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ほぼ毎日ほぼ500字短編:その30「花びら」

「わぁ、カイト、きれいだねぇ」

私が呼びかけるも、カイトは黙って桜の花を見上げるだけだった。その様子に、私も少しだけ気落ちしてしまう。

カイトと私の血はつながっていない。カイトは今の夫の連れ子で、本当の母親はカイトを産んでまもなく、亡くなってしまったそうだ。7歳になるカイトもその事実は知っていて、夫は「自分のせいで母親が亡くなったと思っているかもしれない」と心配していた。その心配は私も同じだった。

カイトは感情表現が乏しい子で、特に喜びや楽しみの感情が希薄だ。誕生日プレゼントを貰っても、遊びに連れて行ってもらっても、表情は堅いままだった。

そして今も、満開の桜に対して真顔を貫いている。

「あ、カイト。頭に桜の花びらがついているよ」

カイトの頭についた、一片の花びらを取る。同時に、カイトの頭も撫でてみた。

「……!」

カイトが一瞬、目を見開く。そして目線を泳がせた。

「どうしたの、カイト?」
「あ……その、しゃがんでほしい」

言われるまま、私はしゃがんでみる。するとカイトは私の頭に手を伸ばした。

「お、お母さんにも、花びらが」

これが、初めてカイトに「お母さん」と呼ばれた瞬間だった。

2024年12月5日 pixiv創作アイディアより

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