🍎詩)うたいびと
謳い人は詩をうたう
誰がためにか
我がためにか
想い人に愛を届けと
赤い空に悲しみを投げよと
その詩は風に運ばれ何処へ
星になるのか
藻屑に変わるのか
謳い人は詩をうたう
誰がためにか
我がためにか
優しさを撒き散らし
過ちを嘆くのか
帳の降りた世界で
光に変わるか
黒の中へと溶けて消えるか
謳い人は詩をうたう
すぐに消えてしまうとしても
言葉を探し言葉を並べ
小さな世界を創り出す
私は此処に在るのだと
音の消えた声を詩に託し
誰かの海馬の奥に潜む事を願い
まるで救いを求めるかの様に
その声が枯れてしまうまで
何度も何度でも
泥水の上澄みを掬って美しい詩をうたえど
耳触り良く流れ行くだけだというのに
赤い真実などには誰もが目を背けるというのに
謳い人は詩をうたう
人で在りたい
人になりたい
そう願いながら