オリジナル曲「改悛のドロッセルバート」について
構想・歌詞
Ariabl'eyeSというバンドが凄く好きで、以前からこういう曲を自分も作ってみたい!と思っていました。
でも打ち込みオンリーで作るのは厳しいかなぁ・・・と思って半ば諦めていたのですが、SESSION GUITARIST – ELECTRIC SUNBURST DELUXEというギター音源があることを知り、しかもちょうどセールをやっていたので、これなら作れるのでは?と思ったので作ってみることにしました。
この音源はコードを押さえるだけでパターンに応じた演奏が出来る、というものです。
今までギターを取り入れた曲はとにかく打ち込み臭さが気になっていたのですが、これならだいぶマシに聴こえたので編曲面での問題はとりあえず解決しました。
Ariabl'eyeSらしさを表現するにあたって、
[耽美幻想シンフォニア]をコンセプトに、様々な「蒼」の世界を表現する。(公式サイトより)
というのがあるのですが、具体的にどういう要素があれば表現出来るのかを考えながら改めて今までの曲を聴き込んで分析し、以下の要素が特徴的だなと感じました。
キャッチーなメロディとコード進行
高音多め(AメロBメロでも)のメロディと高い歌唱力
歌詞に三人称視点の語り部的な部分が多く、表現が耽美的
BPMは全体的に速め、ギターとドラムは割とシンプルで、ストリングスやクワイアやチェンバロ(ハープシコード)で耽美的な雰囲気を表現している
1番目と3番目については自分の曲でもよく取り入れている(というかAriabl'eyeSから影響を受けている)要素で、チェンバロについては以前から使ってみたい楽器だったので、特に意識してみました。
また、歌唱力について、以前Synthesizer Vを購入したものの使っていなかったので、今回使ってみることにしました。
昨今はVOCALOID以外にも様々な歌声合成ソフトがありますが、中でもSynthesizer Vは人間らしい歌唱力という点で群を抜いていると感じます。
歌詞について、Ariabl'eyeSのアルバムの「冥鳴フィアンサイユ」でブルガリアの昔話の「吸血鬼の花よめ」を題材にしていたのが印象的だったので、童話を題材にしてみることにしました。
定番に王子と姫が出てくるようなもので、出来ればそこそこマイナーなものを使いたいなーと調べた結果、グリム童話の「つぐみのひげの王さま」がイイ感じなので採用しました。
童話を調べるにあたっては以下のサイトが参考になりました。
また、これ以外にも図書館に行って実際の児童書を読み漁ってみましたが、やはりさすがに表現や話の流れが分かりやすいので勉強になりました。
個人的には今回の歌詞は自分でもかなり好きで、良い出来になったと思っています。
全体的に元ネタをイイ感じに要約出来たというのもありますが、特にサビの終わりについては「~なのでした」と語り部目線にしたいなと作った結果、1番サビでは姫を女呼ばわりしていたのにラストのサビでは褒め称えているのが最高にイイ性格をしていて気に入っています。
ただラストサビの「悪い日々は過ぎ去った」という表現は直訳っぽ過ぎてもうちょっとどうにかならなかったかなと思いました。
元ネタでも「die bösen Tage sind vorüber(独語)」「the evil days are past(英語)」なので上手い表現が思いつきませんでした。まあでもこれはこれで童話っぽい感じもします。
曲名については「漢字+カタカナ」にしたいなと思って考えてみました。
カタカナ部分についてはつぐみ髭のドイツ語訳「Drosselbart」にしましたが、漢字の部分がなかなか思いつかなくて、結局この話のテーマである「改悛」にしたものの、もっとカッコ良いのが無かったかなーというのが若干心残りです。
コード進行
キーはAbメジャー(ラストサビでAメジャーに転調)で、BPMは165です。
Gメジャーが一番作り慣れているのですが、Ariabl'eyeSの曲はGメジャーの曲が結構あるので、被らないようキーをずらしました。
イントロ(前半)
Fm - Db - Eb - Ab - Db - Eb - Fsus4 - F
イントロ(後半)・間奏
Fm - Db - Eb - Ab - Db - Bbm - Gm - C
Fm - Bbm- Eb - Ab - Db - Bbm - Gm - C
Aメロ
Fm - Cm - Db - Ab - Bbm - Eb - Ab - C
Bメロ
Db - Eb- Edim - Fm - Db - Ddim - Eb- C
サビ
Fm - Db - Eb - Ab - Bbm - Cm - Gm - C
Fm7 - DbM7 - Eb7 - Ab - Adim - Bbm - Eb - Cm - Fm - Bbm - Cm - Fm - C
