私たちの夜
「It was a good day」
間接照明に照らされて小さく息をを吐きながらつぶやく彼に「そやな。」と応える。
眠りにつく前の、今日と明日の間を彷徨っている様な淡い時間を大切にしている私たち。
長い散歩、色づき始めた紫陽花、子育て中のカラス、今日の晩ご飯、どんどん育つ我が家の観葉植物、買い物リスト、日本語の難しさ、仕事、明日の天気。
ころころと話題が変わり、どちらからともなく「おやすみ」と話を止める。
今日のできごと、今日の気持ちをふたりで話し合って、明日を迎える。
特別なことが起こらなくても、日常の中の小さな出来事や気づきを共有し「いい日だったね」と締めくくる今日という日。
嫌なことがあった日はすぐに話を切り上げて、お互い心にもやりとしたものを抱えて眠りにつく。
彼の辛さや私の悲しみがこの闇に溶けて朝にはからりと晴れるように
「明日はいい日になりますように。」
と心で唱える。
そんな日々の積み重ねを幸せと呼ぶのだろうか。
私たちの日々の、私たちの大切な習慣。