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アメリカの少年野球の体験談
私は子供の頃、父の仕事の都合でアメリカに住んでいたのですが、小学6年から高校1年までの間、現地の野球チームに所属していました。
その実体験に基づくアメリカの少年野球について書きます。
※私は1989年生まれです。これからお話する少年野球の経験談は2,000~2,005年頃のお話です。
ワタシの野球歴はまず日本でスタート
本題に入る前に少し私の球歴について説明させて頂きます。
小学1年の頃から父親とキャッチボールをしたり、ゲーム「実況パワフルプロ野球」で野球のルールを学んだりして、野球に触れていきました。
そして通っていた小学校が4年生から部活動への参加を認めていたので野球部に入部。
そして6年生の最後の大会後、父の仕事の都合でアメリカに引っ越すことになったのです。
そんな経緯でアメリカ暮らしが小学6年から高校1年の終わりまで続きました。
アメリカ少年野球の驚き『シーズン制』
当時、小学6年の私。
野球一筋で坊主頭だった私は野球の本場アメリカでプレイすることに燃えていました。
ところがどっこい。
アメリカの少年野球(学生野球)はシーズン制、つまり4月から8月くらいまでしかやりません。
我家がアメリカに引っ越した10月はちょうどシーズンが終わった後で、翌年の春過ぎまでチームの活動がないのです。
親もこの制度は知らなくて残念ガッカリ・・・
シーズン制のメリット
日本の部活動は暑かろうが寒かろうが関係なく一つのスポーツをひたすらやり続けるますよね。
一方でアメリカは季節によって皆、違う部活動に参加します。
4月~8月:野球、ラクロス、テニス、バレーボール、水泳、ゴルフ
9月~12月:フットボール、サッカー
1月~3月:水泳、バスケットボール、レスリング
※地域によって異なる場合があります
見てわかる通り、寒い時期は屋内スポーツが盛んです。
理にかなっていますよね。
体育館のスポーツなら雪が降っていても問題ありません。
そんな要領で一年中、様々なスポーツをプレイできるのが最大のメリット。
複数のスポーツをやっていると、様々な身体の使い方を覚えられそうですし、子供にはとても良いのではないでしょうか。
余談ですが不思議なもので、スポーツが上手い人というのはどのスポーツをやっても大体トップクラスです。
なので1年を通してそれぞれの部活動でキャプテンを務める人もいました。
野球ではエースでキャプテン、フットボールではクォーターバックでキャプテン、冬はバスケでキャプテンみたいな感じですね。
超余談
ここで一つ余談を
私がアメリカの高校に入学した1年目の時ですが、1学年上に文字通り「1年中違う部活動でキャプテン」という人がいました。
彼の名はジェレミー。
どの部活でもキャプテンだし、金髪青目の超イケメン。
そして学校で一番かわいい女の子と付き合っていました
※アメリカでは1つの部活動の中でも1軍、2軍、3軍に分けられて、それぞれの軍にキャプテンがいます。ジェレミーは2年生で2軍のキャプテンだった記憶です。
そして高校の野球部に入った初日。
とある教室に入るとユニフォームと帽子が並べられていて、上級生から順に好きなサイズを選んで持っていく、というこれまたワイルドな方法でユニフォームが配布されました。
年功序列感が少ないアメリカですが、珍しく年功序列感を感じる一幕でした。
そして上級生たちが大きいサイズを持って行きます。
すると僕らフレッシュマン(1年生)には小さいサイズしか残っていません。
9割それで問題ありません、1年生はみんな小さいですから。
ところが私はなぜか頭だけ大きく、Sサイズの帽子が小さすぎます。
「なんだよこのシステムまじで意味わからん、ジャパンじゃこんなのありえないぜ」と周りに愚痴りながら部活動がスタートしました。
それから私は毎日「マイファッキン帽子が小さい!」と愚痴り続けました。
するとある日、友達が「ジェレミー先輩が帽子デカすぎて困ってて、ケヴィンの帽子と交換したいらしいよ」とのこと。
ということで憧れの先輩と帽子を交換することになりました。
愚痴り続けると良い事が起きるもんですね。
ということで私は「ジェレミー」と書かれた彼の帽子を受け取り、ジェレミーは「ケヴィン」と書かれた私の帽子を被りました。
という思い出。
シーズン制のデメリット
話を戻しまして・・・。
私のように野球に全てを捧げる野球少年にとって、1年中野球できないのは悲しい限りです。
ですので少年時代の私のように何らかの理由で「野球は得意なんだけど、他のスポーツはイマイチ・・・」という子供にとって野球シーズン以外は物足りなくなってしまうのが、シーズン制のデメリットでしょう。
