運命のドロー! ナワバトラーで学ぶ確率入門【Splatoon3】
久方ぶりのKeshitanです。
ココ最近はスプラ記事が多いですが、今回はその中でも一風変わって『スプラ×数学』という分野を跨ぐ話をしようと思います。
スプラ3で新規追加されたサブコンテンツ【ナワバトラー】には『ばってんガーデン』というステージが用意されています:
このステージでは非常に有名ですが、半分本気、半分ネタの「ダイナモローラー」を使ったロマン砲があります:
しかしこのロマン砲、決まると強力ですがコンボ成立のためには
というロマン砲ならではの欠点があります。ここで気になるトピックは、やはりロマン砲の確実性です。数学的な問題とするならば、
という問題が気になるところです。
今回は上記のような「初手に特定カードを引く確率の求め方・考え方」についてお話していきます。
それでは本編へどうぞ!
ロマン砲の確率計算
NG例
まずはテキトーに考えると起こりがちな誤り・ミスを紹介します。
大前提としてデッキの枚数は15枚ですね。そして『ダイナモローラー』はこの中に1枚だけ入れられる状況です。
単純な話として「シャッフルした15枚から1枚引いて、それがダイナモである確率」は、勿論$${\dfrac{1}{15}=0.0666\ldots}$$で約7%ですね。
実際には手札は4枚なので、確率は単純計算$${\dfrac{1}{15}\times4=0.2666\ldots}$$で約27%と分かりますね。
そして【ナワバトラー】には、他のゲームで良く言う「マリガン」ができますね? つまりは「4枚まるまる引き直すこと」ができます。先ほどの工程を初めからもう一度行うだけなので、確率は2倍で最終的に
と分かります。
・・・・・・・・・
………………まぁ、初めに述べたように間違っているんですけど🫠🫠🫠
正確な計算結果は約46%であり、実際の確率は上記の53%より低い結果となります。
なぜ低いのか。
この原因は
という主張に問題があるためです。ことは単純で、「なぜマリガンをするのか?」という状況を考えるとスッキリです。
上で2倍とは言っていますが、要は足し合わせて考えているのですね。これを図で表現しましょう:
これってつまり、棒グラフを跨いで足していますね? この操作を許してしまうと、全体が200%となり、意味が破綻してしまいます。
実際の状況では、
のが自然であるので、27%に足すべき確率は、
となってその確率は$${\dfrac{11}{15}\times\dfrac{4}{15}=0.1955\ldots}$$より約20%と分かります。図に表すと以下の通りです:
結論として$${0.2666\ldots+0.1955\ldots=0.4622\ldots}$$で約46%と正しい結果が得られました。
ロマン砲・改の確率計算
ダイナモ2枚構成
では、少しグレードアップをさせて、『ダイナモローラー』&『ダイナモローラーテスラ』の2枚構成で考えてみましょう。【ナワバトラー】では亜種ブキは左右反転で実装されているため、似たような運用でロマン砲を拡張させることができます。
またここでも気になるトピックは、やはりロマン砲の確実性です。同じく数学的な問題にするならば、
と言えるでしょう。
NG例・改
ここでもよくある誤り・ミスを紹介します。
まず、「シャッフル済みの15枚から1枚引くとき、ダイナモ系を引く確率」は$${\dfrac{2}{15}=0.1333\ldots}$$で約13%です。
次に、先ほどと同様に手札が4枚あるので単純計算$${\dfrac{2}{15}\times4=0.5333\ldots}$$で約53%です。
最終的にはマリガンも考慮に入れると、1回目で引けない確率47%の割合53%を足すので、結論は$${\dfrac{8}{15}+\left(\dfrac{7}{15}\times\dfrac{8}{15}\right)=0.7822\ldots}$$で約78%となります。
従ってロマン砲・改は、
と分かります。
・・・・・・・・・
………………まぁ、これでも間違っているんですけど😭😭😭
正確な計算結果は約77%と、微量ながら低い結果となります。
なぜまた低いのか。
これはNG例・改において行われた、
という操作が原因で、偶々初めのNG例では問題にならなかったですが、実は危険な計算方法だったことが分かります。
初めのNG例では4枚の手札のうち、
1枚目にダイナモを引くか否か
2枚目にダイナモを引くか否か
3枚目にダイナモを引くか否か
4枚目にダイナモを引くか否か
