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あそびをせんとやうまれけん

倉山ねたちらし鳴く鹿の にけん秋をる人ぞなき  紀貫之
                           (古今和歌集)

平安時代、宇多上皇が朱雀院で開いた女郎花合わせで
おみなえしの五文字を句の頭において詠んだものだ。

折句といえば
伊勢物語に登場するかきつばたの歌をすぐに連想する。

つつなれにしましあれば はるばるきつるしぞを思ふ 在原業平


なんて面白い遊び心だろうか。

宇多天皇は日本三代実録や類聚国史の編纂を行っているし
寛平御時后宮歌合などの歌合せを開いて、
多くの歌人を生み出すきっかけをつくるなど
国風文化高揚に寄与した日本文化史の中でも重要人物だろう。

こうした遊びはのちの連歌や俳諧につながっていくし
歌舞伎や浄瑠璃、落語などの言い回しの妙さえ思わせるから不思議だ。

言葉のみならず茶文化のなかにもある見立や
和歌を折り込んだ美しい工芸作品など
感覚的な美を競い、追い求める日本文化の豊かさは
こうした遊び心の中にあるのではないだろうか。

最初貴族など上流階級の特別なものだった文化が
江戸時代には庶民の間でも花開いていく。


あそびやせんとやうまれけん


令和の混沌の時代の中で
日々そんな思いを強くするのである。








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