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【安藤忠雄さんの言葉】納得づくで物事を進めるためにはお互いの理解が不可欠だ
新装版を再読しました。
そのなかでも改めて印象に残った部分が同潤会アパートの再開発です。
1996年に、同潤会青山アパートメントの再開発計画の依頼を受けた。地権者の調整だけで多大な労力を必要とする再開発は、一般的に新しい提案をするのが難しい。この計画も同様で、私が計画を担当することに対し、百五十人の地権者のうち百人が反対、十人が賛成。当初はそんな割合だった。何度か説得を試みても、反対者は粘り強く、意見は変わらない。既存のアパートに対する愛着が強い彼らは、建て替え自体を望んでいないのだから、無理もなかった。老朽化が進み、避けられないことを理屈では理解していながら、新たな計画に簡単に同意することもできない状態だった。
それならばと、こちらも腹をくくることにした。納得づくで物事を進めるためにはお互いの理解が不可欠だ。反対者の意見も、賛成者の意見も良く聞いて、徹底的に話し合い、妥協のない形で前に進めようと、心に決めた。
しかし三ヵ月に一回の打ち合わせは、気が重かった。多くの反対者を相手に意見を交わすのは地獄のような時間だったが、じっくりと時間をかけて、対話を重ねた。
建築をつくる行為は、人を育てることに似ている。人間と同じように、敷地にも性格がある。一つとして同じ条件は無い。私たちはまず、既存の建物や、街並みの風景など、その敷地の個性を的確に読み取り、それを活かして計画に臨まなければならない。
納得づくで物事を進めるためにはお互いの理解が不可欠だ。反対者の意見も、賛成者の意見も良く聞いて、徹底的に話し合い、妥協のない形で前に進めようと、心に決めた。
建築家というのは、建物のデザインをして、設計図を書くだけの仕事ではないのです。その前にさまざまなステークホルダーの意見を聞き、相互に理解をつくり、合意を形成する「ファシリテーター」の役割も求められるのですね。
現在、埼玉県では公立の男女別学高校の共学化が大きな争点になっています。男女平等、性による差別をなくす、という視点もありますし、男子校・女子校で醸成されてきた校風と文化を継続したい、異性がいない環境で学びたいという要望も多く出されています。
昨年からのこの課題を見ていると、欠けていることは「反対者の意見も、賛成者の意見も良く聞いて、徹底的に話し合う」ことだと、私は考えています。