オリジナル曲「Bitter Sweet Bitter」について
構想・歌詞
Beatmania IIDX 26 Rootageに収録された、猫叉Masterさんと劇団レコードさん合作の「Afterimage d'automne」がプレイしていた当時物凄く好きで、こういうオシャレでエモい曲作れたらカッコイイよなぁ~と思っていました。
最近改めて聴いたらやっぱイイわ~~~と思ったので、無謀だけどジャズワルツに挑戦してみるか!と思い立ちました。
作り方については下記サイトが分かりやすかったので参考にしました。
ジャズなんて普段全然聴かないし、打ち込みでまともに作れるのかも怪しいし、3拍子で作曲したこともないので何もかも初めて尽くしでしたが、「Afterimage d'automne」を聴きまくってイメージを膨らませながら手探りで作るのはかなり刺激的で楽しかったです。
とりあえずコード進行を決めてしまおうと思い、猫叉Masterさんの曲の雰囲気が凄く好きなのでいくつか参考にして取り入れてみました。
改めて耳コピで研究してみるとエモの塊か?というほど美しいコード進行ばかりで、今回下属調転調を取り入れたのもこれがきっかけでした。
そこからメロディをどうにか絞り出しました。
特にリズムについて、ジャズではスウィング(三連符)が大事なのですがいきなり三連符で作るのは難しかったので、まず8分音符単位で作ってから長さを三連符に合うように整えるというやり方で作りました。
編曲は一番面倒臭そうなので先に作詞することにしたのですが、ジャズと聞いて最初にイメージしたのはコーヒーでした。
自分はコーヒーがとにかく好きで、その割にカフェインにはあまり強くないのでうっかり自制しないとカフェイン依存症になるほどなのですが、休日は気分転換とアイデア出しを兼ねて行きつけのコーヒーショップに散歩がてら行くのが好きです。
なのでコーヒーに関する曲は前から作ってみたかったので、今回これをメインテーマにすることにしました。
余談ですが、コーヒーショップに対する解像度を深めようと思って「バリスタ」という漫画を読んだのですが、接客業としてのバリスタのプロ意識や熱をどこまでも感じる良作で、読むだけで自然とコーヒーにまつわるありとあらゆることに詳しくなれるので、コーヒー好きな方にはオススメです。
これ以外にも参考のためにコーヒーについて歌った曲の歌詞を一通り調べてみるとまあ見事なまでにラブソングばかりで、使えそうな単語やイメージを書き出していくとコーヒーショップの店員とのラブソングのイメージが浮かんできたので、ちゃんとしたラブソングは「White Resolution」以来久々ですが書いてみることにしました。
その結果、またもバリバリ陰キャなラブ(にすら至らない)ソングになりました。
恋愛経験が無いのと恋愛に価値を見出だせないせいで、もう基本的に別れとかの成就しないラブソングしか書けない身体になっているのだと思います。
「君」の台詞を見ると全部店員として当たり前のものでしかないのに、勝手に惚れた割に何も行動を移そうともせずに店員と客という浅い関係で満足した気になって、そのうちにチャンスを逃す、という最高に陰キャ丸出しの歌詞が書けて我ながら会心の出来だと思っています。
今回メロディとコード進行がとても気に入っていたので、歌詞も満足出来るものが作れて良かったです。
内容は完全にフィクションなのですが、嘘に真実を入れると信憑性が増すように、カフェインが効き過ぎることと、転勤族なためある程度いた街でもいずれ離れなくてはならないことは事実なので取り入れてみました。
また、リアリティのある文章を書くには五感を通した描写を入れるのがコツ、という記事を最近読んだので、今回意識してみました。
編曲について、ただでさえ生っぽい打ち込みが苦手なので楽器数を絞ろうと思い、ピアノトリオ(+アコーディオン)の構成にしました。
また、イントロを作ってみたらあまりにも掴みが弱いのと、毎回Youtubeのアナリティクスを見る限りイントロで視聴を止める割合が多いので、最近の曲にありがちなAメロから始まる構成にしました。
曲の構成について、ジャズでは本来イントロ~テーマ~アドリブ〜テーマ〜アウトロというのが基本なのですが、いくつか曲を聴いてみてもあまりピンとこなくて上手く作れる気がしなかったので、結局ポップスと同じようにAメロBメロサビで作ることにしました。
ガチガチのジャズを作りたい訳でもないしジャズ風になれば良いか!くらいの気持ちです。