私の場合、他のスポーツにチャレンジすることも考えたのですが、元々ピアノを習っていたので他の楽器にもチャレンジしはじめて、野球シーズン以外はバンドをやっていました。
日本ではありえないことですが、そんなことも可能です。
色んなチームがある
私が日本の小学校に通っていた頃は「学校の部活動」で野球をするのが一般的でした。
しかし大人になり皆さんの話を聞くと今は学校の部活動以外にもいろんなチームでプレイすることができるみたいですね。
少子化に伴い学校単位でチームを作ることが難しかったり、指導者の確保が難しかったり、といった状況でしょうか。
ちなみに私が通っていたアメリカの小学校は部活動がありませんでした。
なのでスポーツをやりたい人は学校とは関係ない、外部のチームでプレイするのです。
チーム加入の経緯
アメリカの野球は4月にならないと始まらないと聞き、意気消沈していたとある日、謎の配布物が配られました。
当時、私は英語がよくわからなかったのですが、なにやら”baseball”と書いてあります。
親に見せると地元の野球チームの入団テストが開かれるとのこと。
シーズン自体は4月からのスタートですが、入団テストは10-11月頃に開催されオフシーズン中も定期的に練習があるようです。
チームがどんなレベルなのか未知数でしたが意気揚々と入団テストに臨み、日本の野球部でビシバシ鍛えられていた私は無事合格することができました。
チームの種類
ちなみに私が加入したチームは”Travel team”という括りでして、遠征も伴う活動があるチームでした。
遠征の範囲は普段は車で30分ほどの圏内。
夏休みなど大型連休になると違う州に遠征して何日かホテルに泊まることもありました。
なので親の送り迎えが大変ですし、ホテルに泊まる規模の遠征時はお金もかかります。
ですのである程度、金銭的にも、時間的にも余裕がある家庭でないと参加するのが難しいのが実情です。
当時はなんとも思っていませんでしたが、自分が親となった今、改めて考えてみると異国でこんな活動に協力してくれた親には感謝の気持ちでいっぱいです。
もちろんTravel Team以外にも近辺のみで活動するチームもあります。
指導方法の違い
よく話題になるのがアメリカと日本の指導方法の違い。
日本の野球界も指導方法が変わってきていますが、当時の状況を比較します。
※冒頭で触れた通り2,000年代初頭の話です。
日本の指導方法
小学校の部活動はスパルタでした。
怒鳴られながらノックを受けて、プラスチックのメガホンで頭を叩かれたり。
体罰はそれくらいでしたがとにかく怒号、罵倒がすごかったです。
あと、とにかくノックが厳しかった。
小学生相手にそんな球打つ?って感じですね。
そのまま中学校の部活動に進んだ友達曰く中学の方が更に厳しかったそうです。
今振り返るとあれだけ多くのノックを受けたことで、守備力がかなり上がったと思います。
アメリカに行った後も「ケヴィンは本当にどんな打球でも捕るけどどうやったらそんなに捕れるの?」とよく言われましたが「ジャパンで死ぬほどノックを受けたからや!」といつも答えていました。
たくさんノックを受けるのはいいんですが子供を罵倒するのはよろしくないですね・・・。
アメリカの指導方法
※地域やチームによってもちろん違いがあると思います。悪しからず・・・
噂の通り、本当に本当に本当に、日本の正反対。
まず体罰はあり得ません、そんなことがあったら即通報されます。
そしてその指導者は罰せられるでしょう。
それくらい体罰に対して厳しいです。
本当に体罰=犯罪です、そんなことがあれば即クビです。
それと意外だったのがコーチ陣があまり技術的な指導をしないこと。
(日本に比べたら)
日本は「体が突っ込んでる!」とか「バットが下から出てるぞ!」とか、「指導事項」がめちゃくちゃ豊富ですよね。
そういった「指導事項」がアメリカはめちゃくちゃ少なったです。
当時は「アメリカのコーチの方が野球に関するノウハウ少ないんじゃない?」と思っていましたが、今となって思うと日本のコーチの方が余計なノウハウ・うんちくを垂れすぎなんだと思います。
だって小学生の子供相手に「体重移動のタイミングが」なんて話、通じる訳ないと思うんですよね。
子供も毎日そんな話を聞いていると分かった気がしてきて色々考えるようになりますが、今思うと子供には早すぎる指導が多いです。
とりあえずアメリカのコーチ陣は「もっと力入れて振れー」とか「全然ボールみてないぞー」とか、それくらいのことしか言いませんでした。
あとは子供が自分で考えてプレイを改善してね、という方針です。
コーチはそこまで根掘り葉掘り子供に指導しません。
(ただ中学校、高校と年齢が上がるつれて徐々に指導内容も変わっていきましたが)
練習量、活動量の違い
小学校の部活動では放課後、15-16時頃からでしょうか?
