農血改革2030
【 農血改革2030 】
読者の皆様、超こんにちは。
新豆が美しい!中川吉右衛門です。
先日、ひいじいちゃんの実家に行ってきた。
昔は格式ある家だったので、屋敷は立派で大きい。
しかし、今はもう、誰も住んでいない。
それでも行く理由は、僕がこの屋敷の蔵を借りていて、そこに、大型の農業機械を置いているからだ。
2年前までは、ここの女主人であるおばあちゃんが一人で住んでおり、ここに行くたびにお茶飲みの相手をし、あれこれと話をしたものだった。
が、今は老人介護施設に入っており、今、この大きな屋敷は、誰も住んでいない。
諸行無常・盛者必衰か・・と、独り言ちるのは、ここにくる合言葉のようなものになった。
いざ、機械を運び、中に入れようとすると、何と、入り口の高さが足りない。
これでは、機械の頭がぶつかって中に入らない。
さてどうするか?
と思っていた時、ふと、もう一つの蔵があることを思い出した。
そこの入り口の寸法を測ると、ちょうど何も細工せずに入る寸法だ。しめた!と思った。
なので、今年の冬はこの蔵に機械を入れさせてもらえないかな?と考え、シャッターを開けてみる。
と、そこは、もう何年も人の手が入っていないであろう、完全なる物置。
機械を入れるには、この中のモノを片付けたり整理したりしなければならない状態だった。
こりゃ参ったな。と、一通り見回してみると・・・
奥の方にたくさんの襖が立てかけてある。
そしてその隣には、古民家ならではの引き戸が。
僕はそれに一気に興味が惹きつけられた。
おお!?!?これは!?もしかして!?!?
というのも、僕は古民家萬五郎のオーナーで、今、絶賛そこを改修している最中なのだ。
そこで、ここ数週間、萬五郎のサイズに合う襖をめちゃくちゃ探していたのだ。
中古の襖はあるにはあるが、古民家に合うサイズの襖というのはなかなかない。
幅は三尺一寸。高さは五尺九寸。
高さは何とかなるにせよ、幅は何ともならない。
が、みると、古民家のサイズのようだったので、僕はすぐにスケールを取り出して、測ってみる。
何と、ほぼ同じサイズだった。
まさに探していたものがそこにあった喜びと、このまま、あと何年先かわからないが、確実に廃棄の運命をたどる襖に導かれたような心持ちになり、僕がこの襖にまた命を吹き込み、愛し続けていこうと決めた。
とにかく、埃まみれの物置の中からそれらを引っ張りだし、埃を払い、綺麗にしてあげる。
さ、お前たちもこれから萬五郎で、また素敵な襖として生きていけるぞ。
と、僕は心躍った。襖と引き戸も止めていた呼吸を始めたように感じた。
しかし、結果から言うと、この襖も引き戸も、萬五郎へ来ることはなくなってしまった。
この屋敷に住んでいたおばあちゃんの娘さんに聞いてみたところ、
「自分も誰のものか分からない。確か、いろんな親戚から”置かせてくれ”と言われて置いてあるものだから何も分からない。責任が取れない。だから、持って行かれると困る」
と言う。
僕は、出たこれ!と思った。
そして強烈に臭う「田舎の人間特有の所有根性」と言えばいいのか。
それが腐敗臭のように僕の鼻を突き、脳みそへ流れ込んできた。
こう言うことを言い始めると、もう話にならない。
いくら、”いつかゴミにするんですよね?”と言っても、そう言う話は全く受け入れない。
なので僕は、そのままそれを聞き入れた。
猛烈に腹が立った。
僕はこの臭いが大嫌いなのだ。だから田舎が大っっっっっ嫌いだったのだ。
特に田舎に住む現代風価値観の中にいるくせに、所有に関してだけは、なぜか腐ったような根性を見せるのが、猛烈に大嫌いだ。
こんなことを言い続け、こんなことをやり続け、一体何になるのか?
何の責任も追わないところから正論を振りかざし、お前は一体何がしたいんだ?
この立派な屋敷を継承することもせず、今では空き家にして、現代教育の賜物の自由を中途半端に享受して、母も実家もこの蔵の中にもほとんど関与せず、何が責任だ!?!?
