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オリジナル曲「Vanitas Vanitatum」について
構想・歌詞
どうにも作曲力が伸び悩んでいるのを感じたので、視点を変えて作詞面からのアプローチにもっと力を入れようと思って作詞論を色々調べることにしました。
その中で、歌詞に共感させる手法の一つとして登場人物に感情移入させるというのがあって、それを徹底したのがBUMP OF CHICKENの「K」だ、という記事を読んだので聴いてみたのですが、非常に感銘を受けました。
また、今まで作った曲の歌詞では、初めてフルコーラスで作詞した「Light in the Darkness」が個人的に一番気に入っているのですが、逆に言うとそれ以来それを超える歌詞を作れていないなと感じていました。
まあこの曲は数年構想を温めていたものなので、それを超えるのはなかなか容易ではないとは思います。
セカンドアルバム以降よりもファーストアルバムの方が良いというアーティストが少なくないのは、ファーストはそれまでの人生の時間分かかってるけどセカンドはファーストからの時間分しか経ってないから、というのを聞いたことがありますがまさにそういう状況でした。
そういう経緯から、せっかくだから次は詞先で作ってみるか、ということになりました。
また、いつも曲先で作っては作詞やテーマを考えるのに苦労していたので、詞先なら最初にコンセプトを明確に出来るのもメリットだなと思いました。
題材についてですが、ブルーアーカイブ(以下「ブルアカ」)のメインストーリーVol.3のエデン条約編のシナリオがとても素晴らしく、その中でも「Vanitas Vanitatum」というキーワードとそれに対する考え方に非常に共感したので、それをテーマにしようと考えました。
以下リンク先の記事に関する部分です。(多少ネタバレ注意)
全文は「Vanitas Vanitatum, et omnia Vanitas.」となり、旧約聖書「伝道の書/コヘレトの言葉」に出てくるラテン語で、「空の空、一切は空である。」のような意味になります。
この言葉に対する解釈は様々あるようですが、ブルアカ作中では「全ては虚しい。どこまで行こうとも、全てはただ虚しいものだ。」と訳され、ニヒリズムと結び付けられて使われていました。
その中でも積極的ニヒリズムとしての考え方をするキャラクターにとても共感したので、ニーチェの思想について学ぶことにしました。
その結果、ニヒリズムやルサンチマンの克服、力への意志や超人としての生き方の肯定、という要素をテーマに作ろうと考えました。
テーマが虚しさとそれの克服なので、どういう時に虚しさを感じるかと色々考えた結果、「大切なもの(特に人や命)の喪失」というのが書きやすいかなと思いました。
また、最近以下の作品がX(旧Twitter)で少しだけ話題になっていて気になったので読んでみてコレだ!と感じたので、これを元ネタにして、消極的ニヒリズムの「僕」と積極的ニヒリズムの「君」の出会い、という話で作詞することにしました。
しかし以前投稿した記事で「大切な人に出会えて変われた」みたいな歌詞は書きたくないとキッパリ言ったばかりなのに……スマンありゃウソだった。
ただ、ニヒリズムについてだけで話を作るのはしんどかったので、2番の歌詞として同じくブルアカのエデン条約編で出てきた「楽園の存在証明」の話も盛り込むことにしました。
作中では「楽園に辿り着きし者の真実を証明することはできるのか」というテーマで、
もし楽園という物が存在するのならば、そこに辿り着いた者は至上の満足と喜びを抱くがゆえに、永遠に楽園の外に出る事はない(ので観測出来ない)。
もし外に出た(観測出来た)のであれば、つまりそこは真の悦楽を得られるような、本当の楽園ではない。
「存在しない物の真実を証明することはできるのか?」というパラドックスとして取り上げられていました。
ネタバレになってしまうのですが、それに対する考え方として「重要なのは存在するかどうかではなくて、ただ存在を信じることだ」というものが提示されてなるほどなと思いました。
また、天国にまつわる話として「天国に行った人は誰一人として帰ってこないのだから、きっとさぞかし良いところなんだろう」というのを聞いたことがあるのと、上記の元ネタにした小説でも天国の絵を描いているシーンがあるので、これと結び付けて取り入れることにしました。
しかしここにきて、「天国を信じる」という行為はニーチェの思想と相反するのでは?ということに気付いてしまいました。
というのも、ニーチェはキリスト教を否定する中で、天国というのは今を諦めて死後に期待する概念だ、としてルサンチマンであるとしています。
神(キリスト教)の絶対性が否定され世界に意味が失われた中で、ニヒリズムをありのまま受け入れルサンチマンを克服して、過去でも未来でもなく今を力強く自らの意志で肯定しよう、という生き方がニーチェの言う「超人」で積極的ニヒリズムなので、この矛盾をどうにかする必要があります。
