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属人的なナレッジを組織としての強みに変える方法

濱口秀司さんのアイデアのカケラたち」を読んで Part1

最近、いつも仕事でお世話になっている方から濱口秀司さんの事を教えて頂き、幾つか記事を見たり本を買って読んでみたりしているんですが、Webディレクターという仕事を通して感じていた悩みとか、先月まで通っていた学校でUXデザインの勉強をしてみて芽生えた「これはどうしたらいいんだろう?」という様な全ての疑問に対する答えを持っていそうな方で、驚きが止まらない日々を過ごしています。

そんな訳で、濱口さんの記事や書籍の内容を紹介しながら濱口さんの考え方、思考方法を自分の中に再現すべく、少しずつnoteにまとめていきたいと思います。

このnoteはこんなキーワードに興味のある方におススメです。

サービスデザイン、ビジネスデザイン、UXデザイン、デザイン思考、組織のデザイン、ブランディング、会社の強み、仕組み化

ちなみに、このnoteに書かれている内容は全て冒頭でご紹介した「濱口秀司さんのアイデアのカケラたち」に書いてある内容を自分事として理解する為にまとめ直しているものなので、まずはほぼ日の記事を読んで頂いて、記事の振り返りとしてこのnoteも読んで頂けたら嬉しいです。

濱口 秀司(はまぐち ひでし)
京都大学卒業後、松下電工(現パナソニッック)に入社。全社戦略投資案件の意思決定分析担当となる。1998 年から米国のデザインイノベーションファームZibaに参画。世界初のUSBメモリはじめ数々の画期的なコンセプトづ くりをリード。パナソニック電工新事業企画部長、 パナソニック電工米国研究所上席副社長、米国ソフ トウェアベンチャーのCOOを歴任。2009年に戦略ディレクターとしてZibaにリジョイン。2013年、 Zibaのエグゼクティブフェローを務めながら、自身の実験会社「monogoto」をポートランドに立ち 上げ、ビジネスデザイン分野にフォーカスした活動 を行っている。ドイツRedDotデザイン賞審査員。イノベーション・シンキング(変革的思考法)の世界的第一人者。

出展:https://bizzine.jp/person/detail/31/


属人化された強み ≠ 組織の強み

まずは最初のページから。
https://www.1101.com/hamaguchihideshi/2017-11-22.html

私は今4人しかいないWeb制作会社で働いていまして、しょっちゅうこの「どうやったら属人化されたスキル、ナレッジを会社としての強みにするか?」という話をしています。会社というよりは個人事業主の集まりの様な組織なので。

4人は会社として極端に少ないですが、数十人規模のクリエイティブ系の会社だったらとても良くある事だと思います。例えば「Aという会社はグラフィックのデザイン力が高い」という会社としての評判があったとして、実際にそのレベルのデザインが出来る人は、良くて社内に2~3人。その人たちが辞めてしまったら一気にその会社としての評判は崩れ去ってしまう。何故ならその「評判=ブランド力」は一部のハイスキルを持った個人に属人化されており、組織としての強みにはなっていなかったからです。

皆さんの職場でもありませんか?「うちの会社って○○の仕事で評価されているけど、実はそれ出来るの△△さんだけなんだよね…。」みたいなこと。

そしてこの「△△さんだけが出来る仕事」というのをどうやったら他の人でもできる様にするのか?というのは、世界中で皆が困っている課題なんじゃないかと思いますが、その課題に対して濱口さんは実に分かりやすく「ナレッジの正体」と「その教え方」を解説しています。凄すぎるぜ…濱口さん!