どう考えたって、この襖も引き戸も、新しい使命を受けて、命を吹き込まれた方が、幸せに決まってるだろ!?
そう思わないかぃ?
********
これは何も、この襖の話だけじゃないんです。
農家が増えないと、百姓は口々に嘆いているにも関わらず、いざ、新しい人間が農家をやるとなると、たちまち土地のことを云々カンヌン抜かしやがる。
僕も沖縄では散々っぱら言われた。
「よそ者に貸す土地はない」と。
ここまではっきり言うなら気持ちもいいが、あーでもないこーでもないとのらりくらりと言い訳をする。
つまり全部断り文句だった。
土地は本当にいくらでも空いていた。
それは日本全国どこでも同じだ。
当たり前だろ?百姓がこの日本からガンガン減ってんだから。
やる人間がいなくなってるんだから。
それでもなぜか、百姓は土地も家も、貸したりしたくないわけだ。
自分がもう百姓をしてなくても。できなくなっていても。
決まり文句はこれだ。
「ご先祖様が守り抜いてきた土地だから」
と。
だからなんやねん!!!!!クソッタレ!!
その土地が、お前の代で守れなくなってるんだろうが!!!!
その屋敷が、お前の代で守れなくなってるんだろうがよ!!!
だったら簡単な話。やる気のある人間に貸せ!そんなもん。
それが、ご先祖様の土地を守ることになるんじゃないのか!?!?
僕は、農家が増えないと言う原因は、単にやる側の意識とか、やる気とかの問題だけではなく、農家にも大きな原因があると確信している。
気持ちはわかる。
自分の土地を他の人にいじられたくないと言う気持ちは大いにわかる。
そんなもん俺が、誰よりもわかるわ!十四代中川吉右衛門だから。
でも、もうやってないんでしょ?
やれないんでしょ?
だったら、やる気ある人間に貸したらいいですよ。
土地の賃借料は各自治体で決まっている金額があるし、何ら問題ないですよね。
どこの馬の骨ともわからん者かもしれません。
そいつが、途中で諦めて、土地ほっぽり出してどっか行くかもしれない。
だから何なんですか。
それでもいいじゃないですか?
何もしないより、遥かに可能性は広がるでしょ。
農家を選択肢に入れない若者の理由を、僕がこれまで経験してきたことや、様々な情報から考察すると、
・初期投資がでかい
・収入・休みが不安定
・農地がない
・見た目よくない
なんです。
農地がないと言うのは、先入観もありますが、確実に存在するのは、空いてるのに貸してくれないだったり、貸し渋るだったり、変な条件つけてくるだったりするんです。
それは、全部貸す側、つまり農家の考えの話で、それでせっかくやる気になっている人間のやる気をどんどん奪っていくことになる。
本来なら、日本の農業者が増える方が日本のためであり、それに少しでも力になれるなら、それこそまさに、日本の百姓魂を見せて、大いなる心と豊かさを持つ百姓の度量で、ドーーーーンと貸してやればいい。
みみっちいこと言わずに。
結局考えていることなんて、自分と自分の家のことぐらいで、あとは腐ったプライドとエゴと無責任だけを守りたいのか!?。
これをつまらない百姓根性っていうんです。
そんなもん、後生大事に守ったところで何になる?
死んだら、土地まであの世に持っていくかぃ?
金も、蔵も、屋敷も持っていくのかぃ?
そんな馬鹿な!
死んだら、灰になるだけでしょ。
でもね。
死んでも残るもんってのがあるんですよ。
それは魂です。
それは夢です。
それは志です。
それは死んでも亡くならないんです。
それは生きていた時、あなたが”どんな生き方をしてきたのか?”
”だけ”なんですよ。
そうやってスカッと生きるのが、本来の百姓です。
スカッと生きませんかね。スカッと!!!
未来ある、やる気ある人間に、血縁も何も関係なく、どんどん継承させてやればいいんです。
土地だってなんだって。
それがどれほど価値のあることか。
それを、今の百姓自身が本気で理解しなければならないトキがきてると、僕は思っている。
百姓も大きく変わらなければならないのです。
僕はこれを「農血改革」と呼ぼう。
Ciao!
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