「乱暴者」(ワイルドワン)レビュー
監督
キャスト
ジョニー:マーロン・ブランド
キャシー:メアリー・マーフィ
ハリー:ロバート・キース
チノ:リー・マーヴィン
保安官:ジェイ・C・フリッペン
ミルドレッド:ペギー・メイリー
前提
1953年、第二次世界大戦の戦勝からわずか8年後のアメリカ。
社会には刺激を求めてバイクを乗り回し、酒を飲み暴れる不良たちが横行。
そんな若者文化を捉えた作品で、本作にてバイク、革ジャン、ジーンズが不良の代名詞となったとか。
今でもファッションやバイクが好きな人が必見の映画となっている。
主演のマーロン・ブランドは演じるにあたり、半年間の間本物のバイカーたちと生活を共にして役作りをしたという逸話がある。
感想
さすがに72年前の映画なので正直全然おもしろくない。
強いて言えば、マーロン・ブランドの匂い立つような色気が堪能できるというぐらい。
不良群像劇の元祖に興味がなければ別に観る必要はない。
ただ、ラストの主人公の笑顔がとてもよかった。
途中で厭きたら早送りしてラストだけ観てほしい。
作品の価値
一方本作にはある種の資料映像としての価値が高い。
まずファッション。
そもそも作業着だったデニム衣料がファッションアイコンとして生まれ変わったのが1950年代とされていて、本作もその一助を担ったらしい。
主演のマーロン・ブランドがはいているのはリーバイスの501XXだとか(カスタムしてテーパーをきつくしている)。
ここからジーンズは不良の象徴と言われるようになった。
また、そもそも丈の長いものが多かった革のコートをバイクに乗りやすくするためにわざわざ短く切ったのがいわゆる革ジャンで、これも当時の不良のアイコン。
その他エンジニアブーツやミリタリージャケットなど、様々なバイクファッションが観られるのも本作の特徴。
今観てもかっこいいのがなんか不思議。
ただし若干野暮ったく見えるけどそれは仕方ないか…
また、個人的には全く分からないのだが、この時代はまだアメリカンバイク=ハーレーではなかったらしく、いろんな種類のバイクが登場する。
バイク好きにもたまらない映像となっているらしい。
音楽
本作を観て、革ジャンにジーンズの不良青年たちがジャズに合わせて踊っているシーンなどに違和感を覚えた方も多いかもしれない。
『いや、バイカーはロックやろ!』と思うかもしれないが、実は公開時の1953年にはまだロックは生まれていない。
チャック・ベリーの「Johnny B Good」は1958年リリース、ビートルズのデビューは1960年。
53年といえばジャズ全盛で、まだチャーリー・パーカーも生きていた時代。
バイカーたちがジャズで踊っているのは時代的にはごく自然なこと。
とはいえ今に観るとやっぱりちょっと不自然で、バイカーとジャズの組み合わせに特に化学反応は起きていない。
BGMもやたらメロウだったりするし…
影響
本作の影響は言わずもがな。
バイク×革ジャン×ジーンズの組み合わせは今でも王道として生きている。
あと、戦争末期ぐらいに生まれた人は本作を思春期に観ていることになるので、それはそれは影響を受けたはず。
三島由紀夫が美輪明宏の手引きでジーンズに革ジャンを着るようになり祖母が卒倒しかけたという逸話は有名だが、三島は1925年生まれで本作公開当時は18歳と思春期まっただ中。
あの三島もきっと影響を受けたのだろう。
戦前戦後生まれぐらいのおじいちゃんがやたら革ジャンやバイクが好きなのは本作の影響だと思われる。