その割にはサビの盛り上がりがちょっと弱いかなと思いますが、何も始まらないまま終わる歌詞には合っているかなという点で作品としてはある意味完成しているとも感じます。
曲名について、「酸いも甘いも噛み分けて」からbitterとsweetが入ったものが良いなーと考えて、そういえばcrossbeats REV.に収録されていた「Blue Destiny Blue」という曲名が好きだったなと思って同じ構成にしました。
でもこれってスゲーありがちじゃないか?思いっきり被るんじゃないか?と思って調べてみたところ、「sweet, bitter sweet」と「Bitter Bitter Sweet」はありましたが幸い被りは無かったのでこれで行くことにしました。
コード進行
キーはAメロがFメジャー、BメロでBbメジャーに下属調転調して間奏1でFメジャーに戻り、ラストはBメジャーに半音上転調しています。
BPMは200です。
Aメロ
Dm9 - Dm9 - FM7/Bb - Am7b9 - Gm9 - C9 - FM9 - A7b9
Dm9 - Dm9 - FM7/Bb - Am7b9 - Gm9 - Am7b9 - Dm7 - Dm7
(2ループ目と2番はラストD7)
Bメロ
EbM9 - EbM9 - F9 - BbM9 - EbM9 - EbM9 - Gm9 - Gm9
Cm9 - Cm9 - Gm9 - Gm9 - C9 - C9 - D7sus4 - D7
サビ
Gm9 - Cm9 - F9 - BbM9 - Cm9 - BbM9 - Am7b9 - D7
Gm9 - Cm9 - F9 - BbM9 - Cm9 - Dm7 - G7sus4 - G
間奏1
Gm9 - C7 - FM9 - D9 - Gm9 - Am7 - Dm7 - G7 - Dm7 - G7
間奏2
EbM9 - Adim7 - D9 - Gm9 - Fm7 - Bb7b9 の繰り返し
転調後サビ
G#m9 - C#m9 - F#9 - BM9 - C#m9 - BM9 - A#m7b9 - D#7
G#m9 - C#m9 - F#9 - BM9 - C#m9 -D#m7 - G#7sus4 - G#
(締めはEM9)
音源・プラグイン
ボーカルは初音ミクSoftとDarkを半分ずつクロスシンセシスしたものです。
プラグインは、
EQで~200Hzでローカットした上でNectar4を入れ、
CLA-2Aで3dBリダクション、
PuigTec EQP-1Aで3kHzをブースト、
Saturation Knobを0.4、
RX10 De-essでディエッサー、
EQで低音がこもる340Hz辺りを-3dB、不快な1.6kHzを-2dB、シャリシャリする感じがするので4.5kHzを-1.5dB、高音補強のため5kHz~を+1.5dB、
Vocal DoublerをSeparation、Variation、Amount各40%、
モノラルディレイを189ms・フィードバック25・ハイパス200ローパス3k・WET3%でインサート、
最後にVocal Riderで均しています。
また、センドでValhalla VintageVerbの「Vocal Plate」でDECAY 1.00s、PREDERAY 50msに調整して、~300と5k~をカットしています。
開幕のブレス音は初音ミクV4Xに付属しているもので、Darkのbr04を使用しています。
ピアノはAddictive Keysの「Jazzish」です。
プラグインは、
PuigTec EQP-1Aで3kHzをブースト、
EQで~100Hzを-2dB、ボーカルやアコーディオンと被る440Hzと800HzをダイナミックEQで-2dB、
Universal AudioのLexicon 224 Digital Reverbの「Ballad Vox Plate」をWET45で入れています。
ベースはEZbassの「EZbass Vintage」-「Warm Vintage」です。
プラグインは、
PuigTec EQP-1Aで100Hzをブースト、
PuigTec MEQ-5で1kHzをブースト、
EQで~30Hzをローカット、キックと被る70HzをダイナミックEQで-3dB、アコーディオンと被る200Hzと530HzをダイナミックEQで-3dB、ボーカルと被る300HzをダイナミックEQで-2dB、
CLA-2Aで3dBリダクション、
