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#1生徒から初めて借りた小説 |読書ノート

過去の読書ノート書き起こし第一弾。最初は自分にとって思い出深い生徒との交流の記憶から選択しました。

(この読書ノートマガジンについての説明は、以下の記事からどうぞ!)

湯本香樹実『夏の庭ーThe Friends』(新潮文庫,1994)

町外れに一人で暮らす老人と小学生の僕ら3人の物語。僕らは「人が死ぬ瞬間」を観察するために、老人を監視し始める。

やがて3人と老人との間には友情が芽生えて、そして…。

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これは、人が人を生かす日々をキラキラと描いた作品だ。

孤独は、人が生きている喜びを奪う。忘れさせてしまう。その逆もしかりだということだ。目に見えない、友愛や関係性や当たり前ではない日常を感じさせてくれるのは、それが「失われた時」、だ。

実に逆説的で残酷。

「死んでもいい、と思えるほどの何かを、いつかぼくはできるのだろうか。たとえやり遂げることはできなくても、そんな何かを見つけたいとぼくは思った。そうでなくちゃ、なんのために生きてるんだ」

なんて良い言葉だろうと思う。
生きている意味を問い続ける。そのうちに私たちは力尽きてしまうんだ。
でも、だからこそ尊いのだ。その思い出の中に、永遠の命が宿るのだと思う。

この本は、今は卒業した生徒が中学生だった時に貸してくれた。

担任でもないただの授業担当だった私に、本が好きという話をしただけだった私に、「これ面白いですよ!!」って貸してくれた。

これを読んで、好きだという感性はすごいと思う。素敵だと思う。

大事にしてほしい。これからも忘れないでほしい。

彼女は今どんな生き方をしているんだろう。

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