ナレッジの正体は4つに分類できる

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こういう図を自分でも真似して書いてみると理解が深まりますね。テスト勉強の時に自分でノート作るみたいな感じ。

面白い図ですね。ナレッジというのは「What(何をしたらいいか?)」と「How(どうやったらいいか?)」に分かれて、それが文章化できるかどうか?でまた分かれるという話。

TODOや手順書は分かりやすいですが、スキルやカルチャーは少し分かりづらいです。濱口さんの解説を読むと「スキル=コミュニケーションスキルの様な言葉で説明できないその人に染みついている方法」でカルチャーは「カルチャー=考え方や雰囲気」との事です。なるほどぉ。

少し話がそれますが、濱口さんの書籍などを読んでいると濱口さんはとにかく「問題」とか「事象」を図式化する、という事が異常に上手です。構造化して把握する、というのが本当に体に染みついているんだな、という感じ。私はあまりこういう事をやった事が無いのでぜひ真似して自分のものにしたいです。

ナレッジの教え方は2種類ある

▼教科書の教え方

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「TODO → 手順書 → スキル → カルチャー」と教えていく流れです。確かに学校で習った教科書ではまずTODOとして何をすれば良いかが解説されていて、問題の解き方を手順(公式)として習い、それを繰り返すと考えなくても自然と解ける様になり(スキル化)、なんとなく今学んでいる事が何か?というカルチャーが身に就くようになっています。

そしてこの教え方について濱口さんが指摘しているメリットデメリットは

メリット → 凄く効率的に学べる。
デメリット → 教える人を越えない
(自分で考える力がつかない)

となります。なんか日本的教育の痛いところを「グサッ!」と突いてる感じですね。

▼職人的教え方

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こちらは「カルチャー → スキル → 手順書 → TODO」の順番で学んでいく、先ほどと逆のやり方。まずはひたすら師匠の一挙手一投足を観察し、真似をし、雑用をこなしながら師匠のカルチャーを体に染み込ませていきます。TODOとか手順というより、自分が飛び込んだ世界で目指す立場の人の立ち居振る舞い、考え方みたいなものを真似しながらインストールする、という感じでしょうか。

実は私自身も全くの異業種から30才になってWebディレクターの仕事を始めました。正直、30才になるまでやっていた仕事で身に着けたスキルなんて全然役に立たない感じだったんですが、上司がとても変わった人で、30才の私を机の後ろに座らせて「何もしなくていいからとにかく見てて」と、本当に何も仕事をしないで試用期間の3カ月を過ごした経験があります。

上司の仕事を見ていて何か気になったら「あれ、今のなんでこうしたんですか?」と聞きながら、それをメモする以外はずっと見てる。本当に3カ月間それしかしていなかったのですが、今この濱口さんの記事を読むと、まさにこの「カルチャーから入る職人的教え方」だったんだな、と驚いています。

実際この3か月間を通して、Webディレクターという肩書の人間がどういうポジションで、誰に対してどういう姿勢、態度で接すれば良いのか?というような、言葉では説明しづらい「Webディレクターという役割を与えられた人間としての立ち居振る舞い方」を理解できたからこそ、そのあと比較的スムーズにスキル、手順を身に着けて仕事が出来ているんだと思います。

そしてこの教え方について濱口さんが指摘しているメリットとデメリットが

メリット → 自分で考えて「虎の巻」を作るので教える人を越える可能性が高まる。
デメリット → 超非効率。とても育てるのに時間がかかる。

となります。すし職人になる為に通る「飯炊き3年、握り8年」みたいな職人文化を「何年も修行するのはバカだ」とホリエモンが切り捨てた、という記事を見た覚えがありますが、あまり現代的ではない教え方、考え方なんですかね。

職人的修得プロセスについてもう少し

職人的修得プロセスについての文章を読んですぐに思い浮かんだ有名人が2人います。それは武井壮さんと箕輪厚介さん。

詳細はググって頂くとして、武井さんは今みたいにテレビの売れっ子として年収3億?稼ぐ様になる前、車の中に住んでテープに録音したお笑い芸人のトークをひたすら真似して話芸を身に着けていった、とうのは有名な話ですね。(ちょっと話は変わりますが武井さんの「大人の育て方」めちゃくちゃ面白いです。)

