なんでもない一日
海に墜ちた星の欠片の話を知っている?
それは、海に隕石が墜ちたということ?
君は遠慮なく僕に軽蔑の眼差しを向けて、まったく……とぶつぶつ小声で言いながら読みかけの本に目を戻した
珈琲を淹れるために流し台に向かった僕は、窓にあたる雨のしずくをぼんやりと見ていた
お湯が湧いてるよ
その言葉に薬缶に目をやると、滾っているお湯が蓋をこつこつかんかんと押し上げて、口から勢いよくひゅぅひゅぅと湯気を噴いている
こうした、何でもないような一日を過ごすことが、平凡に思える毎日を終えることが、僕らには心地よい日であることを共有している
荒波に飲み込まれて、打ち上がった僕らの今の場所
窓には風に舞って辿り着いたであろう桜の花弁が数枚、雨水で貼り付いて春らしい模様を作っている