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思い立ったが吉日♪
イタリアに住み始めて数年が経った 2006年頃のこと。ミラノで働き始めた当初、私はミラノ郊外のパヴィアという町に住んでいた。通勤はバス、電車、地下鉄を乗り継ぐ毎日。帰り道も同じルートをたどり、パヴィア駅に着く頃にはバスがなく、徒歩で帰宅するのが日課だった。帰宅する頃には毎日ヘトヘトだったけれど、パヴィアでの生活自体はとても気に入っていた。
1年以上住み続けるうちに友人や知人が増え、休日にメインストリートを歩けば知った顔に必ずと言っていいほど出会うようになった。外国人として一人暮らしをしていた私を気にかけ、地元の人々はあちこちへ連れ出してくれたり、食事に招待してくれたり・・・と、それなりに楽しく暮らしていたのだ。
ところが!である。
ある日、仕事の休憩時間に同僚のバルバラが「スーパーに買い出しに行く」と言うので付き合うことに。久しぶりに大型スーパーに足を踏み入れると、その規模に圧倒された。パヴィアでは近所の小さな食料品店や八百屋さんで済ませていた私は、ミラノの巨大スーパーの果てしなく続く棚に、軽いカルチャーショックを受けた。
野菜、果物、肉、チーズ、パスタ、オリーブオイル、冷凍食品・・・どの棚も溢れるような品揃え。そして 5列目の棚にたどり着いた時、そこには端から端までぎっしり並ぶワイン、ワイン、ワイン・・・♪
何ここ、パラダイス?
「これは何か 1 本買わなきゃ!」と意気込んで選び始めたものの、値段以外どこをどう見て選べばいいのかさっぱり分からない。仕方なく、ジャケ買い――いや、ラベル買いすることにした。
それでも心にはモヤモヤが残った。
「目の前にこんなに選択肢があるのに、ただ適当に選ぶだけなんて、なんてつまらないことなんだろう!」
この思いが頭から離れず、その日は午後の仕事中も、帰り道もずっとモヤモヤしっぱなし。
家に着くなり、私はすぐにパソコンを立ち上げて検索をスタート!(※iPhone誕生前)
「ワインの選び方をちょっとでも分かるようになりたいな〜」
「なんか気軽に学べるコースとかないかな〜」
そんな気持ちで調べていたら、目に飛び込んできたのが「ソムリエコース」の存在だった。
その瞬間、居ても立っても居られなくなり、翌日にはミラノのソムリエ協会の事務所を訪問。
そこからの行動は本当に早かった。
夜間コースに申し込み、ミラノ市内の部屋を探し、最短で引っ越し完了。その間、約1か月。1回目の授業には引っ越しが間に合わず、ミラノのホテルに泊まることになったけれど、自分でも驚くほどのスピード感だった。
いざコースが始まると、そこからが本当に大変!
仕事を終えるやいなやダッシュでホテルの会場に滑り込み、仲間と共に授業を受ける日々。当然、すべてイタリア語。軽い気持ちで飛び込んでみたら、周りの本気度が想像以上で、呆然としてしまった。
そして何より、講義を聴いてから試飲という流れ・・・。
仕事帰りの強烈に飲みたい気分をぐっとこらえ、頑張って先生の説明に意識を集中させてはいたものの、今となってみれば、ソムリエコースという空間に、ただただ存在していただけだったのかも。
そんな私のワイン知識はいまだに伸びしろしかない!
何はともあれ、思い立ったが吉日♪