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創作小説(22) カップそうめん #秋ピリカ応募

瀬戸と小倉は悩んでいた。

小規模なそうめん会社に就職したものの、業績は夏以外の時期は売上げが伸びない。乾燥そうめん以外は生産していないという夏特化型の経営方針が原因である。
そこで会社は「カップそうめん」なるものを開発、その販促を任されていた。

販促のストーリーはヒーロー物で瀬戸が悪役となり最初に登場し子どもたちを怖がらせ、正義のヒーロー役の小倉が登場して解決という流れだった。
この点、学生時代、2人ともにレスリング部だったこともあり、ヒーローショーをやることに問題はない。
瀬戸が悩んでいたのは、どうしても子どもたちを怖がらせるセリフが見当たらないことだ。
「ナイフで傷つけちゃうぞ」は本当に怖いし、「全部食べちゃうぞ」だと商品が無くなっちゃうし。
そこで、はっとしたのが「カップそうめんの中身を紙に変えちゃうぞ」ならどうかというものである。まず、怖くない。子どもたちのブーイングがほどよく聞こえてきそうだ。カップそうめんは他の麺と違って紙を細くちぎったようなもんだし。悪くない。

そして本番、地域のスーパーでのこと。
紙吹雪とともに登場した瀬戸と小倉。ここで悪役の瀬戸が「カップそうめんの中身を紙に変えてやろうか」と言った。しかし、あれれ、子どもたちのブーイングはイマイチだ。そもそも新商品なのだ。子どもたちからしたら訳がわからない。
さらに、「そもそもカップそうめんって何よ」、「食べたことないんだからわからないじゃない」という大人たちの声も聞こえてきて、反響の紙はズタボロだ。

そこへ「窃盗犯だー」という声が店内に響いた。
そういえば最近この地域では窃盗犯が出没してまだ捕まっていないというニュースが流れていた。

店内を逃げる窃盗犯。
追う瀬戸、小倉。
散乱する店内の商品。

これまで逃げてきた窃盗犯が店内を猛然と激走したが、窃盗犯が二人が登場した時の紙吹雪に足を滑らせたことも相まって、学生時代に鍛えた二人の脚力が勝った。
「頑張れ」、「捕まえろ」周囲の野次も叫ぶ。
最後はレスリング部の脚力が実って、窃盗犯を捕まえた。

窃盗犯は無事警察に引き渡された。
この日のヒーローの瀬戸と小倉には老若男女、スーパーの店員や野次馬や警察から大きな拍手が送られた。
さらに、瀬戸と小倉に紙で作った大きな花が渡された。
「今日の幼稚園でたまたま作ったの。あげるね。私は桜っていうの。」
瀬戸と小倉は「桜ちゃん、ありがとう。」と声を揃えて感謝を言った。

二人のスターには大きな拍手で包まれた。余っていた登場時の紙吹雪も舞った。

瀬戸と小倉は言った。

「じゃ皆さんせーの」
「皆で食べよう『カップそうめん』」

そこだけは周囲からパラパラと紙が舞うような失笑が漏れていた。(1,114文字)

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