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渋谷で5時。学生と社会人のギャップ。
21歳のころだった。僕は大学生。ある女の子と電話で盛り上がり会うことになった。デートってやつだ。
電話越しの彼女の声。僕と会うことにワクワク感を隠せない様子だ。彼女は僕と同い年。彼女はこの春に短大を卒業して今はOLだ。
その日、僕は朝からドキドキしていた。当時は、まだデートというのに慣れてなかった。〈どこの店に行こうかな?そういえばあの辺にオシャレな感じの店があったな。ま、歩いていれば見つかるだろう〉僕はドキドキしながらも楽観的に考えていた。
*
夕方5時に渋谷のハチ公前で待ち合わせ。彼女と渋谷の街をぶらぶらした。センター街を歩いているとき、彼女が「ねぇ、バーに連れていって」と言ってきた。
〈え、バー?どこにあるんだろう。とにかく歩きながら探そう。いい感じの店があったら入ろう〉
行き当たりばったりのデート。彼女とは何気ない会話が続いていたが、いい加減どこかの店に入らないと。でもバーらしき店は見当たらない。そんな感じでセンター街をぐるぐるしていて、どういう訳か典型的な居酒屋が目にとまり、そこに入ることにした。
「へいっ、らっしゃい!」
「おふたりさんっすかー!」
「へいっ、ビールいっちょー!」
「焼き鳥いっちょー!」
「イェーッ!」
さすが居酒屋。店内は騒がしい。店員はみんなハイテンションだ。おまけに近くのテーブルでは学生たちの集まりで「一気!コール」で盛り上がっている。
当時は大学生たちの間で「一気飲み」というのが流行っていた。新入生の歓迎コンパで「一気飲み」のしすぎて、急性アルコール中毒で病院に担ぎ込まれた学生もけっこういたぐらい、ちょっとした社会現象になっていた。
とんねるずの『一気!』という曲も人気があったもんな👇
僕にしてみりゃ、この手の居酒屋にはよく通っていたから慣れてるんだけどね。きっと彼女も学生のころは居酒屋での飲み会が多かったと思う。しかし、彼女は今は社会人。ワンランク上の店に行きたかったのだろう。きっと、会社の先輩にも大人の雰囲気が味わえる店に連れて行ってもらっていたのだろう。
このころから「ショットバー」と呼ばれる店が徐々に話題になってきていたのも事実。
たとえば、こういうテイストの店👇
僕も社会人になってからは「ショットバー」にはよく行ったものだ。しかし、このときはまだ学生。こういう店は知らなかったんだよね😅
店内はお祭り騒ぎ。彼女は口数が少なくなっていった。僕の問いに対する返答は、感情のこもってない言葉になっていった。僕は学生、彼女は社会人。そのギャップが出たね(笑)
彼女との二度目のデートがなかったのは言うまでもない(笑)
鈴木雅之の『渋谷で5時』。こんなデートがしたかったな(笑)