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エッセイ)観覧車の思い出

今日の昼間に“りんこさん”が甘酸っぱくて綺麗過ぎないドロッとした青春系の百合小説を書かれていて、その話の中で観覧車の描写があり、それを読んで観覧車の思い出がふと頭をよぎった。
(りんこさんの小説は下に貼っておきます)

高校生の頃、春の遠足で遊園地に行った。
時間内は園内を自由行動と言われて仲の良かった男4人で様々なアトラクションを回っていた。
すると、途中で自分は殆ど面識のなかった商業科の女の子のグループから、一緒に回ろうと声を掛けられた。
向こうも女子4人。計男女8人で色んなアトラクションを回った。チョイチョイ2人で1席みたいな乗り物には男女ペアで乗る事となった。
珈琲カップとか空中散歩的な乗り物とかカップルで乗る定番的な乗り物に何個か乗った。
他のペアはその都度、組み合わせが変わっていたが、何故か私の横に座る女の子はいつも同じだった。

最後に観覧車に乗る事になった。
観覧車は6人乗りだった。
1つ目のゴンドラに6人が乗り、次のゴンドラに私と例の女の子が乗る事になった。
狭い密室で女子と2人。
しかも、絶景が見える観覧車。
このシチュエーションにドキドキしない男子が居るだろうか?いや居るはずがない。
観覧車が頂点に来た時にキスをするとかベタベタな話だけれども、誰しもが一度は想像した事があるはずだ。

いくら2人きりとは言え、今日が初対面のような2人。いきなり隣同士では座らずに、対面して座る形になった。
観覧車はゆっくりと頂点に向かって行く。
段々と高くなる目線と広がる景色。
観覧車の高度に比例して心拍数はドンドンと上がっていった。
それとは反比例して減って行く自分の口数。
綺麗な景色にはしゃぐ女の子。
半分の高さに来た頃には、彼女が何を言っているのかも右から左でよくわからないまま、生返事を繰り返していた。
汗と一緒に握り込んだ手はそっと膝の上に置いていた。
もうそろそろ頂点に達するかと言う所で彼女は、私の隣に来ようと立ち上がる。
私は、

『ちょ!立たんといて。』

えっ?と驚く彼女を後目に私は続けた。

『観覧車が揺れるからそっちに座ってて』

…観覧車が頂点に達する頃
春の陽気は姿を潜め
冷えた空気が辺りを漂っていた。
地上に降りて以降、彼女が自分の隣に来る事はなかった…。

私は極度の高所恐怖症だ。
外が見えるガラス張りのエレベーターにも乗れない。ジェットコースターは高い場所に短い間しかいないので乗れる。しかし、観覧車は無理だ。かと言って乗れないと言い出す事は格好悪くて出来なかった。
もし、頑張って横の席に座って貰っていたら、
薔薇色の高校生活が待っていたのではないかと、皮肉の様に後悔が頭の中をクルクルと回っている。

終わり

今回のりんこさんの小説↓

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