではないかということです。そのしっかり加熱出来る料理の代表が「ゆで卵」となります。これらについては、こちらのnote記事が参考になるかと思います↓
「鶏卵アレルギー:鶏卵に関するお役立ち知識&誤解されていそうなこと」が参考になるかと思います↓
通常の調理方法であれば、生卵と比べて「炒り卵では1/10」「錦糸卵で1/100」「ゆで卵では1/10000」の「オボアルブミン」が残るということになります。もちろん、しっかり加熱を意識して調理したぱらぱらの「炒り卵」や「薄焼き卵」であれば、もっとオボアルブミンの量は減りますし、「オボアルブミン」に対してアレルギーが無ければあまり問題にならないかとは思いますが、食べ始めの段階で、鶏卵アレルギーがあるかどうかは不明ですので、慎重にいかれた方が良いのではないかと考えております。
また、通常のじんましんや咳が出るなどの鶏卵アレルギー(即時型)は「卵白」が原因ですし、「卵黄」が原因となる「食物たんぱく誘発胃腸症=消化管アレルギー」というものもあり、アレルギーのタイプは異なりますが、「卵白」も「卵黄」もアレルギーの原因となります。ということは、アレルギーをお持ちの赤ちゃんの場合、例えば、「全卵」で食べ始めて「嘔吐」があった際には、いずれのアレルギーかが解りにくいということになります。
「卵黄」の「食物蛋白誘発胃腸症」については、こちらもご参考にしてください↓
ちなみに、事前に血液検査で「卵白の特異的IgE値」を検査しても、卵白のアレルギーがあるかどうか(卵白が症状無く食べられるかどうか、どれくらいの量なら食べられるかどうか、など)は判断出来ず、あくまで卵白を食べてみてアレルギー症状が出るかどうかで確定診断となります。卵黄の消化管アレルギーの場合は、現在のところ、診断の参考もしくは指標となる血液検査の項目自体がありません。
一方で、「いきなり全卵で開始」するメリットは、「卵白の食べ始めが通常より早く出来る」ということです。卵黄の開始の離乳初期(生後5-6ヶ月頃)から卵黄ではなくて全卵で食べ始めるということにすれば、「生後5-6ヶ月頃から卵白が開始出来る」ということになります。全卵で開始するデメリットは、「卵黄と卵白が同時に食べ始めになる」「加熱が甘くなりがち」ということになります。繰り返しになりますが、「全卵で開始」する場合には、しっかり加熱をすることが大前提となります。
「固茹で卵黄1個」食べられないと「全卵」「卵白」は食べてはいけない?
「卵白の食べ進め方」について補足しておくと、離乳食の進め方のご相談の中で、「卵黄1個食べられないから卵白に進めない」というご相談も多いです。実は頑張って食べられようとしているその「固茹で卵黄丸々1個」を仮に食べられても、「卵白の量としては0.5gにも満たない」ことになります(計算上、卵を茹でて直後に分離した卵黄1個には「卵白0.01g程度」、茹でて1時間放置した後の茹で卵黄には「卵白0.5g程度」が含まれていることになります)ので、量的・食欲的に、趣向的に、卵黄の丸々1個まで進めそうになかったら、むしろ卵白を極少量から開始する方が「卵白の食べ始めが遅れ過ぎず」に卵アレルギーの発症の予防には有利になる可能性があります。
ここまで書いてきましたが、鶏卵を「より慎重に」進めるとすれば、こうされると良いかと思います。
・アレルギー症状が出た際に卵黄か卵白かのいずれが原因なのかがわかりにくいため「卵黄と卵白は別」にして食べ始める方が良い
・アレルギー症状を強く出さないために、しっかり加熱が出来る「茹で卵」の方が良い
・全卵での食べ始めるとすれば、出来るだけ「しっかり加熱」した方が良い
また、あまりアレルギーについて気にされなくて良さそうな赤ちゃんであれば「全卵から開始でも良い」かとは思います。その際には、いきなり「雑炊」「かき卵」「フレンチトースト」など、加熱が甘くなりがちな料理にはせず、量も大胆に食べ過ぎないようにされた方が良いかとは思います。