自律神経失調症④ HSPを漢方でみると
梅核気の続きです。
ここ数年、繊細な気質をもつ方を指すHSP(Highly Sensitive Person)という概念が知られるようになりました。神経が細やかで感受性が強いゆえに生きづらさを抱える傾向があり、例えばコロナ禍や有名人の自死など、周囲の不安や悲しみに強く影響を受けて自ら体調を崩してしまったり、周りの人がどう思っているか、とか、周りがうまく行くにはどうしたらいいか、などと考えすぎてしまったり、自分を後回しにしてでも人を助けたりして疲れ切ってしまう方、当院にもよくみえられます。ちょっと話がずれますが、このような患者さんがいらっしゃると、待合室で座っているときから実は分かってしまいます。当院の待合室には椅子が4脚ありますが、実際患者さんが一度に3人以上入ることはまれ。それなのに、自分しかいない待合室で背もたれのない壁ぎわのベンチに座られる方。どうして座り心地のいい真ん中のソファに座らないのかな?と思いますが、多分次に来られる方のために良さそうな場所を空けているんですね。いい人だなーと思う反面、そんなに気を使っていたら疲れないかしら、と心配になってしまいます。
さて、HSPの概念が提唱されたのは1996年からですが、このような方は昔からいました。例えば、HSPの方は音刺激に敏感で、ちょっとした物音に驚きやすい傾向がありますが、これは漢方の用語で「煩驚」といい、あるお薬を使う一つのサインと言われています。
HSPの患者さんを拝見していると、煩驚と梅核気と両方の症状を持っている方は珍しくありません。前回のコラムで梅核気の方は胃に痰飲があるという話を書きましたが、煩驚の方も胃の不調がベースにあることが多く、やはり胃のお薬でよくなることが多い。これを三段論法に当てはめると、HSPの方は胃の不調を抱えていて胃のお薬で不快な症状が良くなる、と言えますが、ほんとにそれで良くなる方は多いです。
でも、HSPであること自体は病気ではないし、ある意味美点でもあるので治す必要はありません。体に現れる不快な症状を緩和しながら、楽に生きるコツをつかんで欲しいなと思っています。そのため待合室にはHSPの本も置いていますが、もう一つとても大事なことは胃に負担をかけない食生活をすることです。夕食は軽めにして朝空腹で目覚めるようにすること、甘いお菓子やファストフードを避けること、これだけでも梅核気や煩驚に効果があります。
ぜひ試してみてください。