パンケーキに食べられた
シャインマスカットのパンケーキを食べた。この時期限定の、特別な、パンケーキである。
そびえ立つ生クリーム。人生で一度はお目にかかりたかったこの光景。念願が叶い、嬉しかった。
いざ実食。慣れないフォークとナイフを使い、何とか食べ進めていく。
まず、シャインマスカットが美味しい。皮ごと食べられて、種のない果物は、最も良いに決まっている。そして、噂に聞いていたよりかは、口当たりの軽い生クリームに胸を撫でおろす。
しかし、半分ほど胃に運んだあたりで異変に気がつく。
あれ?私の醸し出すこの雰囲気と、リズムに乗れなくなったフォークとナイフ。有吉ゼミの大食いでよく見るあれじゃないか?
ゲストチャレンジャー達の顔つきがみるみるうちに変化して行き、今回負けられない理由を語り出す流れ。子供がこの番組の大ファンだから、自分が出演するドラマ(映画)を見てほしいから、所属するグループを背負って来ているから、などなど。
まあ、そういうことを語った人ほど、OAでは10秒後ぐらいにギブアップするのは最早お決まりであり。それまで奮闘する様子を見届けた視聴者達は、もう十二分に満足しているわけで。
後は曽根さんが、ただ1人だけ笑顔のまま、パクパクと気持ちよく完食してくれる姿だけを見せてくれたら。それで良いのだ。それが、良いのだ。
しかし私は有吉ゼミに出演しているわけでは勿論ありませんので、時間はかかりながらも、平らげました。
結果として、私はパンケーキを食べていたのではない。
パンケーキに食べられていた、と言った方が腑に落ちる。パンケーキに食べていただいた、でも構わない。
もっと突き詰めれば、後半はもうパンケーキを食べている感覚はなく。自分を小麦粉と生クリームに溶かしていく作業を淡々とこなしていた。
このような経験も、人生にはきっと、必要だったと思いたい。
なぜなら、このパンケーキは税込で2,980円する(私としては)高級品であったからだ。
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