いっそ楽園の話を無しにして2番丸ごと書き直すしかないのか…?とも悩みましたが、悩み抜いた結果、天国を信じる人の全てが現世からの逃避と捉えているわけではないのでは?と思い至りました。
奴隷道徳としての天国ではなく、自らの意志で胸を張って天国に辿り着くために今この瞬間を力強く生き抜く、というのであればそれは力への意志を持った生き方なのではないか、と考えました。
これにガンダムUCの「『それでも』と言い続けろ」という台詞や、仮面ライダージオウの「瞬間瞬間を必死に生きてるんだ!」(瞬瞬必生)という台詞を取り入れて、今この瞬間を肯定する生き方をこの作品のテーマにすることにしました。
もはや毎回ガンダムネタを仕込むのが恒例になっていますね。
また、BUMP OF CHICKENの「K」に感銘を受けたこともあって、ラストに何かオチをつけたいと思いました。
1番で「来年の桜は見れないだろう」と余命1年未満であると描写したので、それで消極的ニヒリズムに陥った「僕」が「君」と出会ったことで力強く生きようした結果ラストで桜を見ることが出来た(余命よりも長く生きることが出来た)、というオチにすることにしました。
ここまでで歌詞のざっくりしたプロットを作った後、それに合うメロディを鼻歌的に作るという感じで進めました。
サビのメロディとコード進行はストックからの流用で決め打ちしたので、完全に厳密な詞先というわけではないですが、サビを「Vanitas Vanitatum」から始めるのは作詞時点で決めていました。
編曲について、今まで音数を多くすることばかり考えていたので、今回はシンプルな構成にしたいと考えました。
「Light in the Darkness」がちょうどそういう感じだったので、それを意識していたのもあります。
リファレンス曲として、ガンダムX前期主題歌であるROMANTIC MODEの「DREAMS」からギターを抜いた感じがイメージに近かったので、シンセパッド中心の構成で作ることにしました。
コード進行
キーはGメジャーでBPMは128です。
最初はもっとキーを上げようかと思っていたのですが、やはりGメジャーじゃないといつもの自分の曲っぽさが出ないと感じたので結局いつものでいくことにしました。
BPMは最近作るたびに速くなる一方だったので、一旦ゆったりしたものにしようと思ったのでリファレンス曲に合わせました。
Aメロ
VIm - IIIm - IIm - V - I - IIm - VIm - VII(F#) - III(B)
VIm - IIIm - IV - V - I - IIm - VIm - VII(F#) - III(B) - VIm
Bメロ
IV - IVM7 - IIIm7 - VIm7 - IVM7 - IV#dim - V7 - III7(B7)
サビ
VIm - IIIm - IV - V - I - IV - V - IIIm - VIm - IV - IV#dim - Vsus4 - V
VIm7 - IIIm7 - IVM7 - V7 - I - I#dim - IIm7 - V7 - IIIm7 - VIm7 - IIIm7/D - IV - V - VIsus4 - VI(E)
(イントロ・アウトロはサビの流用)
間奏
IVM7 - IIIm7 - VIm7 - Vm7 - I7 - IVM7 - II7(A7) - V7 - V#7
IVM7 - IIIm7 - VIm7 - Vm7 - I7 - IVM7 - V7 - VIsus4 - VI(E)
間奏について、何も思いつかなかったのでとりあえずエモいコード進行並べておいてメロディを考えようと思ったのですが、クソダサいものしか浮かばなかったのと、シンセパッド並べてるだけでもイイ感じでは?と思ったのでブレイク的な感じになりました。
ただYoutubeのコメントでも指摘があったとおり3ループは長過ぎたので、せめて2ループで良かったなと思います。
サビはもはやザ・きお節と言っても過言ではない63451(-1#dim)-4536-4-4#dim-5sus4-5(ラスト4-5-6sus4-6)を使っています。
散々擦ってる進行ですがやっぱりこれが一番気に入ってます。
音源・プラグイン
ボーカルは初音ミクDarkです。
プラグインについては、
~150Hzくらいでローカットと音のこもる280Hzを-2dBしてからNectar4を入れ、
CLA-2Aで3dBリダクション、
Saturation Knobを0.7、
WAVESのPuigTec EQP-1Aで8kをBANDWIDTH真ん中くらいにしてブースト、
RX10 De-essでディエッサー、
Vocal DoublerをSeparation・Variationともに50%とAmount40%、
低音のこもる300HzにダイナミックEQ、
モノラルディレイを189ms・フィードバック25・ハイパス200ローパス3k・WET6%でインサート、
最後にVocal Riderで均しています。
