秘密の先には救済?!本屋大賞受賞作『かがみの孤城・下』を読みました。【ネタバレあり】
『かがみの孤城』を読み終わりました。
分厚い本でしたが、引き込まれてサクサク読めました。
上巻では集められた中学生の共通点で共感があり
下巻では集められた中学生の相違点で驚きがありました。
下巻の感想を書くので、【ネタバレ】になってしまいます。
未読の方は注意をしてください。
あらすじ
学校での居場所をなくし、閉じこもっていた“こころ”の目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。
輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。
そこには“こころ”を含め、似た境遇の7人が集められていた。
なぜこの7人が、なぜこの場所に――
すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。
生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。
本屋大賞受賞ほか、圧倒的支持を受け堂々8冠のベストセラー。(出典:Amazon)
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上巻の感想を書いたときは、「秘密」の魅力を書きました。
秘密って、孤独だけどたのしい。
秘密って、きらいから守ってくれる。
秘密って、仲間であることをつよくする。
下巻では、「救済」の魅力を感じました。
本書では、「救済」という言葉で説明はありません。
しかし、私にはキャラの一人一人の悩みが軽くなったように感じて
お城に来てから、救われたのかと思いました。
「なぜ」にこたえられる物語はすべて救済になる
下巻では、怒涛の伏線回収がありました。
回収があるということは、あらかじめ、伏線を張っている必要があります。
なぜ、鍵がそこにあるのか。
なぜ、孤城がつくられたのか。
なぜ、この7人が選ばれたのか。
なぜ、現実世界で会えないのか。
なぜ、話が嚙み合わない部分があるのか。
なぜ、オオカミ様はお面をつけているのか。
なぜ、3月30日に城が閉まるのか。
上述したすべての謎が解けます。
「そうゆうことだったのか!」と驚きで、150ページは一気読みしました。
特によかったのは、キャラ全員を平等に扱わず、特別なキャラを紛れ込んでいたことです。このバランス感覚がすごいなって思いました。最後にリオンが城のことわりに気づいて、思いの丈を話すシーンがとても好きです。
いつでもチャンスなんてない。
だから、最後の機会でもいいたいことがいえたリオンには
最大の救済があったかと思います。
「善処する」
ぶっきらぼうな一言に見えますが、
オオカミ様がいえる最大の譲歩で、最大の希望でした。
終わらないことに希望が持てました。
この一言に私も救われました。
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本書を面白くしていたのは、時間軸がずれていたことでした。
別の時代に生き、同じ中学に通う、不登校の生徒。
いつの時代にも、集団からはぐれてしまう人がいて、
それぞれに物語がありました。
こころは驚いてしまう。
スバルからは受験勉強している雰囲気を感じたことがない。
「───そんな話‥‥‥、してた?」
「してなかったっけ?」(中略)
スバルが悪いわけじゃない。けれど、わかる。焦るし、怖い。これから自分がどうなるか、いつまでこのままかわからないのに、前に進んでいる人を見ると、ただそれだけで無性に胸が苦しくなる。(p138~139)
時代がかわっても、同じような思いをするんだ。
でも、時間が経つと、忘れてしまう。
思い出せた方がいいのでしょうか。。。
時間軸をずらした物語はたくさんあります。
重ねる/速さを変える/逆行する/順番を変える/組み替える/
それぞれに面白さがあって、本書も時間軸トリックを楽しめました。
もし、自分が小説家になったら、
「なぜ」にこたえられる物語を書き足したい
って、思いました。
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。