Twitterのリブランディングはリブランディングではない
昨日から急展開を見せた、Twitterのリブランディング。ご存知の方も多いと思いますが、Twitterという名称は「X」になり、あの青い鳥のロゴもどこかへ飛んでいきました(個人的には大好きなマークだったのに残念)。この件について色々と聞かれることも多いので、考えていることを整理してみました。結論としては、Twitterのリブランディングはリブランディングではないということです。
リブランディングはとにかく丁寧にやる(本来は)
ブランドを新しくするリブランディングは、通常のブランディングと比べてより丁寧に、より慎重に行う必要があります。特に知られたブランドを変更する時は、予想以上に社内・消費者からの反発があります。なぜ変更する必要があるのか、そもそも変更する価値はどこまであるのか究極的に検討する必要があり、結果として変更することになった場合は、社会とのコミュニケーションを綿密に組み立て、説明をこれでもかというほど丁寧に行う必要があります。コミュニケーションを丁寧に行わなかったために失敗した事例は、GAPのロゴ変更やニューコークの事例など、枚挙にいとまがありません。
しかし、今回のTwitter / Xへのリブランディングはあまりに拙速であり、ロゴもUnicode「U+1d54f」である件や、噂によると今回のTwitterのリブランディングは社内のメンバーはおろか、肝になるであろうデザイナーにも詳しく伝えられていないと聞きます。一介のブランディング専門家として、今回の件はあまりに稚拙としか言いようがありません。ずっと昔、イーロン・マスクがPayPal創業期から考えていることを、ババっと勢いよく、まずは名前とロゴを変えただけのことのように感じます。
Twitterの文化には興味ないのでは
イーロン・マスクは、コミュニケーションだけではなく決済も含めたスーパーアプリが欲しいという考察はご存じの方も多いと思います。結構すぐ、技術的には実現するでしょう。だからこそ色々と段階をすっ飛ばして、全く新しいツールとして生まれ変わらせようとしているのかもしれません。その割にUIはそのままですが、UIまで一気に変えてしまったら今以上に一気にユーザーが離れてしまうので、UIはあまり変えないのかもしれません。いずれにせよ(彼自身ヘビーユーザーなのですが)、Twitterの文化そのものには全く興味がないのではないかと思います。なので、ここまで急な変更に対しても何の抵抗もない。Twitterが好きで入社した社員の人は会社からすぐに出ていくでしょう。
何を考えているのかわからない。今回はその一言に尽きる気がします。ネット社会、特にアフターコロナでは、企業は社会と丁寧にコミュニケーションをすることが定石になっています。今回、そのような方策を取らず、おそらく反発されるのがわかっているので一気にやったのだと思いますが、社会にここまで影響力がある会社のしたこととは思えない。
やっぱりSNSに頼りきらない情報発信をするべき
イーロン・マスクの買収以降、なかなか運営がうまい具合にできていない、グダグダ感がありますが、リブランディングについても同様に感じます。私はSNSのコンサルティングは行っていませんが、ブランディングをする上でTwitterや各種SNSに依存してしまうのは良くないという意見を申し上げてきました。確かにSNSはビジネスをする上で必要不可欠ですが、ヒトモノカネに余裕があれば、自社でもブログやメディアを準備するべきと思います。それとSNSを組み合わせるとかなり心強い。自分達でコントロールしきれないプラットフォームに依存してしまうのは、やはりリスクなのだなと改めて感じます。
しかし、おそらくブランド価値は結構下がってしまったので、スーパーアプリ化には技術的には簡単でも普及は結構険しい道だと思うんですが…。何となく途中で諦める予感がします。
ちなみに、Twitterのロゴや青い鳥はまだデータのダウンロードが可能です(2023年7月25日18時現在)。ブランドのガイドラインもPDFで見れますので、ご興味ある方はぜひどうぞ。
英語はこちら。
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