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プレキシ、謎めいたまま

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#小説

プレキシ、謎めいたまま[7]

 僕は中学一年からずっと国語を選択していて、ずっと一つの小説を書いていた。……選択国語を担当しているのは全部同じ教師で、よく言えば生徒の自主性を最大限尊重しており、悪く言えばまったくやる気がなかった。彼は選択科目のコマのうちその半分しか授業をしなかったし、授業がある日でも彼が何か話したりするのは授業時間の半分しかなく、残りは〈制作〉という名前の体のいい自習時間だった。僕が初めて彼の授業を受けたとき

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プレキシ、謎めいたまま[6]

 しかし、僕は特別彼女と仲が良いわけでもなかったし、そんなこと突然聞いてみるわけにもいかなかったから、僕は中間の段階としてもっと彼女と仲良くならなければならないと思っていた。ある放課後、たまたま校舎裏の花壇にひとりで水やりをしている彼女を見つけた。彼女は緑色のプラスチックでできた大きなじょうろを右手で持って、肩から振り子のように振りながら石積みの花壇全体に水を撒いていたが、僕がみる限り花壇には特に

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プレキシ、謎めいたまま[5]

 なぜなら本当の祈りというのは、アウグスティヌスの祈りがそうだったように、あらゆる不在の痕跡に囲まれて、なお存在している可能性へと宛てられるものであるだろうから、(……彼女自身の心それ自体が、自分にとって神さまなどいないということを重々承知のうえで、本を読んで何かを感じたり、考えたりして、すがるような気持ちになったのなら)……殉教者の祈りが本当に純粋なものになるのは、くべられた火が彼の最後の神経を

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プレキシ、謎めいたまま[4]

 でも本当に、転校生は、世界の終わりの鐘の音全てを背負っているみたいな顔をして新しい学校に……あるいは、古い学校に戻ってくるべきではない。彼女はそういう表情と、何かを訴えるような渇いた目差と、猫背と、歪んだ歩き方で自分の背負っている世界一般的な不幸(本当に十四歳というのは世界一般的な不幸を各々背負っているのだが)を僕達に示して、僕というファナティックなフォロワーをたった一人得た代わりに、三十人のア

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プレキシ、謎めいたまま[3]

 そもそも、同一の女の子に四回も告白してしまうような男には、どこかしら〈犯罪的〉なところがあると言わなくてはいけないのではないだろうか? 僕は彼女に袖にされるたび、「もうどうなってもいい」というありきたりな落胆を感じて、放火窃盗殺人その他の刑事上の罪が、少しずつ、可能性として、僕へと近づいてくるように感じていた……。僕がすぐ、それらの罪を犯す現実的な可能性があったわけではないが、もし、ほんとうにそ

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プレキシ、謎めいたまま[1]

 祖母が僕に禁止したことは二つある。

 ひとつは、芸能人になることだった。僕は子供時代のほとんどを祖母の家で過ごしたが、それは信じられないほど退屈で、陰鬱な経験だった。祖母の家は田舎の、その地区では一番の大きな家だったけれど、僕はその角部屋に祖母と一緒に閉じ込められていて、本もおもちゃもなくて、気晴らしと言えば、そろばんを車にみたてて畳の上でがりがり転がしてみるとか(すぐ止まってしまうのだが)、

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プレキシ、謎めいたまま[2]

プレキシ、謎めいたまま[2]

 彼女が自分の死へと続くライヴストリームで仮想的バイクのアクセルをふかしていたとき、……彼女がちょうど死のうとしていたとき、僕は駅前にいて、人生で初めて知らない女の子に声をかけていた。〈ナンパ〉という言葉がまだ使われているのか、そういう活動に勤しんでいる男たちがまだいるのか、僕は知らない(猟色は現場を現実からSNSに移しているようにも思われる……。)。僕は〈ナンパ〉しようと思ってこそ駅前くんだりま

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