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第105回 マンション防災を考えよう

管理組合の備蓄

皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという集合住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。

前回まで宅内の対策、個人宅(各戸)での備蓄について考えてきました。今回は管理組合での備蓄についてです。数回前に管理組合と個人宅での備蓄の違い、考え方について考えた際に大きくは書きましたので、一部重複しますが、それ以外もありますのでまとめていきます。

あらためて整理して理解しておきたいのは、管理組合ではみんなで使う高価なもの、個人宅では生活必需品、食品などの消費・消耗品をそろえるという前提です。

それでは管理組合での備蓄品として何があるでしょうか。
まずは電源です。夜間の照明やスマホ充電その他の電気を使うことは多々ありますので、発電機、各種電池を用意しましょう。前にも書きましたが、以前は発電機の燃料となるガソリンは備蓄保管に厳しい基準があり、一般では難しいのでカセットガスボンベを利用するものが主流でした。ところがカセットガスボンベでは発電効率が悪く、ボンベ1本での発電機の稼働時間が短いという課題がありました。そこに近年、備蓄用のガソリンが発売されましたので、ガソリン用の発電機は備蓄資機材としても可能になりましたので用意したいところです。

それ以外に、集会室、災害対策本部での使用を想定した用品が必要です。夜間用の照明や、ヘルメット、連絡用のトランシーバー、ホワイトボード、壁に貼りつくホワイトシート、事務用品、集会室滞在用の毛布、エアベッド(直接床に触れないためのシートなど)などいろいろあります。
また、けが人などの搬送用に階段搬送器具、担架、管内の保安用のトラロープ、パイロン、物資運搬用のリヤカーなど訓練時に考えてみてください。
季節によって、マンション所在地にもよりますが、暖房器具、冷房器具なども必需品として考えておきたいものです。(特に暖房器具は電気、灯油など燃料も考慮が必要です。)

さらに、基本的には個人宅で備蓄するものですが、最低限の水、食料などの備蓄もあって困るものではありません。特に水はペットボトルでの備蓄以外に、管内にプールや観賞用の池がある場合や近隣に川があるなどの場合は浄水器の用意もあっていいと思います。いろいろは種類が発売されていますがまだまだ浄水器は高価なものが多く、個人での購入は難しいものがあります。
ちなみに浄水器はそのフィルターカプセルの扱いや使用手順が複雑なものも多く、できるだけシンプルで浄水量が多いものを選ぶようにしましょう。非常時にマニュアルを見ながら操作するので、いざという時に使えないなんてことにならないようにしたいですね。

防災訓練時に炊き出しの訓練をしているところもよく見かけます。この炊き出しも注意が必要です。集団生活=炊き出しと考えることは悪いことではありません。但し、訓練を見ていると炊き出しは各戸の「奥様方の役目」的な担当分けをしているように思いますが、毎日3食の炊き出しを続けることの負担は大変なものになりますし、女性だけが担う仕事ではありません。例えばエレベータが停止して上層階へ戻れなくなってしまった居住者のために、最低限の炊き出し、食事を提供するなどは良いことだと思いますし、その余裕があるのでしたらやっていいと想います。その際には男性・女性に関係なく、すべての居住者の共助として考えていただきたいと思います。

このほか、前にも書きましたが水害対策の土嚢、止水板などもマンションの状況に応じて購入しましょう。ブルーシートも戸建ての雨漏りの応急処置に使えるものですから、マンションでも用意しておくと止水にも物資保管に敷くシートにも、いろいろ便利に使えます。

管理組合での備蓄は、マンションの組織や居住者構成、立地など、マンションの環境を勘案して防災組織でいろいろなシーンを想像力を発揮して考え、必要なものを書き出し、予算の調整をしながら揃えていくことがよろしいかと思います。
是非検討をしてください。

今日はここまでです。
次回からは、マンションの「災害時の情報」についてまとめを含め考えます。災害時、マンション居住者はさまざまな情報の問題があります。ここに気づいていない管理組合が多数ありますので、ぜひ考えるきっかけにしていただければと思います。よろしくお願いいたします。

マンション防災研究所 所長
防災士 福祉住環境コーディネーター
城戸 学

マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングなどのご依頼をお待ちしております。よろしくお願い申し上げます。

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