音源・プラグイン
ボーカルはSynthesizer Vの小春六花です。
調声は以下の動画を参考にしました。
調声は歌詞を打ち込んだ後「選択したノートを分割してメロディを調整」を実行し、ボーカルスタイルでEmotional60~80%、テンション0.7~0.8にしてピッチやビブラート、ブレス、トーンシフトを適宜調整しました。
プラグインについては、
~200Hzくらいでローカット、
Nectar4を入れてAuto-Levelとディレイ・リバーブを切り、
CLA-2Aで2~3dBリダクション、
WAVESのPuigTec EQP-1Aで3kをBANDWIDTH6くらいにしてブースト、
RX10 De-essでディエッサー、
キンキンする1.13kHzを-1dB、
モノラルディレイを189ms・フィードバック25・ハイパス200ローパス3k・WET8%でインサート、
Vocal DoublerをSeparation・Variation・Amount40%、
最後にVocal Riderで均しています。
また、センドにSaturation Knobを0.5、
Valhalla VintageVerbの「Vocal Plate」でDECAY 1.00s、PREDERAY 50msに調整して、~300と8k~をカット、
元のトラックをトリガーにアタック最速・リリース30msくらいでサイドチェインコンプを入れてダッキングリバーブにしています。
ハモリは3度下ハモです。
プラグインはローカットとNectar4はメインと同じ、
RX10 De-essでディエッサー、
~260Hzを-4dBローシェルフ、560Hzを-4dB、1.05khを-1.5dB、5kHz~を-1dBローシェルフ・13kHz~をハイカットして音の芯を削り、
Renaissance Axxでアタック0.00にしてリダクション6dBくらい潰しています。
なお、当初ダブラーでダブリングさせようと思ったら上手く機能しなかったので、パンをLR60で左右に複製し、片方のトラックにDaw付属のフランジャーをMIX5%くらいと22msのディレイをかけてダブリングしています。
また、センドでValhalla VintageVerbの「Vocal Plate」を~200と8k~カットで薄めにかけています。
メインとハモリでボーカルのBUSトラックを作成し、Shadow Hills Mastering Compressor Class AをDISCRETEをレシオ2:1、アタック10、リリース.25でリダクション0.5dBで入れています。
クラビネット(ハープシコード)はCinesamplesのCineHarpsichordです。
プラグインについては、
~150dBローカット(イントロ前半ではオフ)、ボーカルと被る400Hzと870Hzに-2dBダイナミックEQ、
FireSpacerでボーカルを対象にAMOUNT30、
スネアと被る200Hzに-1.5dBダイナミックEQをかけています。
また、センドでValhalla VintageVerbの「Bright Hall」を~200と8k~カットでかけています。
ギターはSESSION GUITARIST – ELECTRIC SUNBURST DELUXEで、トラックを複製してパンをLRいっぱいに振ってダブリングしています。
プラグインについては、
ボーカルと被る380Hzに-2dBダイナミックEQ、
CLA-3Aで1~3dBリダクション、
FireSpacerでボーカルを対象にAMOUNT10、
片方のトラックにDaw付属のフランジャーをMIX7%くらいと24msのディレイをかけています。
また、左右をまとめたBUSトラックを作成し、
Waves SSL G-Master Buss Compressorでレシオ2:1、アタック10、リリース.1でリダクション1dB、
スネアと被る200Hzに-2dBダイナミックEQ、
リニアフェイズEQでMidの~200Hzローカットと5.5kHz~をハイカット、Sideの~130Hzローカットと8kHz~をハイカット、
センドでValhalla VintageVerbの「Exciting Snare Room」を~200と8k~カットでかけています。
ベースはEZbassのプリセット「Dinstorted Metal Pick」です。
プラグインについては、
Renaissance Bassの「Basic Setup」のプリセット、
~20Hzをローカット、60Hzを-1dB、ボーカルと被る420Hzに-2dBダイナミックEQ、1.5Hzを+1.5dB、
CLA-2Aで1dBリダクション、
FireSpacerでキックを対象にAMOUNT30で入れています。