それから19時まで平日は毎日練習でした。
さすがに冬場は平日5日間のうち、2日は休みでしたが。
そして週末は試合。
そんな感じでしたが、今では変わったのでしょうか?
とりあえず自分の経験として、アメリカの1年間で受けたノックの量は日本で受けるノックの1週間分にも満たないと思います。
というのもそもそもアメリカは試合が中心で、練習がとても少ないです。
というのも前述の通りシーズン制なので日本に比べてそもそも野球に費やせる時間が少ないのです。
練習する時間がないからとりあえず試合をする、という感じ。
その代わりアメリカの場合、シーズン中は本当に試合やりまくりです。
平日は5日間のうち3日間は試合があったはず。
週末ももちろん試合でダブルヘッダー。
なので週に7試合くらいやっていたのか・・・
余談ですがこれだけの試合数なので、チーム内で6,7人はピッチャーができないと回りません。
6,7人なんて言ったらレギュラーメンバーほぼ全員。
ポジションもあってないようなもので、みんなで複数ポジションこなします。
日本・アメリカそれぞれの指導方法に関する私の見解
私はありがたいことにアメリカのチームでも中心メンバーとしてプレイすることができました。
でもそれは日本でビシバシ鍛えられていたからです。
なので日本の練習量に関して文句はありません。
たくさん練習してプレイの精度を上げるのは日本人プレイヤーに適したことだと思います。
でも罵倒であったり体罰は完全に禁止にされるべきです。
それはどんな理由があっても正当化されるべきではありません。
日本とアメリカの実力差
120%私の個人的な見解としては、中学校までは日本の方がレベルが高いと思います。
その理由ですが・・・
日本は子供に対しても的確なカットプレイを教えたり、フォアボールを出さない重要性をしっかりと教え込んだり、効率的な野球の試合展開方法をみっちりと教えるからです。
そして中学生までなら日本人とアメリカ人の体格差がそこまでありません。
肉体的に互角の状態ならより成熟した野球をする日本の方が上じゃないかな、という考えです。
しかし高校生になるとアメリカ人は一気にマッチョになります。
実体験ですが中学までヒョロヒョロだった子が高校になったらみるみるムキムキになってめちゃくちゃボールを飛ばすようになりました。
こうなるといくら日本人が頑張って効率的な賢い野球をプレイしても歯がたたない訳です。
アメリカ野球留学について
120%私感及び主観に基づく勝手な話をさせて頂きますと・・・
高校生までなら日本人は日本で野球をするのがベストだと思います。
もちろん留学先によって話は違いますし、本当にスポーツに特化した英才教育的な機関なら野球留学もアリかもしれません。
でも、やはり日本人とアメリカ人ではあまりにも体格差、体力差があります。
上述の通り個人的な体験談としてアメリカ人は高校から一気にみるみる身体つきが変わっていきました。
日本の指導方法にも問題、課題がありますが年々改善されているので、単純に「本場にいけばうまくなる!」とは考えず、日本人に適したノウハウが蓄積されている日本の進路で野球を続けることが日本球児にとっては最善の選択肢ではないかと思います。
ですが日本人でも最近では立派なフィジカルを持った高校生も増えていますし、大人顔負けの身体を持っているなら高校生時点でもアメリカへの野球留学は正解かもしれません。
なんてったって大谷選手という日本人がパワーでメジャーリーグを圧倒する時代ですからね。
まとめ
自分の体験に基づいたアメリカの少年野球について綴りました。
私は父の仕事の都合で少年時代をアメリカで過ごしましたが、一番の思い出はこの野球チームでの活動です。
言葉をまともに話せない中、プレイで自分を表現できることが最高の喜びでした。
自慢するつもりはありませんが、言葉が話せなくても野球で結果を出していたので周りから一目置かれました。
思春期というのは精神状態がしっちゃかめっちゃかですから、何かしらそうやって自信を持つことができたのは、当時の精神衛生上とてもよかったと思います。
しかし、そうやって現地の人たちに交じって堂々とプレイできたのは日本でみっちりと訓練を受けたからでした。
罵倒したり体罰を与えるのは絶対にダメですが、たくさん練習を積んで野球の基礎を身に着けるのは日本の野球の素晴らしい一面です。
アメリカの駐在員も年々増えていると思うので、もしお子さんがアメリカで野球をプレイするチャンスがあれば、ぜひ応援してあげてください!