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簡単なカウンセリングの方法と練習法
授業でカウンセリングの初歩的な練習をするときに使っているプリントの内容です。学生の声を反映して毎年ちょこちょこ直してます。
A3用紙一枚に収めるためにかなりいろいろ省いたりしてます。御必要に応じて付け足したり、いろいろ御修正なさったりして御自由に御使いください。
(※文中の「クライエント」は悩みがあって相談に来た人という意味で、「カウンセラー」はその相談を受けている人という意味です)
傾聴技法(話をよく聴く)練習①~⑨
① 「かかわり行動」の練習
※基本姿勢:相手に顔と体を向け、やや前傾、椅子に座っている場合は足を組まずにまっすぐ下ろし、つま先を相手に向ける、自然な笑顔。相手の表情や言葉等から、自分の目線や姿勢、声の調子や座る位置が相手にとって心地よいものになっているかどうか感じ取り(あるいは直接訊いて)、基本姿勢をベースに調節する(基本姿勢のように顔と体を向けられると緊張して話せないクライエントの場合は、少し横を向いたりしましょう)。相手の話を聴くに徹し「聴いていますよ」というサイン(うなずき等)を出す。
② 「観察」の練習(感情の反射を含む)
相手の表情や動き、姿勢、呼吸、服装、髪型、顔色…等々を、五感だけでなく全身で感じとる。
呼吸を合わせたり、しぐさをさりげなく真似したりして自分の心身の状態を相手のそれに近づける努力をする。
感じ取ったことを伝えて確かめる、例「あなたは今、…という感情を感じていましたね?…(表情)や…(動き)からそう思いました。」等
違っていたら、やり直し。
③「 開かれた質問」(開かれた質問→傾聴→傾聴した内容をもとに開かれた質問→傾聴…を繰り返す)
例
「今日はどうされました?」「どんなことがあったのですか?」(事柄・具体的エピソード)
「そのときどんなことを考えていましたか?」(思考・捉え方・解釈)
「そのときどのように感じられましたか?」(捉え方・感情)
「それに対してあなたはどんなことをなさいましたか?」(行動)
「その結果どうなりましたか?」(結果)
「それはあなたにとってどんな意味をもちますか?」(意味) 等々
質問に対する答えは必ず傾聴(よく聴く)。そして傾聴した内容を伝え返して理解が正しいことを確かめた後に、理解した内容を基に質問をする。
例「○○についてもう少し詳しく話していただけますか?」等
※「なぜですか(理由)」はクライエントも分からないことが多く、『責められてる』と感じられることもあるので、なるべく使わない。
例えば「なぜそう思うのですか?」とは訊かず「そう思ったきっかけは何ですか?(事柄・具体的エピソード)」等と訊く。
④ 「閉ざされた質問」
開かれた質問に答えるのが心理的にきついクライエントには「はい」、「いいえ」あるいは一言で答えられる質問をいくつか訊いて話しやすい雰囲気を作る。
※(ただし、これは、クライアントが『話したい事があるけれども、なんとなく気後れしたりして話せない』という状態のときなどに、それを解消するための雰囲気作りです。
もしもクライアントが自ら望んで沈黙しているときは、無理に話をしようとはしないようにしましょう。カウンセリングにおいて、クライアントが沈黙しているときは、経験を言語化したり気持ちを整理したりする大事な時間かもしれないからです。
黙っていても居心地が良く、そしてクライエントが話したくなったらいつでも話始められるような雰囲気を作りましょう。
「いつでも話したくなったらなんでも自由に話してください、もちろん話したくないことは話さなくても大丈夫です。」と言葉で伝えるのが良い場合もあります。
クライエントをよく観察して臨機応変に関わり方を変えましょう。)
⑤ 「最小限の励まし」の練習
適度にうなずく、「それから?」「そして?」等と話を促す。相手の強調した言葉をそのまま繰り返す。
⑥ 「繰り返し」の練習
クライエント役が、今の自分の気持ち、今感じていること、今心配していること、自分の性格などについて話す。それをよく聴いてカウンセラー役は、「あなたは…なのですね?」等と繰り返す
※ネガティブなものは「あなたは…と感じている(思っている)のですね」等と繰り返すことで相手の言葉を否定せずに、その内容はクライエントがそう感じている(思っている)だけで事実ではないかもしれないと暗に示す。
例「あなたは御自分を暗い性格と感じているのですね」等と気持ちを受けとめつつ観察し、さらに話を聴くべきだと判断したら「どんなときにそう感じますか?(事柄・具体的エピソード)」等の質問で深堀りしたりして傾聴する(「なぜそう思うのですか?(理由)」は上記③の「開かれた質問」で述べた理由によりなるべく使わない)。
※ネガティブなことばかりが出てくるときは下記の積極技法の④「ほめる・認める」で解説している例外探しの質問やコーピングクエスチョン、スケーリングクエスチョンを活用してポジティブなものを話すきっかけをつくる。
⑦ 「言い換え・明確化」の練習
話をよく聴き、クライエント役が述べた言葉のうち、重要な言葉だけを残して、他の部分は別の言葉で表現する。
(このとき、言いたいことがより明確になるように表現する。これによりクライエントの問題や目標、選択肢等が、具体的な表現で言語化されるように意識する。
目標を明確化するときは、ミラクルクエスチョン、例えば『もしも今晩寝ている間に魔法のような力で全ての問題が解決したら、それに最初に気付くのは誰でしょうか?またどういったことからそれに気づくでしょうか』等も活用して、具体的にどうなったら目標達成かを言語化する。)。
⑧ 「感情の反射」の練習