ドラムはAddictive Drums 2のMETALから「Crispy Clean」のプリセットで、スネアのPITCHを2.6stまで上げています。
プラグインについて、
キックはSubmarineの「Heavy Kick」をMIX20、
~20Hzをローカット、120Hzを-1dB、5.3kHzを+1dB、
PuigTec EQP-1Aで60をブーストしています。
スネアはPuigTec MEQ5で200と700をブースト、
~20Hzをローカット、5.2kHzを+1dB
CLA-3Aで3dBくらいリダクションしています。
ハイハットは~500Hzをローカット、
タムは~20Hzをローカット、
オーバーヘッドは~20Hzをローカットと680Hzを中心に広めに-1.5dBしています。
また、ドラムをまとめたBUSトラックを作成し、
Waves SSL G-Master Buss Compressorでレシオ4:1、アタック30、リリース.3でリダクション1~2dB、
PuigTec EQP-1Aで60をブーストと10kをBANDWIDTH8くらいでブースト、
イメージャーで~80Hzを狭め、1.1k~8kHzと8kHz~を広げています。
ストリングスはVIENNA CHAMBER STRINGSの「Chamber Strings VSL Preset」で、イントロ前半でピチカート、後半でパンをLRに振り切って複製したものでスタッカート、AメロBメロでパンをLいっぱいでトレモロを演奏しています(それぞれトラックを分けています)。
プラグインについて、
ピチカートはSaturation Knobを1.5、
CLA-2Aで1dBリダクション、
センドでValhalla VintageVerbの「Bright Hall」を~200と8k~カットでかけています。
スタッカートはBUSトラックにまとめて、Waves SSL G-Master Buss Compressorでレシオ2:1、アタック10、リリース.3でリダクション1dB、
Saturation Knobを1.3、
キンキンする1.6kHzと3.3kHzを-2dB削っています。
トレモロはセンドでValhalla VintageVerbの「Bright Hall」を~200と8k~カットでかけています。
マスタリングについては、
Shadow Hills Mastering Compressor Class AをDISCRETEをレシオ2:1、アタック30、リリース.25でリダクション0.5dBで入れて、
PuigTec EQP-1AでGainのみ-1.1にして(通すだけで倍音が増えるので)、
Ozone11のマスターアシスタントを入れています。
Ozone11について、ClarityのReleaseを180に上げ、マキシマイザーはTrue Peakを-1.00にして音圧を-10LUFSにしています。
当初はマキシマイザーを2段がけして音圧マシマシにしようと思ったのですが、スピーカーでは良く聴こえるものの高級なイヤホンで聴くと音像が狭すぎて聴き疲れるので、ある程度各楽器の分離感が残るくらいの音圧にしました。
また、今回ミックス・マスタリングは以下の動画を参考にしました。
動画化
何となく赤いドレスというイメージで、終盤のシーンの表情という感じにしました。
モデルはAnything V4.5で、プロンプトは以下のとおりです。
プロンプト
(masterpiece, best quality1.2), 1 girl, princess, red gorgeous gown, (a face in sad1.2), kind smile, tears, blonde hair, blue eyes, (ceremony), tiara, cleavage, highres
ネガティブプロンプト
negative_hand-neg, (worst quality), (low quality), (multiple arms:1.2), monochrome, bad anatomy, watermark, username, artist name, bushy eyebrows
最後に
今回、歌は合成ソフトでギターとドラムはソフト音源のプリセットのパターンと、歌も楽器も出来ないし他人に依頼するのもはばかられる陰キャでもロック作りたきゃ作って良いよなァ!?という気概で作りました。
実際に演奏出来る人が聴くとだいぶお粗末な出来だと思いますが、正直聴かせたいのは歌とメロディとコード進行なとこがあって、編曲はそれらを引き立てるための添え物という意識が毎回あります。
ただやはり憧れの曲を目指して作るというのはとても楽しく、個人的には割と寄せて作ることが出来たと感じているので、今後も経験の薄いジャンルでも気後れせずに挑戦していきたいと思います。