木田悠介

問い 理想 a beautiful star

木田悠介

問い 理想 a beautiful star

最近の記事

個性=(不)自由論【感想篇】

水野しずさんの『正直個性論』を読みました。 人間すぎてよかった。こんなに心が温かくなったのは久しぶりのことで、自分以外にも人間ってちゃんと存在しているんだと思えた。文章も超好きだった。そうとしか生きられないことをネガティブじゃなく受け入れている感じのやさしさ、独断の上で踊り狂うことの迫力によって説得力が発生してしまっている感じのパワー、乾いた笑いを誘われてしまう奇妙にしっくりくる比喩。こんなにまともな人間がまともなまま楽しそうに生きられていることに希望と勇気をもらえた気がし

    • 丸山圭三郎著『言葉とは何か』

      普段何気なく使っている言葉、考えてみればこれほど不思議なものもありません。言葉とは何なのでしょうか。コミュニケーションのための道具?それとも人間の社会を構成する文化そのもの?いったい誰が何のために作ったのか、どのようにして今の形になったのか、考え始めると、宇宙の謎にも似た恐怖と好奇心をかきたてられます。 言葉だけでできた嘘の他人の物語に心躍らせ、そこに「本当の自分」を見ることがある。一方で、同じ言葉をあつかい同じ現実を共有しているはずなのにどうしてもわかり合えなくて、ときに

      • 『葬送のフリーレン』と人生のくだらない生存戦略

        すべての意味が自分に帰属する世界で 僕たちの社会は今、「目的」を喪失している。倒すべき巨悪もいなければ崇高な正義も存在しない。倫理もなければモラルもない、共通前提というものが完全に消失してしまった。だからどうすれば幸せになれるのか分からず、努力の仕方も分からない。普通という指針がなくなり、誰もが道に迷っている。 全ての行為の動機が個人に帰属してしまう世界。誰かのために、とか社会のために、とかいうことが許されず、全ては自分のためである世界。選択のひとつひとつが自己責任自

        • 村上龍は逃げてない

            村上龍の「若者論」を読んでるとなんとなく嬉しくなる。これは本人があるエッセイの中でも言及していたことだけど、若い編集者に23歳なんてもう若くないんだと言うと、叱ってもらって嬉しいみたいな表情をして、それを見ると気が滅入るらしい(村上龍は23歳のときに「限りなく透明に近いブルー」を書いている)。 村上龍には申し訳ないけど、その編集者の気持ちはよく分かるような気がする。どれだけ若者に興味がなくて期待もしてなくて、それが惰性によるような実感のこもらないちょっとした挑発であって