傾聴や観察したことから、クライエント役の気持ちを推測し、「あなたは~という経験(事柄・具体的エピソード)をし、それがあなたには○○と思えた(思考・捉え方・解釈)、なので××(感情)と感じているのですね?」等と訊きながら、感情を表情やしぐさ等も使って映し返す。違っていたらまた傾聴しなおす。
(ここでクライエント自身が、「そうか、~という出来事を○○と解釈したから、××という感情になったんだ。このとき、もしも別の解釈をしたら、××という感情にならずにすんだかも…」と洞察できたなら、今後同じような状況になったとき、どのような解釈をしたら良いかを一緒に考えるという「認知行動療法」的な関わりをする。)
⑨ 「要約」の練習
クライエント役が話したことの、もっとも大事な点を要約して、「…(要約)…。あなたが言おうとしているのはこういうことですね?」等と訊いて確かめる。違っていたらまた傾聴しなおす。
※傾聴し理解できたと思ったことは伝え返して合っているか確かめる。「いいえ違います」と答えられたら「私はまだよく理解できていないようです。もう少しお話を聴かせてください。」等と話を続ける
(ベテランのカウンセラーでも、他者の心を100%理解するのは不可能ですので、多少は間違えて当然です。むしろ「分かったつもり」になるのがとても危険なので、慎重に傾聴して伝え返しましょう。また、違っていたらクライエントが「違います」と指摘できる雰囲気や信頼関係を作っておくのも大事です)。
※傾聴技法においては自分の意見、理屈や評価は言わず、ひたすら聴く姿勢に徹する。
対決技法(カウンセラーとクライエントの対決ではなく、クライエントの中の矛盾の指摘)
クライエントの言葉・行動・思考における矛盾点をありのままに提示する。(自分の意見や見解は言わない)。例「…と思われている一方で、…とも思われている。それでどうするべきか迷われているのですね?」等
積極技法(こちらから働きかける)練習①~④
① 「情報提供」
1、問題解決に必要な情報を受け取る心身の準備が、クライエントにあるかを傾聴で見極める(例、これから伝える内容と一致する経験を相手から傾聴技法で引き出す、等)
2、明確・特定的・具体的にタイミングよく情報提供をする
3、どう受け取ったかを開かれた質問で訊き、回答を傾聴する(例「これを聴いてどう思われましたか?」等→傾聴)
② 「論理的帰結」
クライエントが決断や行動を起こそうとしているとき、その結果(ポジティブ・ネガティブ両方)を考えることを支援
例「では、おっしゃられるように、もし…したらどんな結果になるでしょう?」等
(「論理的帰結」を使う前に、上記の傾聴技法を使ってクライアントにいくつかの選択肢を考えさせ、それらの選択肢一つ一つに対して「論理的帰結」を行う。そして、上記の対決技法を使って各選択肢のメリットとデメリットを比較検討するよう促す。)
③ 「解釈」(物事をより良くとらえる)
1、クライエントの情報をなるべく多く集める(感情・態度・行動・状況、等)それらを新しい視点から再構成・再定義する。クライエントがその新しい解釈を受け入れることができそうか、よく観察・傾聴して見極める。
2、大丈夫そうなら伝える。
例「…という出来事によって、…という変化があなたにもたらされたのかもしれませんね」等(断定せず、あくまで可能性として提示する)
3、伝えた後はクライエントがどう受け取ったか傾聴する。
④「ほめる・認める」
クライエントの良いところや努力、使える資源等を傾聴で引き出して具体的にほめたり認めたりすることで、さらにそれを伸ばしたり、活用を促したりする。
もしもクライエントがネガティブなことばかり話すときは
例外探しの質問(例「いつもそうですか?そうでないときはありませんでしたか?」等)や
コーピングクエスチョン 大変な状況に耐えている相手をほめたり認めたりして「そんな大変な状況でもなんとかやっていけているのは、あなたにどんな強みや使える資源、助けてくれる人や制度等があるからでしょうか?」等と訊いて、良いところを引き出す、
あるいは
スケーリングクエスチョンの活用
例1
私「理想の状態を10、最悪を0とすると今いくつですか?」
相手「うーん…2くらいかな…」
私「ゼロではなく2なのですね?では、どういった点が良いのでゼロではなく2となったのでしょうか?」と訊いて、肯定的資質を引き出す。
(ゼロと答える人はあまりいません。ゼロと答える人は欝あるいは欝状態の可能性があります。厚生労働省がネットで紹介している簡易検査表などでチェックし、欝あるいは欝状態であるおそれがあると思われた場合は、精神医療の先生へバトンタッチしましょう。
ゼロと答えたけれども欝あるいは欝状態でないと思われた場合は、上記の例外探しの質問やコーピングクエスチョンで肯定的資質(良いところ、強み、使える資源等)を探したり、傾聴技法を使ってゼロと答えた背景や気持ち等をよく聴きましょう。
また、そのように話を傾聴する中で、やはり欝あるいは欝状態であると思われたら、精神医療の先生へバトンタッチしましょう。)
例2
私「理想の状態を10、最悪を0としたとき、過去に最も良かったときはいくつでしたか?その時はどんなことやどんなものがプラスに働いたのでしょうか?」
相手「それは小学生6年生のときで7くらいかなぁ…あのときは○○が良かったから…」
私「○○が良かったのですね。それを今回も活用する方法を一緒に考えましょう」
等のテクニックにより、引き出した良いところや強み等を最大限活かして、問題を解決できるように支援する。
※積極技法を使うときの1-2-3の原則
1、相手の話を傾聴し、相手がその積極技法を受け入れる準備ができているか確かめる
2、積極技法を使う
3、使った後、相手がそれをどう受け止めたかを、開かれた質問(例「これについてどう思われますか?」等)で訊き、回答を傾聴する。
練習すると誰でも簡単に出来るようになりますし、日常や仕事で使うといろいろと役に立ちます。お試しあれ。