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ユルスナール「火」レビュー

1936年刊行の散文詩集。

短い本文に箴言をいくつか足すというスタイルの初期作品。
発表は「アレクシス」の後、「東方綺譚」の前で、ユルスナールがユルスナールになりかかってきた頃の小品といった印象。
正直しんどい読書でした。
作中時折見え隠れする「東方綺譚」や「ハドリアヌス帝の回想」の萌芽を楽しむ以外、何が何やらさっぱり分からずに一応読了。
神話を換骨奪胎し現代と融合するといったある種の遊び心は、晩年の作風に一切見られないところを考えると、本作は習作といっていいでしょう。
箴言は確かにユルスナールらしいところも多々あったけど、やや狙ってる感もあり、ちょっとサムい感じもありました。
「とどめの一撃」のように、心に深く突き刺さるような一句というのはなかったです。

僕はユルスナールを理解することを終生の読書目標に掲げているので我慢して読みましたが、作者に多少興味がある程度ならスルーしてかまいません。
再読もたぶんしないだろうなー……

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