箕輪さんも日本一有名な編集者という感じで世間を賑わせている方ですが、双葉社の編集者時代に幻冬舎創業者である見城徹さんに惚れ込んで、見城さんの本をすべて読み、取材テープを聞きこみ丸暗記するくらい研究したというエピソードを聞いた事があります。最終的には、完全に見城さんをコピーすることで見城さんが乗り移ったようになり、見城さんが言いそうな事が言えるようになってきたそうで「超絶ストーカーからのイタコに進化!」みたいな不思議な話ですが、職人的修得プロセスの典型的な例だなと思います。

面白いのは武井さんも箕輪さんも、師匠に弟子入りしていないのに勝手に真似を始めて勝手に育っていくところですが(ここが一般人とは行動力が違うところなんでしょうね)、手順とかスキルから学ぼうとするのではなく「ひたすら丸暗記して体に染み込ませていく=カルチャーにどっぷり浸かる」という手法を採用し、自分自身を「自分という連続の延長線上にない位置にジャンプさせる」事に成功していることが興味深いですね。

自分で考える余地を残しながら「虎の巻」をチラ見せする

https://www.1101.com/hamaguchihideshi/2017-11-23.html
「教科書的教え方 → 師匠を越えない」
「職人的教え方 → 時間がかかり過ぎる」
このデメリットを解決する方法として「虎の巻のチラ見せ」という手法が紹介されていますが、これ、難しいですよね。そもそも教える側がちゃんとした「虎の巻」を持っていないとチラ見せ出来ない。

僕の頭の中では、
膨大なロジックが枝葉のようにつながって、
完璧なチャートになって、
ひとつの思考の方法論ができています。
でも、その全体像は絶対に見せません。

濱口さんが言うんだから本当に「膨大なロジックが完璧なチャート」になっているんだろうな…!と思いつつ、自分はそんなチャートを持っていないので弟子にチラ見せ出来ない、という方が多いんじゃないかな?と。少なくとも私はそうです。

考えてみれば当たり前な気もしますが、教える側はまず自分で「虎の巻」を作る労力を割く必要がある。そして、それがきちんと出来上がって初めて、チラ見せしながら効率的かつ効果的に弟子を育てていく事が出来る、そんな事なんだろうなと理解しました。

結局どうやって属人的なナレッジを組織の強みに変えるのか?

職人的教え方をベースに、虎の巻をチラ見せする事である程度学びを効率化する、というのが一つの答えの様なんですが(業種によっては教科書的教え方の方が良い場合も当然ある)、先ほど書いたように「教える側が虎の巻を持っていない、用意出来ない」という問題があります。

これを解決する方法として、おそらく「よし!虎の巻作るぞ!」といって突然作り出すのは難しいと思うので、教える立場になる人間は日々の業務の中で「今やっているこの仕事を後輩に教えるとしたらどうやって教えたらいいんだろう?」という意識を片隅において仕事をし、自分が無意識に行っている作業、行動の意味を俯瞰して把握する(構造の中の一つとして理解する)という事を習慣化する必要があるのでは?と考えています。

人に伝えられる「虎の巻」を作る作業を、日常の仕事の中に溶け込ませて積み重ねていくイメージです。そうやって仕事を構造として理解出来る様になると、きっと自分自身の仕事の効率化だったり、精度を高める事にも通じるんじゃないかな?とも思っています。

そして、おそらくこの日常的に「虎の巻」を作るには、ある程度「虎の巻」の1Pの中に何を書いておく必要があるのか?というのをフォーマット化しておくと、それを一冊の本にしたときにちゃんと使える「虎の巻」になるんだろうなと。このあたりのフォーマット化は先日読んだ「無印良品は、仕組みが9割」で紹介されていたマニュアル作りの作法がかなりヒントになりそうです。

これは濱口さんが書いている事では無く自分で考えた仮説なので、会社のメンバーに相談しながら検証してみたいと思います。「属人的なナレッジを組織としてのナレッジへ!」これが出来たら4人しかいない超零細企業である弊社もグッと成長すると思うんですよね。


まだまだ濱口秀司さん研究シリーズは続く予定ですが、一旦今日はここまで。次回は記事の続きを読みながら「チームワークの秘密」について考えてみたいと思います。

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