川端龍子と戦争
龍子記念館に行ってきた。
何年か前に、山種美術館で龍子の絵を2つ見た。
1つは日本家屋の軒から月を見上げる、面白い画角で描かれた美しい絵。
そして、もう一つは、身をくねった鯉の背びれ近くに黄金の曲線を引き、まるで生きているように描いた美しい絵。
いずれも、強烈な印象を残していて、それ以来龍子は好きである。
そして今日、初めて龍子記念館に行って、大きな絵をいくつも味わったわけだけど。。。強烈だった。
感性を揺さぶり起こすような、煽るような説得力。
臥龍も、悲しみを称えていて凄かったが、何より心奪われたのは、水雷神という名前の絵だ。
これは、特攻(人間魚雷)に対する怒り、悲しみ、誇り、そして世相柄、
美術が無力なのではないかと思い悩み憤怒する気持ちなど、身悶えるような、複雑で激しい感情が詰まった絵だと思う。
何度も何度も絵の前に行って、見入ってしまった。
鬼気迫る。
第二次世界大戦という未曾有の惨事の中に生き、芸術家はその影響から逃れることは出来ないのだな、と思う。
戦争が終わり、龍子は臥龍を描く。
弱りきって身を臥せた龍である。
そこには、戦争で疲れ切った日本の姿、しかし滅んではいない、龍という強い生き物に擬えられた日本の姿が描かれている。
気だるげで澄み切った優しい龍の瞳が印象的だ。
その後、龍子の画風は鬼気迫る感触からは離れていき、おおらかに、大衆に向けて、大画面の迫力ある絵を描き続ける。
やっぱりすごい画家だなぁ。
改めて、さらに好きになった。