物は買われて初めて価値になる
実家の近所に、壺を売っている人がいる。
父が挨拶がてら壺の売れ行きを聞くと、「新しく買っていかれますか?」と勧められた。
以前、購入したことがあるらしい。
自分が買うよりも、良さがわかる人の手元にあったほうがいいと言う父。
「いやいや、物っていうのは、買ってもらって初めて価値になるんですよ」とその人は言った。
買われるまでは、「何の価値もないただ壺」なのだそう。なるほどなぁ。
物を売るのは、価値があると信じて疑わないからこそだと私たちは考えがちだけど、実は違うのかもしれない。
案外、たくさんあるから売ってみるか、くらいの感覚なのかも。
壺がたくさん並んでいるのは、ただ作るのが楽しくって、形にするのに夢中になっているから。
手を動かしていると、今回はこの形だったから、次はここを変えてみたいな、と新しい発想も次々と出てくるだろう。
だけど、買い手がどういう風に使うかまでは想像していなくて、そこは価値を見出せた人にお任せなのだ。
買ってもらって、使ってもらって、初めて物に目的が生まれる。
それは壺だけでなく、どんなものでもそうだろう。
多くの人が使っているスマートフォンだって、店頭に置かれているだけでは、何の価値もないただの電子部品の集合体。だけど、誰かに使われることで初めて、連絡ツールだったり動画撮影の機器だったり「何か」になって、価値が生まれ始める。
壺を買うって、何だかとても怪しげな響きだけど、買った人にしか価値を見出せないものだと思えば、価値がわからない周りの人がとかく言うことはないのかもしれないなぁ、とも思った。
物の価値は、使う人によってマイナスにもプラスにもなるって面白いよね。
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