アスパルテーム
2023年7月頃、世界保健機関傘下の国際がん研究機関(IARC)が、アスパルテームの発がん性リスクの分類を"2B"に見直したことが話題となりました。
記憶にある方も少なくないと思います。
そんなアスパルテームについて再考してみたいと思います。
アスパルテームとは
元々1965年にアメリカの製薬会社サールで見出された人工甘味料です(JACS. 1969; 91: 2684)。国内では味の素が他に先駆けて導入しました。アスパルテームは全くカロリーが無いわけではありませんが、砂糖の200倍の甘味の強さであるため、ごく少量の添加で甘みを味わうことができ、カロリー低減に非常に有効な甘味料として、スクラロースと並ぶ代表的な人工甘味料です。
様々な観点(発がん性以外にも諸々の毒性について)から安全性の検討が行われた結果、1日体重1kgあたり40mgまでの摂取であれば安全だという基準ができ、日本では1976年から食品添加物として使用されるようになりました。
何が変わったのか
これまでも1970年代頃からアスパルテームの発がん性についての言及はありましたが、発がんに関与するという明確な指定はされていませんでした。
2023年7月に上述のIARCが発がん性の分類のうち2Bに相当すると決定したことが新しい点です。4つにわかれる発がん性分類のうちで下から2番目、"ヒトに対して発がん性がある可能性がある"という弱めの可能性を持つ分類です。
同じ分類にワラビや漬物野菜が入っている(https://www.mhlw.go.jp/content/11201000/000529380.pdf)ことからも必要以上に恐れることはないことがわかります。さらに、これまでと1日摂取の上限量も体重1kgあたり40mgと変わっていません。
食品中のアスパルテーム含有量
アスパルテームを含む食品でもっともメジャーなのはダイエットコーラなど低カロリー飲料だと思います。コカ・コーラゼロは今の記載ではスクラロースなど他の人工甘味料がメインとなっていましたが、過去のまとめでは100mlあたり39.2mgとされていました(https://boshiaiikukai.jp/img/milk/asuparutemu20141112.pdf)。
60kgの成人がダイエットコーラのみに限定すると6Lまでは許容できるということになり、日常的にはとても到達しない上限であることがわかります。
さらにこの上限は発がん性に限って決められたものではないことにも注意が必要です。
メディアでの取り上げ方
ただ、私を含め、テレビ、ネットニュースなどで大きく報じられて、アスパルテームをはじめとした人工甘味料に"なんとなく"ネガティブな印象をさらに強く持ってしまった方も多いのではないでしょうか。
ニュースを報じるメディアは、注目されること、目をひくことが重要であるという性質から、不安を煽るようなインパクトのある情報を切り取って繰り返し報道してしまうメディア・バイアスがあります。
報じられる情報は、必ずしも中立的な立場でもたらされる情報では無く、それを度々意識しないと、偏った情報が刷り込まれてしまうことになります。アスパルテームに関しては、糖質の摂りすぎを防ぐ有効な手立てのひとつです。避けることで糖質摂取により肥満をはじめ生活習慣病などが助長されてしまってはそちらの方が不利益になるように思います。
まとめ
以上のまとめです。
・アスパルテームは最もメジャーな人工甘味料の一つ
・2023年7月にアスパルテームはIARCによる発がん性の分類で2Bと指定されたが、それには漬物やワラビも該当する、弱めの水準
・アスパルテームの上限摂取量は1日体重1kgあたり40mgで変更されておらず、日常的な摂取量ではまずこれを超えない
・報道によりどうしても不安になるが、過度に避けると、糖質のとりすぎによる不利益のほうが大きいと思われる
個人的な考えとしては、日常とは切り離せない人工甘味料のひとつアスパルテームについて過度に避けることは不要だと思います。ただ、もちろん科学にも限界はあり、極端に偏った摂取が何を起こすかすべてわかっているわけではありません。ありきたりになってしまいますが、決まったものばかりを摂取するというような偏りを避け分散させることが安全に繋がる簡便な方法だと思います。