また、センドでValhalla VintageVerbの「Vocal Plate」でDECAY 1.00s、PREDERAY 50msに調整して、~300と5k~をカットしています。
ハモリは3度下ハモです。
プラグインはローカットとNectar4はメインと同じ、
400Hzと1.3kHzあたりを-1dB削って5kHz~を-1dBローシェルフ・13kHz~をハイカットして音の芯を削り、
Renaissance Axxでアタック0.00にしてリダクション6dBくらい潰し、
WAVES Doubler 2の「Basic Doubler」を原音抜きで入れて、
センドでValhalla VintageVerbの「Vocal Plate」を薄めにかけています。
また、メインとハモリでBUSトラックを作成し、Shadow Hills Mastering Compressor Class AをDISCRETEをレシオ2:1、アタック10、リリース.25でリダクション0.5dBで入れています。
イントロ・アウトロのベルは
①SYNTHMASTER ONEの「GTR Heart」
②NEXUS4の「Fantasy」
のレイヤーで、パンをLR35くらいに振り分けています。
プラグインについて、
①は~350Hzを-1.5dBローシェルフ、2kHzのキンキンするところをダイナミックEQで-2dB削っています。
②は~400Hzを-1.5dBローシェルフ、2kHzと4kHzのキンキンするところをダイナミックEQで-2dB削っています。
イントロ・アウトロのM1ピアノはKORG Collection M1の「MidiStack3」で、パンをL10に振っています。
プラグインは
Saturation Knobを0.9、
OTTをDEPTH20%・TIME440%、
~200Hzローカットと倍音足してギラついた分7k~を-1dBハイシェルフ、
ベル①と被る500HzをダイナミックEQで-2dB、
CLA-2Aで3dBくらいリダクション、
センドで30msフィードバック1回のピンポンディレイを入れてステレオ感を広げています。
シンセパッドは、
①KORG Collection M1の「Orbits」(うねり)
②KORG Collection TRITON Extremeの「Simple Sine Pad」(雰囲気)
③KORG Collection M1の「Luna-Pad」(アタック感)
でレイヤーしています(A・Bメロは①・②のみ)。
プラグインについて、
①はWAVESのPuigTec EQP-1Aで5kをBANDWIDTH2くらいでブースト、
~200Hzを-2dBローシェルフ、300Hzを-2dB、M1ピアノと被る430HzをダイナミックEQで-1dB削っています。
②はWIDERで100%に広げ、①と同じEQを入れています。
③はWAVESのPuigTec EQP-1Aで5kをBANDWIDTH2くらいでブースト、①と同じEQを入れています。
また、シンセパッドをまとめたBUSトラックを作成し、
WAVESのPuigTec EQP-1Aで4kをBANDWIDTH5くらいでブースト、
300Hzを-3dB、ボーカルと被る500HzをダイナミックEQで-2dB、3kHzを広めに1dBブースト、
WAVES CenterでMidを-0.5dBしています。
Aメロ以外で鳴っているアルペジオはSYNTHMASTER ONEの「ARP London LN」です。
プラグインは~170Hzを-1dBローシェルフ、M1ピアノ及びシンセパッド③と被る200HzあたりをダイナミックEQで-2dB、3kHzを広めに1dBブースト、
ボーカルと被る420HzをダイナミックEQで-2dB削っています。
ベースはSpireの有料プリセット「Nhato Spire Essentials」の「28.BS FENDER」です。
プラグインはWAVES Renaissance Bassの「Synth_Bass_RBass」で倍音を足し、
Kickstart2でキックをトリガーにサイドチェインを入れています。
キックはVengeance Essential Clubsounds Vol.4(以下「VEC4」)の「Trance Kicks 14」でピッチを-1にしています。
プラグインは120Hzを-2dBで抜けを良くし、5.3kHzくらいを広く1dBブーストしてアタック感を強めています。
スネアは
①Sounds of KSHMR Vol.3の「KSHMR_Tight_Snare_10_B」
②Vengeance EDM Essentials Vol.1の013
をレイヤーしています。
プラグインについては両方とも、
~80hzローカット、
WAVESのPuigTec EQP-1Aで100Hzをブースト、
MAutoAlignで位相ズレを防止、
センドでValhalla VintageVerbの「Snare Hall」をやや強めにかけています。
