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子どもの〝苦手〟を克服させるより、好きなことを見つけましょう

川遊び

▲写真:2019年けやの森学園 夏の一人立ちキャンプの川遊び

子どもの一部分だけにこだわりすぎないで


お母さん方や保育に従事する先生方からよく質問を受けることがあります。

「子どもたちへの言葉かけはどのようにすればいいでしょう?」
「教材は何を用意すればいいでしょうか?」
「教室に何を置けばいいでしょうか?」

よい言葉かけ、よい教材、よい教室環境・・・

子どもの教育には、確かにとても大切な要素ですが、それ以上に大切なことは、ひとりひとりの子どもの全体をみて、ひとりひとりのことを考え、ひとりひとりの良さ(価値)を大切にすることです。

言葉かけ・教材・環境は、全体の一部分でしかありません。その一部分にこだわりすぎてしまうと、教育の軸がずれてしまうことがあります。
子どもはひとりひとり違います。その子に適した言葉かけや教材、環境があるはずです。

「この子の良さはどこにあるのだろう」といった広い目で大人は子どもに接することです。

教育法は異なるけれど、根っ子は同じです

『子どもたちの100の言葉』という著書があります。これはイタリアのレッジョ・エミリア教育法の創設者の一人であるローリス・マラグッツイの言葉がつづられた著書で、イタリア教育史研究者の故・田辺敬子先生が訳されたものです。

でも100はある。
子どもには100通りある。子どもには100の言葉 100の手 100の考え 
100の考え方 遊び方や話し方
100いつでも100の 聞き方 驚き方、愛し方 歌ったり、理解するのに 100の喜び
発見するのに 100の世界 発明するのに 100の世界 夢見るのに 100の世界がある。
子どもには 100の言葉がある(それからもっともっともっと)
けれど九十九は奪われる。
学校や文化が 頭と体をバラバラにする。
そして子どもにいう 手を使わずに考えなさい 頭を使わずにやりなさい
話さずに聞きなさい ふざけずに理解しなさい
愛したり驚いたりは 復活祭とクリスマスだけ。
そして子どもにいう 目の前にある世界を発見しなさい
そして100のうち 九十九を奪ってしまう。
そして子どもにいう 遊びと仕事 現実と空想 科学と想像 空と大地 道理と夢は
一緒にはならないものだと。
つまり 100なんかないという。 子どもはいう でも、100はある。

                      ローリス・マラグッツィ(田辺敬子訳)
『子どもたちの100の言葉: イタリア/レッジョ・エミリア市の幼児教育実践記録』より抜粋
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レッジョ・エミリア教育法の目指しているところは、私どもが研究している「フレネ教育法」の多様性や個性を尊重しながら、主体性を育む教育と同じです。

レッジョ・エミリアの教育法は、フレネ教育学から派生したものといわれ、田辺先生は、けやの森自然塾の活動にも深い関心をもたれ、実際に活動にも度々参加されていました。

「フレネ教育」や「レッジョ・エミリア教育」などはいわゆる「オルタナティブ教育」と総称されていますが、このオルタナティブ教育といわれるものの中には、ほかにも、モンテッソーリ教育、シュタイナー教育、サドベリー教育、イエナプラン教育などがあります。

2_研修

▲フレネ学校の子どもたちと

どれも新しい教育法といわれていますが、どの教育法も大まかに言えば同様の哲理によって運用されています。根っ子の部分も目指す部分も同じなのです。

かつて日本の教育も、目指すところは「フレネ教育」と同じであったはずなのですが、経済優先のため次第に効率的に学ばせるようになっていった結果、偏差値教育にシフトしていった経緯があるように思います。

その結果、根っ子の部分は同じなのですが、軸がずれてしまったために、さまざまな教育の問題が起こっているのではないかと感じます。

不安定な世の中だから原点を大切に

これからの日本の教育は、原点に立ち返る時期にきていると思います。一人一人の良いところを見つける作業に立ち返ってみるといいでしょう。

これから小学校で、英語やプログラミングが入ってくるようになり、4,5年後には、大学入試の共通テストに「情報」が新たに加わえることも検討されていることから、ますます不安になっているお母さんも多いようです。

子どもの目先の将来を心配するより、その子どもの人生全体を見るようにしましょう

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※写真はイメージ

例えば、計算が苦手だったとしても、それは、その子の全体の中のほんの一部分のことにすぎません。人生全体をみることができるようになると、苦手なことを見つけてそれを克服させる環境を整えるよりも、子どもが得意なことや好きなことを見つけてそれを応援するような環境を整えることのほうが大事だと思えるはずです。

得意なことができると気持ちもおおらかになり、不得意だったことも前向きに取り組んでみようと余裕がでてきます。

歌が好きな子どもの場合、例えば、音楽をいつでも聴ける環境にしてみたり、コンサートに連れて行って生の音楽を一緒に鑑賞するなども、その子にとっては、好きなことから世界を広げ、学びを深めていくことにつながるでしょう。

そして何より、大人が共感すること、子どもの興味に深い関心をもつことが大切になってきます。

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人間は、好きなことを見つけるまでには、回り道をすることもありますが、好きなことを見つけると主体性をもって突き進み、自己肯定感を持てる子に育つはずです。

自己肯定感を持っている子は、どんな世の中になっても、間違った方向に進むことはないでしょう。

今は、コロナ禍、自然災害などもあり、世界的に不安定な時。こんな時代だからこそ、子どもと身近にいる親御さんや保育士、教師が、ひとりひとりの子どもの良さを見つけて、ひとりひとりの価値を認めるなど、教育・保育の原点に立ち返る必要があるのではないでしょうか。

そうすることで、その子どもに対する声掛けの方法も分かってきますし、どのような教材を与えたらいいのか、またどのような環境に整えたらいいのかも見えてくると思います。

                  けやの森学園代表 佐藤朝代

関連イベントのご紹介

11月20日に東京大学名誉教授の汐見稔幸先生を講師にお招きして、フレネ教育法から考える「これから求められる 子ども主体の教育・保育とは」をテーマに講演会を開催します。

日時 2020年11月20日(金)
午後6時半~7時15分
◆自然体験活動紹介
・「ヴァンスのフレネ学校」を翻訳して
-フレネ教育と自然体験―講師:東邦大学講師 阿部一智先生
   ・けやの森学園の実践―環境省 令和元年 環境教育体験活動優良事例について―

午後7時半~8時半
◆汐見先生の講演会

当日券1人1000円 事前に電話でのご予約がお薦めです・
電話04-2937-4880  NPO法人 けやの森自然塾


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