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自省録

30代はじめごろまでは
私の興味はより外側の世界へと向かっていた。
海外協力隊など国際協力や交流に憧れ、
特にヨーロッパなど異文化への憧れが強かった。

大学は国文学専攻で
大学生活の友人関係の基盤となったサークル活動でさえ
「史跡研究会」という名前の
かなり純日本的な会に所属していたのにである。

それが最も行きたかったケニアのサファリを見たあたりから
もっともっと外へという思いはうすれていたように思う。

とって代わるかのように沸き上がってきたのは
日本の歴史や文化に対する興味だった。

その直接のきっかけになったのは
「乃可勢」という笛に出会ったことだ。

それは信長・秀吉・家康と天下取りのバトンのように渡った
一節切(ひとよぎり)という種類の縦笛で、
黒漆に織田木瓜紋の蒔絵が施されている美しい笛だった。

所蔵するお寺で
ご住職に茶をいただきながら
どきどきしながら笛にまつわる歴史と
最後の持ち主だった家康の6男、松平忠輝のお話を聞いたのだ。

私は日本の歴史を何も知らない・・
心の中でつぶやいた。


さかのぼれば高校時代の社会科の授業で
世界史の方が断然面白かったせいもあるが

そもそも794 平安遷都、1192 鎌倉幕府・・と
暗記日本史しか知識がなくて、

おまけに授業で習った歴史の近現代史はいつも時間切れで
速攻で駆け抜けて行き、
正直私自身を揺さぶるものが何もなかった。


笛を見せていただいたとき不思議なことに、
ご住職に

「あなたはお茶をするでしょう?」


と言われ、所蔵するお釜や掛け軸なども見せてくださったのだ。


もちろんその当時、
お茶の経験もなければ興味もなかった。

「お茶って何?」


得意のわたしのなぜなにが始まった。

その後京都に暮らして「茶」に親しめるようになるとは
この当時夢にも思っていなかった。







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