の精々4種ほどの状況でしかなかったですが、NG例・改では上記の状況に加え、
1枚目と2枚目にダイナモ系を引くか否か
2枚目と3枚目にダイナモ系を引くか否か
3枚目と4枚目にダイナモ系を引くか否か
1枚目と3枚目にダイナモ系を引くか否か
………
というように、パターンが複雑化して4倍すればいいなんて単純な話では無くなってしまっているんですね。
天国と地獄
ここで、場合分けの地獄に突き進んでもいいですが、スマートに求める方法があるのでご紹介します。それは順列(Permutation)と余事象の考えを利用するというものです。
順列とは、順番を考慮したパターン数を求める方法のことです。【ナワバトラー】の例で言えば、1枚1枚引いてきた手札を異なる種類と並び順で数え上げるものだと言えます:
という問題は順列の考えで機械的に(超重要!)答えが出せて、その並び順は、$${{}_{15}P_4=15\times14\times13\times12=32760}$$で大体3万通りであると分かります。
ここで出てきた『$${\Large{}_{15}P_4}$$』という記号は、「左側の数字(15)から降順で右側の数字分(4つ分)掛け合わせてね」という意味です:
$$
\Large {}_{15}P_4=\underbrace{15\times14\times13\times12}_{上から4つ分}
$$
順列の計算規則は、本質的には樹形図の数え上げを機械的な計算に落とし込んだものです。先の問題で言えば、『1枚目は15種の可能性があり、それぞれに2枚目は1枚目以外の14種の可能性があり、またそれぞれに3枚目は1,2枚目以外の13種の可能性があり………』という樹形図の考えを端的に表現しています。
一方で余事象の考え方も単純で、
というもので、「複雑な確率を求めるなら、そうじゃない方(余事象)を簡単に求めて楽に計算してあげましょう!」ということです。
計算過程
では、早速求めていきましょう。先の議論で愚直に求めるのは地獄の始まりであったため、今回はじゃない方芸人のダイナモ系を一切引かない大ハズレの確率を最初に求めます。
確率は(特定のパターン数)÷(全体のパターン数)であり、大ハズレのパターンはハズレ13枚から順々に4枚引いてできるので、順列の考えで$${_{13}P_4}$$と分かり、全体のパターン数は$${_{15}P_4}$$と分かっています。よって、大ハズレの確率は、
$$
\begin{align*}
\dfrac{_{13}P_4}{_{15}P_4}&=\dfrac{\bcancel{13\times12}\times11\times10}{15\times14\times\bcancel{13\times12}}\\
&=\dfrac{11\times1}{3\times7}=0.5238\ldots
\end{align*}
$$
と、大体52%と分かります。ここで、今求めた確率はじゃない方芸人である大ハズレの確率であるため、1回目でダイナモ系を引く確率は$${1-\dfrac{11}{21}=\dfrac{10}{21}=0.4761\ldots}$$で約48%と分かります。
………これで終わりではないですね。マリガンを考慮に入れれば、$${1-\dfrac{11}{21}=\dfrac{10}{21}}$$(『1回目でダイナモ系を引けない確率』は『大ハズレの確率』)より、最終的な確率は$${\dfrac{11}{21}+\dfrac{10}{21}\times\dfrac{11}{21}=\dfrac{341}{21^2}=0.7732…}$$すなわち約77%であると分かります。
$$
\begin{array}{c|cc}
& マリガン無し & マリガン有り \\ \hline
ロマン砲 & 27% & 46% \\
ロマン砲・改 & 48% & 77%
\end{array}
$$
これで正しい結果が得られましたね。お疲れ様でした。
イカがでしたでしょうか? 今回ご紹介させて頂いた考え方は、確率のキホンにおける「キ」と「ホ」です。【ナワバトラー】では引いた順番で強さが変わることもないので、一般的には順番を考慮せずに確率計算を行うことが主流です。これを順列に対して組合せ(Combination)というのですが、、、それはキホンの「ン」ということで、また機会があるときにでもお話しましょう。
おまけ
今後、ダイナモ2枚構成デッキを紹介する予定です!
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