Ozone11 Imagerで~60Hzをモノラルにして、
Kickstart2でキックをトリガーにサイドチェインを入れています。
アコーディオンはBig Fish AudioのCeltic Instrumentsのもので、そのままだと打ち込み臭が凄いので、ボリュームオートメーションですぐ減衰したあと段々大きくなるようにしています(本当はエクスプレッションを編集すべきですが弄り方が分からなかったので)。
打ち込み方は以下のサイト・動画を参考にしました。
プラグインは、
EQで~180Hzをローカット、キンキンする3kHzと6.2kHzを-4dB、
Lexicon 224 Digital Reverbの「Ballad Vox Plate」をWET27で入れています。
ドラムはAddictive Drums 2の「Modern Jazz Sticks」のプリセット「Clean w Comp」です。
打ち込みはmidiパターンを貼り付けて3拍子に合わせて編集しています。
また、今回は以下の記事を参考にして音源内部での加工を中心に行って、プラグインはほぼ入れていません(Overheadのみキンキンする3.2kHzと6.4kHzを-4dB)。
マスタリングについては、
Shadow Hills Mastering Compressor Class AでOPTICAL、DISCRETE(レシオ2:1、アタック30、リリース.25)ともに最大0.5dBくらいになるよう薄くかけ、
JazzをターゲットにしてOzone11のマスターアシスタントを入れています。
マキシマイザーの音圧は、ダイナミクスが適度に残るよう本当にピークの大きいところにのみリダクションがかかる程度の-12LUFSにして、Output Levelを-1.00にしてTrue Peakをオンにしています。
動画化
歌詞のまんまにコーヒーショップの黒髪のお姉さんというイメージで生成しました。
モデルはAnything V5で、プロンプトは以下のとおりです。
プロンプト
((masterpiece, best quality:1.2)), 1 girl, waitress, apron, coffee shop, long hair, kind smile, sepia tone, upper body, from side, highres
ネガティブプロンプト
(negative_hand-neg), (worst quality)+, (low quality)+, ((multiple arms)), (multiple legs), monochrome, watermark, username, blurry, artist name, bushy eyebrows
また、今回BPMが早くて今までのカラオケ字幕形式では追いつかないので、今どきありがちな黒地に歌詞がパッパッと出る形にしました。
最後に
今回は何もかも初めての挑戦でしたが、最終的に自分の中で納得のいく曲になったという手応えがあります。
編曲はあまり自信がないですが、作詞・作曲が久々に自分でも気に入る出来になったのが嬉しいです。
新しいジャンルに挑戦するのは毎回凄く楽しいのですが、逆に言うと一度作ったことのあるジャンルが上手く作れないことが多いので、引き出しをもっと増やさないといけないなと感じます。
ブルーピリオドで、以前上手く行った絵と同じ感覚で作った結果以前の作品の焼き回しでしかないものが出来てしまって失敗する話がありますが、直近で作った「Lilium」がまさにそういう状態だったなと感じます。
ジャンルに限らず何か新しい要素に挑戦する、というのは毎回意識する必要があると改めて思いました。
余談ですが、「コーヒーはブラックで飲んでこそ大人」という考え方が自分は大嫌いで、そういう人に限って缶コーヒーや安いコーヒーしか飲んだことがなさそうなのがまた腹が立ちます。
コーヒーは格好つけるために飲むものではなくあくまで美味しく飲むためのものであって、自分にあった飲み方で好きに砂糖やミルクを入れて良いと思います。
(むしろ安い泥水みたいなコーヒーこそ砂糖とミルクを入れないと飲めたものじゃないので)
※もちろん浅煎りでフルーティーな豆のもの等の、ブラックで飲む方が美味しいコーヒーもあります。
どうしても甘いものが苦手なら別ですが、ちゃんとしたコーヒーショップでエスプレッソにスプーン山ほどの砂糖を入れて飲む、という経験を一度してみると世界が変わるのでオススメです。