【書評】暮らしを哲学する/氏家法雄
こんにちは、きどころです。
代わり映えのない日常がつまらない。
誰しもが一度はふと思ったことあるんじゃないでしょうか。
ただ、そんな代わり映えの日常を脇目も振らず消化していく僕らではありますが、一度立ち止まって、日常の”あたりまえ”を問い直してみる。
暮らしの至る所にある小さな驚きを拾いあつめ、いちいち自分のあたまで考えてみる。そんな営みを「哲学」と呼ぶのでしょう。
仕事なんかでも「自分のあたまで考えろ!!」なんて怒鳴られたことがある方もいらっしゃると思いますが、正直「自分のあたまで考えるってなんなのさ!」って僕は生意気にも思ったりもします。
ただ、そんな誰もが当たり前に求められ、日々行っている「考える」ことの土台となるのが哲学なのではないかと思っています。
今日はそんな暮らしの中で哲学することの最適な入門書として、
暮らしを哲学する(氏家法雄 著)をご紹介します。
本当に「毎日は同じことを繰り返している」のか。
いきなりではありますが、核心に迫る問いを考えてみたいと思います。
多くの人は毎朝決まった時間に起きて、決まった経路で会社に行き、同じような仕事をして、同じような時間の使い方をして1日を終える。
そんな感じの生活ではないでしょうか。
ただ、マクロで見れば同じことの繰り返しですが、ミクロな視点で見れば日の出日の入りの時間は刻一刻と変化し、出会う人や起こる出来事も確実に違いますよね。
なんだ、要は気の持ち様じゃねえか。
ここまで読んで損した!時間返せ!
退屈な日々に対して切実に悩んだ末に、この記事にたどり着いてくれた人からの猛烈な野次が今にも聞こえてきそうです。
ただ、こんなときこそ、
一度立ち止まって、日常の”あたりまえ”を問い直してみてください。
例えば世界地図を見てみると、10年前とは大きくかたちを変えた国もたくさん見当たりますよね。
もっと生活に身近な例でいうと、この記事を見ているケータイの形態もここ10年でがらっと変わりました。
私たちの生活は本当に変わっていないのか。
そう問えば、答えは須くYESとなるのではないでしょうか。
そうなると刻一刻と世界は変わっている中、「毎日が変わらない」なんて錯覚を起こしてしまうのは何が原因なのでしょうか。
本書では変化していることを承知しつつも、変化していることを確認しないことを理由に「毎日同じことを繰り返しているなあ」と慰めているのが実際と表現しています。
もう少し噛み砕くと、毎日が変わっていることを機会を自分自身で奪っているということです。世界地図も改めて見なければ、世界のかたちはあなたの中では永遠に変わらないですよね。
要は生活の中で変化するものを「確認」する手続きが、毎日が変わらないという固定観念を打ち砕き、日常を豊かにしてくれるのです。
本書では日記をつけることで、毎日思考が変化する自分に気づくことを勧めていますが、個人的には部屋に植物を置くことなんかも、季節の移ろいを日々感じることができるのでおすすめです。
ここまで書いても結論はほんの些細なことですので、画期的なメソッドを期待されている方はガッカリするかもしれませんが、このちょっとした思い込みを解きほぐすことが、哲学の本質であり、気持ちよさなのではないかなと思います。
今回ご紹介したことは、ほんのさわりでしかありません。
本書では「ボールペン、日の出、猫、洗濯」といった日常の中の具体的で、それでいてほんの些細な切り口から思考を巡らし、日常を立ち止まって考えるきっかけを与えてくれます。