九仞の功を一簣に虧く(きゅうじんのこうをいっきにかく)
高い山を築いていくときに、最後の一籠の土を盛らないために、あと一歩というところで失敗することがある。
この句は、「書経」の中で、王者の治政の難しさを述べたものである。
いわば「為政者の嘆き」といったものが聞こえてくるようなたとえである。曰く、
「君主は朝早いから、夜は遅くまで、政治の事、天下の民のことを心配して努力し勤めなければならない。
もし、些細なことでも、一点でもおろそかにするようなことや慎重さを欠くようなことをすれば、
せっかくの積み重ねた実績も一度に崩れ去ってしまうかもしれない」
例えば、九仞もの土を積み上げ(一仞は高さの単位で、七、八尺)だとしても、最後の籠の土を盛るときにそれを怠ったり
誤ったりすれば、全部の山は崩れ、これまでの苦労は水の泡となってしまうのである。
世の経営者、為政者には、このような慎重さ、用心深さが要請される。