シンバルはVEC4の「VEC4 Crush 10」でプラグインは入れていません。
ハイハットループはVEC4のHihat Percussion Loopsの「VEC4 Loops 211」です。
プラグインはWIDERで60%に広げ、
700Hzを-1dB、
Kickstart2でキックをトリガーにサイドチェインを入れています。
また、ドラムをまとめたBUSトラックを作成し、Shadow Hills Mastering Compressor Class AをSIDECHAINをIN、DISCRETEをレシオ2:1、アタック10、リリース.1でリダクション0.5dBで入れています。
イントロとAメロ初めにコーンと鳴っているのはSYNTHMASTER ONEの「BEL Aethera Bell KApro」です。
プラグインはSaturation Knobを0.7、
700Hz、890Hzをそれぞれ狭く2dBブーストしています。
サビで左右にパンを動かして鳴っているキラキラしたアルペジオはSylenth1で、波形をPulse、アルペジエーターをUp/Down2でOCTAVEを2、DELAYとREVERBを深めにかけたものです。
プラグインは入れていません。
2番Aメロの「天上の世界」の部分で鳴っている鐘はXpand!2の「018Bells」-「Church Bells Loop」です。
プラグインはValhalla VintageVerbの「Bright Hall」をMIX70%、
ボーカルと被る400HzをダイナミックEQで-2dB削っています。
マスターのボリュームについて、AメロBメロは-1dBになるようオートメーションをかけています。
マスタリングについては、
Shadow Hills Mastering Compressor Class AでOPTICAL、DISCRETE(レシオ2:1、アタック30、リリース.5)ともに最大0.5dBくらいになるよう薄くかけ、
WAVESのPuigTec EQP-1Aで4kをBANDWIDTH6くらいでブースト、
音のこもる400Hzを-0.4dB削って、
Ozone11のマスターアシスタントを入れています。
Ozone11について、ターゲットをリファレンス曲にして、
EQは~50Hzが-0.3dB、250Hz-が-0.4dB、2.6kHzが+0.4dB、15kHz~が+0.4dB、
ClarityでTiltを-1dB、
マキシマイザーは-10LUFS
に変更しています。
マキシマイザーについて本当は-10.5LUFSくらいにしたかったはずなのですが、色々設定し直しているうちに勘違いして-10LUFSにしてしまいました。
動画化
歌詞と並行して作っていたのですが、オチに合わせて「桜の咲いている季節にいる『君』」という本当はあり得ない光景にしています。
プロンプトに「blurry」と入れることでイイ感じのぼかしが入っています。
モデルはAnything V5で、プロンプトは以下のとおりです。
プロンプト
(masterpiece, best quality:1.2), 1 girl, (look back), (hospital gown), black hair, kind smile, (a face in sad:1.2), half-open eyes, high detailed eyes, Cherry tree, ephemeral atmosphere, Pale colors, blurry, highres
ネガティブプロンプト
(negative_hand-neg:1.2), nsfw, (worst quality)+, (low quality)+, (normal quality)+, (multiple arms:1.2), text, missing arms, mutated hands, malformation, bad anatomy, bad hands, error, missing fingers, extra digit, fewer digits, cropped, watermark, username, artist name, bushy eyebrows
また、間奏部分について、長いのに何も入れないわけには行かないので、スケッチブックに絵を描いているという描写に合わせて線画やスケッチになるようなエフェクトを入れています。
元ネタの小説では主人公も絵が描けるので、なんだかんだ仲良くなってスケッチしたんだろうなぁみたいな雰囲気になったと思います。
最後に
詞先での作成はいつも以上に産みの苦しみが辛かったですが、その分満足のいく出来になりました。
「まさにこういうのが作りたかったし聴きたかった」というのを作れた手応えがあります。
視聴回数的にはそんなに伸びなさそうという感じはありますが、いつもならアナリティクスにかじりついて張り付くほど数字が気になるのに全然そういう気にならないので、自分が満足出来る作品になれば他人の評価は気にならなくなるんだなというのを実感しています。